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37話:やったか!?

 ――開拓領域(フロンティア・エリア)深度6たる第56区画に到着する。


 たいていの冒険者パーティーにとってここまで進むのは命がけ、七線級クランの主力パーティーだろうと容易には来られない深さ。

 だがナウメは当然としてトリウィアも強い、(トリア)級を鎧袖一触だ。

 (クァトゥオル)級以上と遭遇しなかったこともあり――おそらく魔物側が俺たちを避けたのだろうが――苦もなく進むことができた。


 第56区画に視線を向けると情報どおりの雪原エリア。

 現在雪は降っていないが、積もり積もった雪で一面真っ白な銀世界。


「ランマ、ここからは全力で駆けよう。(ノウェム)は基本エリアの中心に位置する。奴らを中心に空間が広がり続けるから自然とそうなる」


「わかった、俺も今日中には戻りたいしな。……このエリアその足で寒くないのか?」


 膝上丈のショートパンツで雪原エリアは見ているだけで寒くなる。

 アニマ補正で熱波や吹雪に耐えられようと、寒さや暑さそのものを感じないわけではない。


「寒いな。だがダメージはない、動きも阻害されはしない。よって問題ない」


 ……不老不死だと無頓着になるのだろうか。

 実害が発生していないなら気分の問題、俺がこれ以上どうこう言う必要はないか。



 

 ――銀世界に足跡を刻みながら、トリウィアと全力で駆け抜けていく――。


「ワアアアアアアアア」


 イエティの群れが現れるが、トリウィアに交戦する気はないようで速度のまま飛び越え突き進んでいく。

 俺もその後に続き現れる魔物たちにはいっさい構わず、すべてを置き去り走り続ける。




 ――――――。


「止まれランマ」


 先を走っていたトリウィアが急停止と同時に声を上げる。


「――降っているな、それに木も崖も辺り一面氷漬け。『始祖氷狼(ハティ)』のテリトリーか……」


 小さな雪の粒がふわりふわり。ゆっくりゆっくり降り続ける。

 雪がめったに降らない地域の子供なら、大喜びしそうな優しさを感じる降雪。


 俺は慎重に近づき。

 いっさいの油断なく、降り注ぐ雪の一粒に指先を当てた――。


「ッ凍――」


「主さま!」

 

 刹那の『うずくまる』――凍結は解除された。

 がマジか、(オクトー)の補正全開で触ったんだが、指先から全身をまたたく間に凍りつかせてきた。


「それがキミの天星スキルか、凄いな一瞬で解凍された」


 銀髪の不老少女は、好奇心旺盛に目を輝かせる。


「これは……無理じゃないか? 軽く一粒触れただけで (オクトー)を凍結させそうだった。これじゃあ戦いにならないだろ」


 トリウィアにどんな切り札があるかは知らないが。

 力の欠片に触れた感想としては、どうにかなるレベルとは思えない。


 (ノウェム)は本当に別格だ。

 ナウメが越えられたように『始祖氷狼(ハティ)』もその気になれば、聖女結界を軽々乗り越えられるだろう。


 人類が滅んでいないのは、(ノウェム)が積極的に滅ぼそうとしていないからにすぎない。

 天災みたいなものだ。運悪く遭遇すれば終わるが、人類に対する悪意はない。


 君子危うきに近寄らずという言葉もある。ここは引いた方がいい……。


「だからこそだろう? 格下を普通に倒して英雄などと誰が呼ぶ。誰もが勝てないと思う相手を倒してこその英雄だろう。そうでなくては意味がない」


「言いたいことはわかるが……リスクに対するリターンが少なすぎる。最悪俺がここから動けなくなる可能性すらある」


 『始祖氷狼(ハティ)』が王国の味方だというなら、相手の戦力を抑え込むことに繋がり意味がある、だがそうじゃない。

 上手く倒せたとして得られるのはなんだ? 『始祖氷狼(ハティ)』のクリスタルと栄光。それはリスクに見合っているのか?


「冷静に考えれば、倒して名声を得たからって――」


「冷静に考えるな! リスクやリターンを考えるな! 決めたのなら突き進め! ――キミは『英雄』の力を舐めている」


 言葉を遮られる。


「そもそも英雄というなら……俺より直樹(なおき)の方が近いだろ」


 リーダーはあいつで奴隷解放を決めたのも、腐敗しているルミガ王国をもっとも許せていないのも直樹だ。


「結果が出る前からわかるはずがない。――誰かの軌跡を誰かが振り返ってみたときに『英雄』は生まれる! 語り継がれる! それ以外の英雄はすべて虚構かまがい物だ!」


 トリウィアは英雄になにか拘りでもあるのだろうか?

 理解出来そうでできない。独特な英雄論を熱弁される。


「だからこそ革命を終わらせればわかるはずッ! 誰が『英雄』だったのかッ! 進んだ先で答えを知ろうッ!」


 自分の言葉で鼓舞されるように、小さな少女の熱量が増していく。


「見せよう、これが私の最大火力ッ! 夢の過程の現在地点ッ!」


 トリウィアが銀の魔力を放ち、中空から大砲を取り出す。収納魔法か。

 自らの足から首ほどまでの長さの大砲を構え。


「――『三十式魔砲弾発射ラムダ・キャノン・エクスプロージョン』」 


 宣言とともに魔砲弾が、こんこんと降り注ぐ雪へと放たれた――。


 ヒュゴオオオオオオオオオオオオオオオン。

 爆音を響かせ、銀世界を疾走する魔砲弾。


 あの雪にぶつかっても凍っていない!? さすが自信ありげなだけはある。

 まさかこれで倒せるのか『始祖氷狼(ハティ)』を!?


 ――そして。


 ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン。


 遠方で大爆発が発生する。

 降り積もった雪を蒸発させながら、爆炎が天を穿つ。


「やったか!?」


 最初の100倍どころではない超火力に、俺は思わず口に出していた。

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