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第20話 安川夫人の剣幕


 琴葉の叔母が屋敷へ通ってきたのは、その後、間もなくのことである。軍服を着た十五郎が表向きの用件を告げたところ、いたく恐縮して受け、姪が迷惑をかけましてと謝る始末。他所へ嫁ぎ、今の名前は安川比佐子というらしい。


 ひたすら人の良い御夫人といった様子に安堵して、本命である霊媒師の件について切り出したのだが、


「迷信などではありません!」


と、安川夫人が強い口調で応じた。その剣幕に驚いた様子を見て、恥じ入りながら言葉を続ける。


「大きな声を出しまして、失礼いたしました。ですが、この屋敷では奇怪なことが続いているのです。母も姪も何もおかしなことはないと言うのですが、私に言わせれば母と姪がおかしいのです。

 昔は人の出入りの多い屋敷でした。私が子供の頃は使用人も住人も多く、建物も真っ当な造りをしていたのですから。

 それを私の兄が、もう亡くなりましたが、琴葉の父ですね。この兄が取り憑かれたように屋敷の増改築を繰り返し、今のようにしてしまったのですわ。

 通いで母の面倒を見にきていますが、説明のつかないようなことが何度も起こっているのです。琴葉も母も手が届かないような場所で修繕が必要だと思っていたところが、いつの間にか直っていたり、誰も使っていないはずの部屋から物音が聞こえたり、影のようなものが廊下を行ったりきたり、あるいは誰も湯張りをしていないのに、頃合になると風呂が沸いていたり、知らぬ間に食材が減ったと思えば補充されていたり、気味が悪くて仕方ありません」


 力説する安川夫人の話を聞きながら、十五郎は、ずいぶん便利な出来事だなと思ったが、余計なことを言う必要もないと口には出さなかった。


「なるほど。おかしなことが起きるのはそうとして。自分としては世に蔓延るインチキ霊媒師、詐欺師の類ではないか、少々心配です」


「ふふ、大丈夫ですわ。今日、来てもらうのは父が懇意にしていた方の紹介で、天覧兜割り試合で有名な榊原鍵吉翁の孫娘、山中佐奈さんですから」


 思わぬところで佐奈の名を聞くこととなった十五郎らである。



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