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86話:『自動筆記』

 柳原(やなぎはら)は一瞬だけシュパッと片手を上げ、ごっこのような敬礼をしてきた。


「らじゃ、いくし! ――ナイフの『通り魔』――刀の『通り魔』」


 立ち並ぶ木々を走り抜けながら、切り裂いていく。


「なんか切れ味マシマシかも」


「気をつけろ、オークが近づいてきてるぞ! 迎撃してみろ!」


 調子に乗って森を駆けていく柳原へ、大声で警告と指示を出す。


「グモオオオオン」


「ミドブタの動き、少し遅くみえるし。――刀の『通り魔』」


 ザシュウウゥ。昨日は何度も攻撃を加えてようやく倒したオークを、個体が違うとはいえ一撃で一刀両断。この出力の上昇が示すことは『通り魔』のランクがかなりの高位だということ。少なくともA級はありそうだ。


「あーし、げきつよ!?」


 オークの小さなクリスタルを拾い自慢げに戻ってくる。――なんか投げたおもちゃを咥えて戻ってくる猫みたい。……悔しいがこの場合、犬の方が適切だな。


「あぁ、スキルランクは高いと思う。アニマを(クァトゥオル)にまで上げることができれば、この世界でも余裕をもって生き抜けるはず。次は古庭(ふるにわ)『自動筆記』を使ってみてくれ」


 ついに大本命を試せる。とはいえまだ(ドゥオ)、メガロドンの情報に届くとは思えない。大切なのは(ウーヌム)より性能が上がっているかだ。


「えっと、ごめんなさい。私どうすれば使えるんですか……?」


「あぁ、紙と筆を持ってきてなかったな。柔らかい地面は――ここらだな。ここに指を当てて質問しながら『自動筆記』と宣言する」


 指で文字を書けそうな、日陰の泥っぽい地面に誘導。


「何を質問すればいいですか?」


「そうだな。まずこの場にいる誰かが答えを知っていて、かつそれが秘密じゃなく他人に開示できるような質問をしてくれ」


 まずは(ウーヌム)でやれたことを再確認する。


「はい。それじゃあ、猫島(ねこじま)くんの性別を教えてください――『自動筆記』」


 古庭の指が動き出し泥っぽい地面に、男、と書く。


「わっ、手が勝手に動きました。……異常現象なのに不思議と怖くないです」


「お前の精神が深いところで自分のスキルを、自分自身の力だと認識しているからだろうな。次はこの場の誰かが答えを知っていて、かつそれが教えてもいいができれば教えたくないぐらいの、軽い秘密を質問してくれ」


 ……条件がちょっと難しい気がするが、(ウーヌム)時にしたクラス実験では、この類いの質問に『自動筆記』が答えを書くことはなかった。


「……それでは、えっと、猫島くんは犬神さんとどういう関係ですか?」


 なぜか俺の顔を見ながら言ってくる。――あぁなるほど。できれば教えたくないぐらいの質問になるか、事前に尋ねているのか。


「そうだな。答えられないわけじゃないが、積極的に答えたいわけでもない。……ちょうどいい質問だ。『自動筆記』を使ってみろ」


「はい、猫島くんと犬神さんの関係を教えてください――『自動筆記』」


 ――古庭の指が動き出す――。幼馴染み、命の恩人、同居人。

 ッ天星スキルヤベーな!? 幼馴染みで止まると思っていたのだが。 


「……ひとつ言っておくが、健全な同居だったからな」


 つーかこれ、軽い秘密じゃねぇ。普通に聞かれたらここまで教えない。


「猫島くん、ごめんなさい! 私、軽はずみな質問をしてしまいました!」


 俺は動揺を隠しきれず顔に出ていたのだろう。古庭が青ざめながら謝罪してくる。


「いや、お前は悪くない。ただ『自動筆記』の使い方には気をつけた方がいいな、想像よりヤバいスキルだ。――世の中知ったら危険なことも多い」


 正直『自動筆記』について軽く考えていた。改めて考えれば秘密を暴けるってヤベーわ。このスキルを外部に知られると、古庭の身に危険が発生するだろう。


「わかりました。『自動筆記』はもう使いません。誰にだって知られたくない秘密はあると思います。それを知ろうとするなんて最低のことですから」


 瞳に力を込めて周りを見渡しながら、自分の意思を強く宣言する古庭。


「悪い古庭……できれば使って欲しい場面もあるんだ。いま結構人類ピンチでな。それを攻略するヒントを探している」


「――それでは、猫島くんから頼まれたときにだけ使うようにします。それでいいですか?」


 三つ編みを揺らしながら、くりっとした瞳で下から覗き込むように見上げられる。

 使いどころを決めてくれと言って命を預けてきたアンドレアスにしろ、責任を押しつけないで欲しいところだが。……古庭をここに引っ張り出したのは俺か。


「あぁ、約束する。私利私欲で使わせるような真似はしない。――それとお前ら古庭のスキルを絶対外部に漏らすなよ」


 とくに湯崎(ゆざき)を、強く視線で射貫きながら命令しておく。


「あーし、口チャックしたし」


「そうね。……他人の秘密を知る超能力を持っていたら、平和な日本でも身の危険があることぐらい予想できるわ」


「私は条件ある! 私の秘密絶対に『自動筆記』しないこと! これ破ったら言いふらす!」


 三者三様の反応だが理解は得られたようだ。ひとり若干不安なやつがいるけど。


 ――その後、メガロドンについて質問したが『自動筆記』は反応しなかった。

 想定以上に強力なスキルだと思ったが、やはり(ドゥオ)ではダメか。

 しかしもっとも可能性を感じる。残り期間は長くない、古庭のアニマクラス上げを最優先にしていこう――。

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