1話前編:クラス会議で追放される男5人
俺の名前は猫島 嵐真。
普通の高校生だったんだが、授業中に異世界へとクラス転移してしまったんだ。
女神に告げられた、俺の異世界スキルは『うずくまる』だった。
その場にうずくまる。ただそれだけのスキルだった。
初めて使ったときは、クラス転移の混乱で沈んだクラスメイトたちを笑わせて、前向きにさせることができたからまぁいいかと思っていたんだが……。
それから1ヶ月……出口もわからぬ森の中。
魔物の恐怖に怯える過酷な異世界生活を送るうちに、クラスメイトたちは変わっていった。
魔物と戦えるか生活に役立つ、当たりスキルの持ち主たちが増長。
戦闘、探索、生活。いずれにおいても役に立たないと判断された、外れスキル持ちの扱いが悪くなっていくカーストができたのである。
俺の『うずくまる』は何の役にも立たない、最大の外れスキル扱いでスキルカースト最底辺の1人だ。
それでも生きるため、当たりスキル持ちの雑用に甘んじていたのだが、それも限界を迎えそうだった。
最近俺が飯を食べてるだけで、舌打ちされるようになってきたし……。
異世界クラス転移の初期地点である謎の森の中に、当たりスキル持ちを中心にクラスで協力して作り上げた拠点。
その中央たる広場に、クラス全員が集合している。
……この拠点を作った当時は当たりも外れもなく、お互いにできることで協力し合ってたんだけどな。
俺たちは全体の情報共有のために3日に1度は、地球感覚の午前9時ぐらいにクラス会議を行っている。
「あー諸君。よく集まってくれた。本日のクラス会議の司会は俺が務める」
戦闘系最強扱いの超当たりスキル『破壊光線』を授かった男、木村が偉そうに前に出る。
転移前はキョロ充だった男がじつに偉そうだ。
しかし木村が魔物を倒してくれなければ、クラスが全滅していても不思議じゃないしなぁ……。
スキルカーストの頂点たる男には、誰も文句を言うことはできない。
「本日の議題は食料問題についてだ。拠点周辺の食べられそうな物はこの1ヶ月であらかた食べ尽くしてしまった。そうだな月島?」
木村に呼ばれた男。
クラスで一二を争う秀才で学級委員長だった月島が、眼鏡をクイッと持ち上げながら答える。
「えぇ、その通りです。現在のペースで消費すれば10日後に食料が尽きる計算です」
「嘘」
「どうすんだよ! 餓死は嫌だぜ」
ざわざわざわざわ。クラスメイトたちがざわめきだす。
「――食べられるかは未知数ですが、魔物の死体は凍らせて保管してあります」
月島がとんでもないことを言う。あんな化け物食べるなんて……。
「嫌よ! あんな化け物食べたくないわ!」
複数の女子たちが声を上げる。心で同意する。
「月島! どうにかしろよ! 委員長だろ!」
「そうよ、そうよ!」
男子の1人が声を上げたことで、女子たちが乗っかるように月島に詰め寄る。
ドォン。
「静まれ!」
弱めの破壊光線を地面に放ち、みんなを黙らせた後木村が言う。
「月島を責めても、どうしようもないだろ」
「そりゃまぁな。けど実際食料どうすんだ? 探索で魔物と遭遇するペースは減ってる。魔物を食べられたとしても結局問題の先送りだ」
当たりスキル『超筋肉』を手に入れた探索班の男肉丸は、冷静な意見を述べる。
肉丸を見ると、当たりスキルの力がよくわかる。
運動部のエースだった肉丸は、もとから体格に恵まれ筋肉質だったが。
『超筋肉』を使ったいまの肉体は次元が違う。地球のどんなボディビルダーでも敵わない、凄まじい体を手に入れている。
「その通りです。このまま森の中でサバイバルをしていても、我々に活路はありません。地球から助けなど来ないでしょうし……」
月島の言葉尻は重い。
そりゃそうだ。異世界なんてファンタジーすぎる。
正直いまでも、ここは地球のどっか海外で魔物もスキルも、何かテレビ的なパワーで演出してるんじゃないかと思ってしまう。
「つまり我々が生きるためには、この何もわからない森の中を大きく移動しなければならないということです」
「危険じゃない? 私のスキルじゃ魔物と戦えないわ」
「木村たち探索班のみで動くんじゃないのか」
クラスメイトの男女が異を唱える。
「拠点を守る防衛班と探索班。戦闘力を分けたこれまでのやり方では、現状から先への周辺探索はリスクが大きすぎます」
「そういうことだ。クラス全員で移動するしかない」
月島の言葉を木村が拾う。
「けど危険じゃ――」
「そしてッ! そのために俺たちにはやらなくちゃいけないことがある!」
クラスメイトの言葉を大声で木村が遮る。
「食料はわずか! 移動中の戦闘員の負担の軽減! つまり役立たずを排除する!」
静まりかえるクラス。
……ついにこのときがやってきた。間違いなく俺は排除される側だろう。
何せスキルが最大の外れ『うずくまる』だ。
「月島と相談して、使えない奴の選別は終わっている。この場で発表し追放する!」
魔物が徘徊するこの森で、戦闘力がない外れスキルを追放するというのは、実質死刑のようなものだ。
「いや、いやぁぁぁ。待って私死にたくない!」
それがわかるのだろう、外れスキル『道連れ』の女子、姫宮が悲痛に叫ぶ。
道連れは敵といっしょに死ぬ自爆スキルと推測されている。
当然姫宮は絶対に使わないと宣言し、1度も使っていない。完全なお荷物だ。
地球ではカースト上位女子で自己中なところがあり、イラッとする奴だったが。
この1ヶ月で落ちぶれたのを見ると少し同情する。
まあ追放組みだろうから、外れスキル同士やっていこう。
魔物に遭遇して即死かもしれないけどな。
「安心しろ。女子を追放するほど俺はクズじゃねーよ」
えっ。男女差別……。
クラス投票の過半数獲得で、女子は戦闘に使えそうなスキル持ちでも拠点班に配属となった。
俺は女子でも戦えるスキルがあるなら、探索班か防衛班へ配置に投票したんだけどな。
このクラス、フェミニスト多くないか? それとも下心か?




