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Humanity Magi  作者: やばくない奴
リベリオン・マギ
19/71

無償の治療

 翌日、御鷹(みたか)竜也(りゅうや)は見慣れない病室で目を覚ました。彼らが起き上がると、そこにはやや茶色がかった頭髪の男の後ろ姿が見える。男は彼らの方へと振り返った。彼は中年と思しき容姿をした、物腰柔らかそうな雰囲気の男だ。

「気が付いたようだね……マグスバスターの諸君」

 彼はそう言ったが、御鷹たちはこの状況をまるで整理できていない様子だ。そこで男は、彼らの身に何があったのかを説明する。

「リベリオン・マギの幹部……五十嵐祐(いがらしゆう)の操るサンタンカモドキという植物により、お前たちは命の危機に瀕していたのだ。この植物は人を死に至らしめるほどの猛毒を持ち、一部地域では矢毒として用いられるような代物だよ」

 この説明を受け、御鷹たちは自分たちが何らかの治療を受けたことを察した。御鷹はすぐにベッドから降り、彼に礼を言う。

「ありがとう。アンタのおかげで助かった。それで、アンタは一体……?」

「私は真上玲作(まがみれいさく)……所謂闇医者という奴だ。幸い、私は過去に様々な植物の毒に対抗するための血清を作ったことがあってね。無事にオペを執行することが出来た」

「……無償で、治療してくれたのか?」

「ああ、そうだ。お前たちが一般人であれば、多額の医療費を要求するところだったが、今回ばかりはそうはいかない。何しろお前たちは、この世界の平和のために戦っている高潔なる戦士なのだからな」

 何やら、彼はただ者ではなさそうだ。サンタンカモドキの毒を打ち消す血清を作った功績を持っているのも異様だが、それ以上に彼の無償の治療行為は何らかの正義感を匂わせている。


 そんな彼に怪訝な表情を向けつつ、竜也は訊ねる。

「どうもありがとう、真上先生。ところで、僕たちに金が無くとも、奏美(かなみ)さんに医療費を要求することは出来るはずだ。違うか?」

 彼の言い分はもっともだ。見ず知らずの他人の善意を易々と信じることは、そう簡単なことではない。玲作は首を横に振り、己の信念を語り始める。

「私は医師免許を剥奪された身だが、より多くの命を救いたい心だけは奪われていないつもりだ。私の信念は、誰にも剥奪されないさ。私は、人間の未来を背負うお前たちを救うことが、無数の命を救うことに繋がると確信した。だから私は、お前たちにオペを施したのだ」

 彼の語った志しには、彼自身の抱く正義感がにじみ出ていた。御鷹は少し不安を覚えつつも、彼に重大な質問を投げかける。

「アンタは、罪の無いマグスが不当な差別を受けている現状を、どう鑑みる?」

 それはあまりにもリスクの大きな質問だ。相手の価値観次第では、敵対関係を生んでもおかしくはない質問である。


 そんな彼に対し、玲作は一切の敵意を抱かない。

「もちろん、そういったマグスを救おうとする者がいても良いだろう。私は人間を愛し、人間を救うために医療の道を志した者だが、お前の正義を否定しようとは毛頭思わない。私はマグスを殺めるためでなく、人間を生かすために医者になったのだからな」

 それが彼の答えだ。彼は人間の味方に徹する一方で、善良なマグスに対する敵意は特に持ち合わせていないようだ。御鷹は安堵のため息をつき、玲作を褒め称える。

「俺はずっと、ヒーローに憧れてきた。アンタの生き方もきっと、ヒーローの在り方の一つだと思う」

「ありがとう。そう言ってもらえると、オペを執行した甲斐もあったというものだよ。さて、私の役目はここまでだ」

「ああ、わかってる」

 リベリオン・マギと戦っている彼に、病室に長居している暇はない。竜也はベッドから飛び出し、彼に指示を出す。

「一先ず、研究所まで戻ろう。五十嵐祐の魔法のことも、奏美さんに報告しなくてはならないからな」

「そうだな……竜也」

 二人は玲作に頭を下げ、病室から立ち去った。

挿絵(By みてみん)

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