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第11話 大当たり!


 鍾馗の山車を遮るように現れたのは件の辻斬りだ。黒い着物姿に、猩々面のような冷たい顔。


 山車の担ぎ手連中も、尋常でない巨躯の辻斬りを見て一瞬たじろいだが、そこは江戸っ子、神田っ子。辻斬りの脇を抜けていこうとした。

 しかし、彼らの唖然としたことには、十人がかりでようやく持ち上げられる山車を、辻斬りが平然と片手で持ち上げたのだ。それも、何人かは山車にしがみついたままである。


 辻斬りが山車を持ち上げて振り回し、駆け寄る十五郎に向かって放り投げた。


 幸い、しがみついていた連中は投げられる前に落っこちて大事はない。一方、地べたに強かに叩き付けられた山車はばらばらの有り様。

 さすがの担ぎ手たちも転げるように逃げ出した。同じく転げ落ちた鍾馗の人形が、弓曳童子の人形とともに天を仰ぎ、風雨が激しさを増し始めた。

 

 投げつけられた山車を避けて地面に転がった十五郎に辻斬りが走り寄るが、二度、三度、突き立てられる刀をかわして身を起こした。


 立ち上がった十五郎を相手にするかと思いきや、跳躍した辻斬りは琴葉の眼前に降り立った。その前には、庇うように佐奈が構えている。脂汗を流しながら気配を探る佐奈を尻目に、辻斬りは気軽にしゃがみこみ、後ろで怯えている琴葉の顔を覗き込んだ。


「あな嬉し、あたりも当たり、大当たり!」


 若い女の声音で、辻斬りの言葉である。


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