2話:スキルの解釈
小鎗が剣を2本拾って友方の後を追うように出て行く。
俺、物集、毒島も小鎗を追うようにそれぞれ剣を拾って、クラスメイトたちのバイバイコールを背中で聞きながら広場を離れ拠点から出る。
拠点の外に出たのはクラス転移直後以来だな。
この森に魔物という化け物がいると判明し、女は全員拠点班。
戦闘や探索で使えるスキルを持たない男も、拠点班に割り振られた。
追放された俺らは5人とも拠点班。
小鎗だけは1週目は探索班だったが、2週目には魔物と遭遇したら足手まといにしかならないと、悔しそうな顔でいいながら拠点班へと移ってきた。
「2人ともどこまで行ったんだろうね」
物集が話しかけてくる。
声を聞くと女の子。顔を見ても女の子。体を男子制服の上から見ても女の子。
だが本人の主張どおり男なのだ。
「さぁ? 俺たちに行く場所なんてないさ」
俺は半ば自棄気味に答える。
そして改めて追放された5人のスキルを考える。
『うずくまる』効果はただうずくまるだけ。
『物拾い』効果は誰でも拾える、そこら辺にある物を拾うだけ。
『吹き矢作成』効果は吹き矢を作るだけ。
『極小貫通孔』効果は目に見えない極小の穴を空けていると推測されている。
『告げ口』効果はよくわからない、クラスでの実験では何も起きなかった。
これで魔物と戦うのは無理だろう。よって魔物との遭遇はすなわち死である。
最近拠点周辺の魔物との遭遇は減っているらしいが、なくなったわけではない。
「拙者としましては小鎗殿はともかく、友方殿と合流したくないですぞ」
毒島が言う、俺も同意。
だがさっき俺のなかでお前は、友方と同レベルでご一緒したくない奴になったぞ。
真のファッションと思って。意図的に卑猥な髪型にするとか。ロックすぎる。
「5人しかいないんだから、協力しないと生き残れないよ」
「しかし協力したところで、話に聞く魔物相手に勝算は生まれぬでござるよ……」
毒島も俺と似たようなことを考えていたのだろう、諦め気味の口調で言う。
「うずくまる、吹き矢作成、物拾い、極小貫通孔、告げ口。見事に外れスキルが集まったな。お手上げだ」
男子のスキルカースト下5人を、まとめて追放したのだから当然の結果だが。
「小鎗君の貫通孔とか強そうなのにね」
「空けられる孔が細孔では……地球でならばマクロ分野で大活躍。億万長者も夢じゃないスキルでござるが……魔物相手ではよわよわでござるな」
「強そうといえば、物集の物拾いもだろう。ホントに石ころとか枝しか拾えないのか? こう気合い入れたら、銃とまではいわないけど。せめて水や食料とか拾えない?」
スキルの出力は精神で調整できるらしいから、ガッツでワンチャンないかな。
「うーん……もう何度も試したけど。もう一度やってみるね」
うーんうーんと、かわいくうなって気合いを入れる物集。
「食べ物か水を拾いたい! 『物拾い』」
歩きながら声に出し、小柄な体を曲げて地面を掴むように右手を振る物集。
「……ごめんね」
申し訳なさそうに持ち上げた右手には、そこらの木から落ちているのと同じ。
月島と毒島でもわからないという地球外植物、正体不明の葉っぱが握られていた。
「拙者でも拾えるでござるなぁ……」
たしかにそうだが――。
「ちょっと待て。閃いたかもしれない」
手を前に出して2人を静止する。
「猫島君?」
「どうしたでござるか? 立ち止まると、追いつくのが面倒になるでござる」
「その葉っぱ。試しに食べてみた奴が苦くてマズくて、とても食えないと吐き出したから誰も食料とは認識しなかったけどさ。いま物集は食べ物か水を願って拾っただろ。つまりそれマズいだけで食べられる葉っぱなんじゃないか」
2人がハッとした顔をする。
「盲点でござった」
「凄いよ猫島君!」
「落ち着け、まだ確定したわけじゃない」
俺は物見の拾った葉っぱを受けとって、大量に落ちている同じに見える葉っぱを拾い見比べてみる。
「どう見ても同じ葉っぱだよな?」
「ござる」
「うん」
「食べてみるぞ」
もぐもぐもぐ。うぐっ。もぐもぐ。うぇぇ。もぐ。ごくん。
ぐへぇ。
「話に聞いてたとおりだ、苦くてマズい。だけど我慢すれば食べられるレベルだ。これが食料になるなら栄養補給はできる。激マズいけど……」
「私も食べてみる」
「拙者も挑むでござる」
「――むぐぐぐ」
物集は泣きそうな顔で口に手を当て、吐きそうになるのを堪えているようだ。
「ふむ、拙者。真のお茶が好きでござるゆえ、苦みには強く。この葉っぱ美味でござるな」
真のお茶ってなんだよ。つーか平気ならともかく美味はないだろう?
「おかわりするでござる」
!? 激苦の葉っぱを複数枚ガッツリ拾って口に放り込んだぞ。
苦味マウントじゃなくて。マジで美味に感じてるのか。
「毒島、お前の味覚やべーな」
称賛のやべー。
……マジとやばいって便利な言葉だよな。
「ふふ。猫島殿はお子様舌でござるなぁ」
いや、ピーマンレベルの苦さじゃねーから。
見ろよ物集のブルーフェイスを。
飲みこみたくても、飲みこめず。口のなかで時間稼ぎのもぐもぐ。
その結果苦味成分がドンドン抽出されていき、苦味の悪循環になってるぜ。
「物集、無理すんな、吐いてもいいぞ」
「むぐぐぐぐ」
ぶんぶんぶん。
口を押さえながら首を左右に動かす。予想外のガッツを見せてくれる。
「むぐん」
涙目になりながらも吐き出すことなく、飲みこむことに成功した物集。
「ナイスファイト」
「ござる」
肩を叩いてねぎらう。
「私これを食事にするのつらいかも……」
「普通の食料も見つかるかもしれないし、あくまで非常食と思っておけ」
「うん……」
「スキルの解釈! 『物拾い』は拾える物の鑑定に応用できたでござる! 少し希望が見えたでござるよ! 小鎗殿と合流し魔物遭遇時の対策を考えてみるでござる」
威勢よく毒島が、新たに判明した『物拾い』の可能性を言葉にする。
「そうだな。俺らの外れスキルも、案外実戦で使える可能性があるかもしれない」
『うずくまる』はどうしようもないだろうけど。




