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28話:悪化する王都の治安

 影に呑まれ一瞬視界が真っ暗になったが、即座に酒場の光景が目に入る。

 血を流し倒れるマスター。女の服を引き千切ろうとする2人の男。


「お前らッ!」


 怒声を放つ。


「ヒャーお楽しみを邪魔する馬鹿は誰だァ……ぁ…………」


 細い男が奇声とともに振り返り、語気がしぼんでいく。


「聖弓のら、ランマ!? 何でだよ! こんなクソ酒場に? 待て、落ち着けほら見ろ俺らの顔を」


 大男が自分と細い男を指差しながら言う。


「えへえへへへ、ぐーるぐるだよぉ。飲み過ぎちゃったぁ」


「悪かったぁ! 酔っ払ってたんだよ! 誓って悪気はないぃ! この通りだぁ。嬢ちゃん悪かった! 悪酔いしたんだよ! な? な?」


 涙ながらの土下座。演技なんだろ、それ? 

 そもそも酒場のマスターがどう見ても……間に合わなかった。


「お前ら、それが通じると思ってんのか?」


「ひぃ許して! 2度としません! 真っ当に生きますから! ランマさま!」


「バレたら、必死に謝れば許してもらえる? バレなきゃ丸儲け?」


「ヒャ!? ナンデぇ!?」


 ……まさか俺が、俺たちが……友方(ともかた)以外がここまで舐められていたとはな……。


 ――思い返してみると。

 無抵抗になって命乞いを始める卑怯な奴を、殺していたのはいつも友方だな。

 俺が甘すぎた? いや違う。俺がやる前に友方がやっていただけだ。


 ――だが悪党だからって。

 死ねよ! やったー死んだ僕凄い! って俺にできるのか……?


 ……ッ! こいつらは俺が殺す!


「オネガイ、オネガイ、ユルシテェください。ランマさまぁ」


 男たちに俺への戦意はまるで感じられず。無抵抗に土下座して謝り続ける。

 だがこいつらは腹で笑っているんだ、反省なんてしていないッ! 

 戦ってもわずかの勝機もないと、知っているからこうしているにすぎない屑ども。


 だから殺す! 俺が殺す! ッ息が荒くなってきた。

 立ち上がれよッ! 隙有り死ねーって斬りかかって来いよ悪党ども。

 そうすりゃ遠慮なくやれるのに。無抵抗はやめろ卑怯だぞ。


「にゃははははは」


 ナウメの笑い声が聞こえて、俺の影がニュルリと男2人を掴んだ。


「ヒャ何? 許して――」


「やめろぉ! こんなに謝ってるのにぃ――」 


 ブシュブシュ。影に潰され2人の男は死亡した。


「にゃんにゃん。こんなの主さまが手を下すまでもないにゃん」


「ッ! 違う、違うぞ。これはダメだ、ナウメッ! 俺はお前にこんなことをさせるために主になったんじゃない。2度とするな」


「にゃんは全然平気にゃん。猫たちにひどいことする。こんな奴らいっぱいやってきたにゃ」


「違う。自分でやらないとダメなことだったんだよ、これはッ」


 なぜならば『光の意思たち(ライト・スピリッツ)』は弱者に過酷すぎるこの異世界で、正義を成すクランとして結成されたからだ。

 

 ――最後を人任せにする正義などあるはずがない。


 それに何より自分の代わりに、猫の手を汚させることなどダメだ。

 ありがとうナウメ。お前のおかげで覚悟を決められた。


「大丈夫か? マスターは……すまない間に合わなかったな」


 1度も来たことがない酒場の見知らぬマスターだが、気分がいいものじゃない。

 立派だったよ、店員を守ろうとしたんだもんな。安らかに眠れ。


「ランマさまぁ。うぁぅぅぅ」


 女店員が胸に飛び込み涙を流す――泣き止むまで待ってから、王都の衛兵を俺の名前を使って呼んだ――。




 ――衛兵が適当な仕事をしないよう念を押してから、俺は場末の酒場を出て。

 煌びやかな中央と同じ王都とは思えないほど、薄暗いはずれの路をフードを被り歩いていると。


「オラオラオラオラ。そこのフード! てめぇいいローブ着てんじゃねーか。金寄こせや!」


 背中から声が聞こえてきた。


「何だ? 俺に用か?」


 振り返って答える。


「そうだ! てめぇだよ! 金寄こせや! その服見りゃわかる金持ってんだろ?」


 ……うちのクランはギリギリの財政だが、命に直結する装備をケチることはない。

 それほど派手なローブではないが、ある程度の目利きなら安くはないとわかるか。


「チッ、いまの俺はかなり機嫌が悪いぞ?」


 フードを降ろす。


「へ……? お前はランマ?」


 俺の顔を見て、虚を突かれたような声を出す馬鹿男。


「ぐぎゅ。許せェ! ゴボヘェ」


 馬鹿男の顔を片手で掴みそのまま――ズドン。

 地面へ叩きつけた。何本か骨が折れたはず、いい薬になればいいんだがな。


 男を放置しフードを被って歩みを進める。


「いったいどうなっている?」


 独り言を漏らしてしまう。

 この治安の悪さ、まるで『過剰な光(オーバーライト)』以前の王都だ。

 まだ友方が死んで1日だぞ。どんな抑止力だったんだよ。

 あいつぐらい、気軽に殺していかないとダメなのか? 抑え込めないのか?


 地面に放置したあの男。友方なら間違いなく殺していた。戻って殺すか?

 ――ダメだな、思考が物騒になりすぎている。


「にゃははは。主さま何か難しく考えすぎてないかにゃ?」


 愚賢者のように、ナウメも心を読めるのか?


「にゃー愚賢者ほどには無理にゃ。あれは選ばれし祝福者(ゲニウス)の頂点にゃ。にゃんには影に潜った相手の感情が、にゃんとなーくわかる程度にゃ」


「そうか。ちょっと安心した」


 さすがに常時心を読まれるのはキツいからな。変なこと考えられなくなってしまう。


「主さまはもっと気楽でいいにゃ。ムカついたら考える前にぶち殺すにゃん」


「いや、それはさすがにな。俺さ天星スキルはチートだけど精神は普通だぜ。ネジが飛んでないんだよ」


「弱肉強食が世の常にゃ。強い主さまはもっと気楽に生きるにゃ」


 あぁまたナウメ島に行きたい。にゃんにゃん撫でてゴロゴロしてたい。


「またナウメ島に来たいにゃん? いまから行くかにゃ?」


「いや、遊んでいられる状況じゃないな。目に見えて治安が悪化している。――何かが大きく動き出しそうな予感がする」


 普通に正義感があるのが辛いところ。見なかったフリはできない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白く一気に読めた 最初のキャラ設定で不安を覚えたけど、ここまで読むと有りだと思えるから不思議w [気になる点] 友方をもうちょっとまともにすれば凄い使えるのに早期退場したのはどういう意味…
2019/12/09 17:27 退会済み
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