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61話:過剰な光は俺が継ぐ

 ――俺は友方(ともかた)のことを自分が思うほど理解できていなかったようだ。


 まさかあいつがここまで本気で慕われているとは思っていなかった。

 『過剰な光(オーバーライト)』の始まりがライカスを助けるためとは考えもしなかった。

 ――それでも俺はまだ友方を認めることはできない。


 ……生きてるうちは心底嫌っていたんだ、死んだ後にちょっといいところを知ったからって、考えを軽々しく(ひるがえ)せるかよ。

 そう、真の仲間になったあの日から友方は俺を名前で呼ぶようになったが、疑って認めることができなかった俺は苗字で呼び続けた。


 ――だが友方がこいつらのために始めたことを否定はできない。


 覚悟はすでに決めている。

 世の中には殺した方がいい屑が間違いなく存在し、この異世界――王都にはそいつらが溢れている。

 あるいは屑どもも国が腐敗したからこそ歪んだ被害者なのかもしれない、まともな国なら普通に生きていたのかもしれない。

 ――だとしても一線を越えるような悪を許すつもりはない。

 

 何であれ、友方の『過剰な光(オーバーライト)』が悪を闇へと追い込んだのは事実。

 あいつの死によって、それがふたたび日の当たる場所へと這いでてきた。


 ライカスたち亜人ではダメだ。民衆の理解は得られない。

 ただ人間と亜人の溝を深めるだけ。

 この世界における特別な存在――彼方の来訪者(エトランジェ)だからこそ許された、恐れられた。


 ――だったらどうする? ――決まっているッ!


「ライカスッ! ガラトッ! ケライノッ! バキュウッ!」


 眼前に立つ、過激派メンバーたちをまとめる代表4人の名前を呼んでいく。


「『過剰な光(オーバーライト)』は俺が継ぐ――お前たちはついてこい」


 覚悟を込めて宣言する。

 

「ランマさま!?」


 バキュウが驚愕を漏らし、ほかのメンバーたちも一様に動揺する。

 俺が止めに来たと思っていたのだろう。


「マジで言ったのか?」


 ライカスが疑うように尋ねてくる。


「……俺はこれまでお前たちの友方崇拝は、いっしょに暴れるのが楽しかったからみたいな下らない理由と思っていたが……そうじゃないんだろう?」


「当然です、証明もできます、我々は受けた扱いゆえにルミガ人を憎んでいます。ですがトモカタさまと『光の意思たち(ライト・スピリッツ)』に誓って、一般のルミガ人に危害を加えたことはありません」


 バキュウが自分たちに恥ずべきことは何もないと、胸を張って答える。


 ――あぁ、そうなんだよな。

 俺はこいつらに友方を崇拝するヤベー奴らというレッテルを張っていた。

 フィルターで眼が曇っていたのは俺の方だったのかもしれない。

 考えてみれば――こいつらにまともな自制心がないなら、とうの昔に『光の意思たち(ライト・スピリッツ)』は王国と激突しているはずなんだ。


「――俺が悪かった、お前たちを一方的に誤解していた」


「なら、アニキのこと!」


 俺の謝罪にライカスが、懇願するように言葉を放ってくるが。


「……まだ拓也(タクヤ)とは呼べない。お前たち過激派への認識は改めたが、友方のことはまだ認められない」


「なんでアニキを認めてくれないッ!」


 悲痛に叫ぶライカス――あぁこいつは本当に友方が好きなのだろう。


 ……あいつが生きていたなら、『過剰な光(オーバーライト)』を始めた本当の理由を知ったことで、認識を改め謝罪し認めることもできたかもしれない……。

 俺は意固地になっていると自覚できる――だが俺のなかであいつは葬儀のとき泣けないような、ヤベー奴じゃなきゃ困るんだ。

 

 あいつは俺を嫌っていなくて、俺だけ一方的に嫌っていた?

 あいつは愚賢者と出会い、真の仲間になった日に本当に改心していた?

 ――死者が生き返らない世界で、死んだ後にそんなのは止めてくれ。


「――もう手遅れなんだよ」


 死者に軽々しく誤解していたと謝って認めて終わらせる。

 たとえライカスがそれで満足するのだとしても――俺自身が受け入れられない。


「グルゥ!」


「弁えろライカス、お前の忠誠は理解している。だがランマさまとトモカタさまの関係に俺たちが口を挟むことは許されない」


 さらに食ってかかろうとするライカスの肩に手を置き、ガラトが制止する。


「そうです、ランマさまは『過剰な光(オーバーライト)』を継ぐと言ってくださったのです。私たちがここに集まったのは何のためか考えなさい」


 ケライノも諭すような口調で、ライカスを(なだ)める。


「まだトモカタさまが亡くなられて日が浅い、ランマさまにも時間が必要なはずです」


 バキュウも制止に加わりようやく落ち着いたようだ。


「……ランマさま……いつか絶対アニキのこと認めてくれよ……」


 ライカスは絞り出すような声で消沈する。

 

「……その時が来たらな」


 来るかはわからないが……このまま終わらせていい関係ではない、いつか友方とは決着をつける必要がある。


 今回あいつの知らなかった一面を知ったが、これがすべてとはかぎらない。

 やはり友方を認める価値などなく、俺が正しかった。

 ――そう判断できる材料が眠っている可能性もある――結論は先延ばしだ。


 ……そして俺はかなりの覚悟を込めて、『過剰な光(オーバーライト)』を継ぐと宣言したんだが――話が若干逸れてしまった、カッコつかねぇ。

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