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40話:始祖氷狼狩猟

 『始祖氷狼(ハティ)』を狩ると覚悟を決めて、とっておきの切り札を行使。


 アニマを対価に作り出した魔力のすべてを使い、極大魔法矢を形成する。

 あとは炎に変換して解き放つのみ――。


(――いいえ――ランマ、炎ではダメです)


 ――強く印象に残っている声が頭に響く。

 耳になじむほど聞いた覚えはない一期一会の相手。

 それでも忘れてなどいるものか。


「リタッ!」


 出会いから別れまで一瞬、名乗ったのは俺だけで。

 最後まで本人の口から名前を聞くことがなかった赤髪の女。

 麒麟を討つため紅き聖弓へと転生した、彼女の名前を俺は呼ぶ。


 ファァァン。答えるように聖弓が青き光を明滅させる。


(ランマ――確証はありませんが――)


「生きていたのか! 意思があったのか? 人間に戻れるのか?」


 聖弓へと問いかける。


(いまは話を聞いてください。彼方の来訪者(エトランジェ)『うずくまる』のネコジマ ランマ)


 そうだった、いまは(ノウェム)級と交戦中。積もる話は後だ。

 

(氷狼の属性は氷ではありません)


「何……?」

 

(かつての経験が告げています、あれは水です。火には弱点どころか強力な耐性を持っているはずです)


 火を封じる法則に空間を塗り替えたことはミスリード!?

 まさか(ノウェム)がそんな小手先を使うとは……これも含めて奴のお遊びなのか?


(変換すべきは雷です。信じていただけますか?)


「疑うかよッ」


 『うずくまる』に不足する攻撃力を補うため、聖弓にはずっと助けられてきた。

 それにリタは七線級クランの1人、人類最高峰の冒険者なのだ。

 この世界での戦闘経験は俺より遥かに上だろう。


「属性変換――雷の矢」


 バチバチバチバチ――雷鳴を響かせながら『青き魔法の極大矢』の属性が変換されていく。


「ワオオオオオオオオオオオオン」


 俺が雷に変換したのを、察知したであろう月下の氷狼は雄叫びを上げる。

 奴は遊び相手を求めている、それが危険で刺激的になった。

 ――退くかどうかは性格次第。

 

「ワオオオオオオオオオオオオオオオオン」


 『始祖氷狼(ハティ)』は退かなかった。

 楽しそうな咆哮を上げながら、夜天を縦横無尽に駆け巡る。


 ヒュオオオオオオオオ。

 優しい雪は終わりを告げて、猛吹雪へと変化する。


「ワオン。ワオン。ワンワンワォォォン」


 さぁ当てて見せろと、挑発するかのように鳴きながら闇の吹雪を疾走する。


「いくぞ、リタッ! 力を貸してくれッ!」


(全霊をもって答えましょう、私のすべてはあの日あなたに差し上げました)


 バチバチバチバチバチバチ。

 (オクトー)のアニマを、1段階捧げて生みだした魔力を用いたのだ。

 

 バリッバリッバリッバリバリバリ。

 雷が弱点ならばなおのこと、(ノウェム)でも驚異たり得る威力のはず。


「――夜天を駆けろ、獣を穿てッ『青き雷の極大魔法矢アニマ・サンダーアロー』ッ!」


 うずくまりながら極大魔法矢を解き放つ――。


 バババババリッバチッバチッバヂヂヂ、ドッゴオオオオオオオオオンン。


 雷鳴響かせ絶対凍結の吹雪を焼き払い、夜の世界を稲光りが切り裂いていく。


 矢は神速、されど氷狼もまた神速。獣と矢が織りなす追走劇。

 優勢なのは獣だろう、何せ地上縛りでも5本の矢を回避し続けたのだから。


 ――だが命中寸前まで追い詰めた。

 空中ならば回避ルートはどれほど増える? 地上の3倍、10倍、100倍か? 


 ――ならば。


「爆ぜろ雷光。千の矢となれッ!」


 俺の意思を吼えた瞬間――氷狼を追う1本の極大雷矢は千の雷矢へと分裂。


「できるならば、避けてみせろ『始祖たる魔物(オリジン・ワン)』」


 ――不可能だろうがな。


「ワグウウウウウ」


 氷狼は唸りながら、ありえぬ軌道で回避し続ける。

 まるで曲芸飛行(サーカス)、だが無駄だ。


 たとえ物理法則を超越しようとも、それはこちらも同じこと。

 雷矢の速度は千に分裂しようと衰えず、ありえぬ弾道で包囲追撃。


 神話の『月を追う狼の名(ハティ)』を冠するが、今宵は奴が逃げる側。


 ――ついに限界を迎える回避劇。地上から空へと跳ねるような逃げ場はなく。


「ワオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!」


 回避ゲームに敗北したことを認めるかのような、屈辱の鳴き声。

 そこには俺への憎しみが宿っているのを感じる。


「ワオオオオオオオオオオオンッ!」


 遊びに負けた憎悪を発散するかのごとく、氷狼は遊具の破壊へ方針を切り替えた。

 氷の尻尾が千の雷矢を薙ぎ払うべく叩きつけられた。


「これを遊びと思ったか? 言ったはずだぞ、俺は狩るとッ」


 尻尾から全身へと次々着弾していく雷矢、速度は変わらずとも威力は千に分かれて弱くなっている。


「ワオオオオオオンッ!」


 千の雷矢に撃たれながらも氷狼は、これで狩る? 愚かな狩人ここに在りと言うかのように月へと吼える。


「あぁまだ足りないだろうな。(おまえ)には届かない」


 ――足りないならば足せばいい、当然の答え。


「『アニマ・コンバーション』――捧げよう、さらなる生命(アニマ)を。お前を狩ると決めたからッ」


 燃える燃える、アニマが燃えて魔力となる。

(セプテム)から(クィーンクェ)へ2段階の急降下。


「幕引きだ。貰っていくぞ、余さずすべてを無駄にはしないッ! ――『青き雷の極大魔法矢アニマ・サンダーアロー』ッ!」 


 自らの都合で獣の命を奪う、狩人の誓いとともに。

 千の雷矢に撃たれ縛られ回避ができぬ氷狼へ。極大雷矢を解き放つ。

 

 ドゴォオオオオオオオオオオオオン。


 地上より駆け上がる一筋の極大雷光が、『始祖氷狼(ハティ)』を貫いた――。

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