11話:森を抜けて
――小鎗がスキルを付与した毒矢を使って魔物を倒しても、小鎗が光ることはなかった。
小鎗と友方以外で貫通付与毒矢を、一斉に魔物へ打ち込んでいく戦法をとるようになった後、まずは毒島のレベルが上がり。
次いで物集、俺もうずくまりながら毒矢を吹いてレベルが上がった。
友方もついに毒矢を使う恐怖より、取り残される恐怖が上回ったらしく毒矢を使ってレベルアップ。
……友方がクラスアップして『告げ口』強化を考えるとおっかない。
追放から3日目は友方が綺麗な水と美味しい食料を求めて発狂。
スキル強化を期待して、物集のレベルを最優先に上げる戦略をとることになった。
1日魔物を物集に倒させ続け、日が沈みそうなころ超発光のクラスアップ。
狙いどおり『物拾い』が強化され、綺麗な飲み水と主食のひとつだったリンゴのような果物を拾えるようになった。
追放から4日目。友方が清潔な服を求めて発狂。
『物拾い』で服を拾うことはできず。
それでもうるさい友方を見かねた小鎗が、この日の移動は中断すると決定。
森の植物を利用して全員で服を作ることになったが、友方は自分のを小鎗に作らせていた。
うずくまるの効果は装備にも及ぶ。
俺の制服はほつれもなく清潔だったが、1人だけ着替えないのは寂しいのでいちおう作ってみた。
――不器用で着られるレベルではなく友方に笑われた。
結局俺の分は物集が作ってくれた。ありがとう。
そして毒島の手先は器用で、1番上手に植物の服を作っていた。正直似合わねぇ。
そして今日、追放から5日目。
日の出とともに森を進み続けて、太陽が頭上を照らすころ――。
「道だ……粗いが自然にできるとは思えない。人工物だッ!」
森を抜けることに成功。先頭を進む小鎗が声を上げる。
道は砂利や小石だらけでかなり粗く、自転車が通るのは無理そうだが。
たしかに人の知性を感じる道路が、俺たちの眼前へと広がっていた。
「ござるぅぅぅ」
「よかった。この世界私たち以外にも人はいるんだね……」
喝采するござると。安堵の息を吐く物集。
「あぁ!」
俺もテンションを上げながら相槌を打つ。
そうだ! この道を木村たちが作ったはずがない。
人がいるッ! それも道を作るレベルの文明がある世界だ!
「待ってたらタクシー来るかな?」
――冗談なのか? 本気の馬鹿なのか? 友方だけにわからない。
「車は無理でも。馬車はあるかもしれないぞ」
道を調べていた小鎗が、蹄と車輪のような跡を指差す。
「ああ。だが……人が善良とはかぎらないぞ、小鎗」
上がりすぎたテンションを静めるため『うずくまる』を使い、精神を落ち着かせながら言う。
それに冷静な頭で考えると、知性があるから人ともかぎらない。
魔物や猿が世界の支配者でも不思議ではないのだ。
「あぁ……正直あまり考えたくはないが、楽観はできないな。ありがとう猫島。お前がいてくれて本当に良かったよ」
「俺を褒めても、人並みにしか喜ばないぞ?」
起き上がりながら答える。
友方なら周囲にドヤ顔でマウントを取るだろうがな。
「あはは。それでいいさ」
小鎗が笑いながら肩を組んでくる、距離感が近い。だがそう悪い気はしないな。
「小鎗殿。拙者とも肩を組んでくだされ」
「じゃあ私も猫島君と組もうかな」
物集と毒島もノッてきて円陣になる。体育会系みたいだ。
「ちょ、僕をハブるなよ」
小鎗と俺の間に割り込んでくる友方。ヤベー悪い気しかしない。
「よし。掛け声いくぞ!」
恥ずかしいノリだが――まあいいか。
「どこでも!」
小鎗が声を出した後、俺をチラリと見る。
ッ俺に続けろというのか……。
「団結!」
この掛け声に深い意味など必要ないはず。適当にそれっぽいワードを言う。
これ陽キャ以外にはかなりハズいぞ。物集に目線で次を促す。
「えっと……友情!」
綺麗な顔を真っ赤にしながら物集も続く。
「しからば必勝! でござる」
空気を読んだ毒島も続く。さて最後がヤベー奴に回ったぞ。
「僕王さまッ!」
どこでも! 団結! 友情! しからば必勝! 僕王さま!
マジヤベー。友方の奴、本気でどんな精神してるんだ。
「おー!」
友方をするりと流して小鎗が声を上げる。
「おー!」
友方スルーで団結力を発揮。小鎗に続き俺たちも声を上げる。
「あれ僕、いまのツッコミ待ちだったんだけど?」
知るか。本気としか思えなかったわ。