誰か愛してくれよ
朝、テレビのニュースで犯罪者が写っていた。昼、ナチスの独裁者を授業で習った。夜、電車が人身事故で遅延した。君らはその人らを笑う、笑う。なぜそんなバカなことをするのかと、なぜおかしいと気づかないのだろうと。僕もつられて笑う、笑う。なぜ自分が今笑っているのかすらわからないまま。
悪人にはそれを悪人たらしめた理由があるはずだ、裏切られた、信じられなくなった、愛する人をなくした。君らはそれを知らずに笑う。悪人を愚かだと笑う。
でもそれっておかしくないかい?
悪人は弱い人間かもしれない、愚かな人かもしれない。だけどそれを笑う自分もまた愚かじゃないか。その人が何を思ったかも知らず、結果を見て人を笑う。結局君も知らないじゃないか。何も知らないじゃないか。
聞こえないかい、悪人の叫びが。聞こえないかい、愚か者の叫びが。聞こえないかい、愛を求める人の叫びが。
その叫びを聞かない君らこそ、神に裁かれるべきじゃないか?
君がこの世の神ならばどうか哀れんで。
独裁者だって人に愛されたいのさ。僕だって愛されたいよ。