第一話 入学式
この度は、ご迷惑をおかけしてすみませんでした。新たに、改稿して書きました。これからもどんどんこちらで投稿していくので、よろしくお願いします。
とある高校の入学式のこと。
「一同着席、新入生代表 柳木 龍」
この日の春の日差しが自分の体を暖かく包み込もうとして、外に立つと、空気が耳の中になだれ込み、静かにこだまする。
今日は学校で大事な式がある。
寒い高校受験を乗り越えて、新年度を迎え期待を胸に意気揚々と訪れる中、彼は今年の新入生である。
入学試験で一位の座を取り、この体育館の中央にある赤いカーペットを歩き、壇上に上がって、新入生全員の前で挨拶をする。
「一同礼」
それに合わせて彼も新入生全員と一緒にお辞儀をする。そして、新入生代表として答辞に書かれている文章を読み上げる。
「………」
こうして一通りの文章を読み上げた後は、自分の席に戻り、一番大きな役目を終える。
体育館の中で、先生の説明を受けて、しばらく時間が経つ頃には、自分が一年間通う新しい教室に向かう。
そんな彼の入学式での姿はというと、服装は制服で黒髪のシンプルショートに伊達メガネをかけて、おまけにマスクまで着用。こうして見ると陰キャラの格好をしている。つまりは変装をしている状態だ。
変装を解いた彼の姿は、茶髪でナチュラルなショートヘアーで顔が整っている超絶イケメンである。
そして、超人気モデル・俳優の超有名人だ。
彼は学校の過ごし方までこだわり、自分をあまり主張せず、存在感を薄くして、静かに過ごしていくようだ。確かにその方が変装をしていくには都合がいい。
そうして、学校の廊下を歩きながら学校での過ごし方を考えている。
そんな中、階段の曲がり角で突如誰かとぶつかった。
「きゃ……!」
女の子の悲鳴が耳もとに届く。それに気づいた僕は
「ご!ごめんなさい……」
彼女にすぐさま謝り、怪我をしていないかを確認する。
「あの、お怪我はありませんか?」
ひとまず彼女の手を引っ張って起き上がらせた。そして、彼女はニコッと明るい笑顔を向ける。
「うん、何ともないよ」
彼女の反応を見て、一安心した。
「私の手を引いてくれてありがとね、それとちゃんと前を見ていなくてごめんね」
「いえ、それは自分の不注意が招いたことですので…」
互いに謙遜し合う中、じっと彼女をよくよく見ると見覚えのある顔がそこにあった。
それは僕が小学生の時から、見知った顔である。雰囲気もだいぶ大人びたような感じがするが、かなりの陽気でもある。
「あっ!もうすぐ始業のチャイムが鳴るからまたね!」
彼女は急いで教室に戻った。
ここで出てきた彼女の名前は久野 姫菜。透き通るようなピンクのセミロングに、色白の艶々肌を纏い、胸も大きく。ちょっとしたあどけなさを―見せるが、ここ秀名学園の中では、一位、二位を争う超絶の美少女である。
この後の日程は、今日が入学式ということもあるため、早く下校して、家に帰り、明日のことに備える。
―その翌日―
朝早くに起床し、洗面所に向かって、変装ができているかどうかを確認する。やはり、自分の変装は抜かりなく施さなければ、返って不安になる。
変装の準備を終えたあとは、朝食をとり、学校に行く。
僕は家族に仕送りをしてもらいつつ一人暮らしをしている。
家は埼玉県のマンションを借り、ここから、家までの道のりは、電車を利用しながら三十分かかる。
通学中に僕と同じ制服を着ている人は、あまり見かけない。
学校に着いて、席に座る頃には、本を両手に持って読書をする。
そして朝の朝会が終わり、一時間目の授業が始まり、先生の案内のもとここの学校の中の教室や他のところを見て回る。
三時間目の授業後の放課に差し掛かったときは、教室を出て、他の教室に向かう。その途中、後ろから女の子の声が聞こえた。
後ろを振り向くと
「私に気づいたみたいでよかった、あなたに一つ聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「はい」
「もしかして―りゅうくん―なの?」
「え……?」
いきなりの事に頭が混乱し、冷や汗を流す。
「もし、あなたが本当にそうなのか確認していい?」
ここは、変装している事がバレないためにも一役買う。
「それは…恐らく人違いではないでしょうか?その人は同姓同名だと思います」
「う〜ん…確かに言われてみれば雰囲気も違うからきっとそうなんだろうね……私の勘違いでごめんね」
彼女には申し訳ないがここでバレるわけにもいかない。
「もうそろそろ移動教室の時間になりますので、僕はこれで失礼します」
「うん、私の話を聞いてくれてありがとね」
それぞれの教室に足を運び、ひとまず呼吸を落ち着かせた。