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私の日常・非日常  作者: 森崎優嘉
1年生
9/36

過去と復讐

「おかえりなさい」

「ただいま」


家に帰ると全員がリビングにいました、ちなみに沙耶は情報収集に行っています。


「茉里奈、沙耶からすべて聞いたよ」

「…はい」

「”今宵”…あの柴田を倒したのが奴らだったとはな」


奏は当時の機関の中で一番強い存在だった。

当時、弘人さんと奏が現在の私や斗和、英二の立場で2人は相性の良いコンビだった…それから特別部隊になるべく私達が入り、奏が私を、弘人さんが斗和と英二の指導をすることになったのです。奏は私の指導をしながらも機関の主力として、時には私を連れて活動していました…奏の強さを、私は一番近くで見ていた。


「柴田の死因は不明のままだった…だが、今日殺した犯人が分かった」


あの雨の日の事件。


「茉里奈、あの日、雨に濡れて倒れていた姿を今でも覚えている…それに、お前は当時思い出せないと言っていた…でも、知っているんだろう?」


奏は、奴らの殺人計画をいくつも潰してきた。


「茉里奈」


お父さんが私を真っ直ぐ見つめる。


「教えてくれ…あの日、何があったのかを」

「……奏、は…奏は、いつか奴らが殺しに来ることを…知っていた…」

「何?」


奏は、自分のことを簡単に殺せる奴らだと分かっていた…でも人々を守るために、彼女は最後まで戦っていた。




   *   *   *




「茉里奈、今日も一緒に行くわよ」

「分かった!」


あの日は、いつもの様に2人で任務に出ていた。午前中から雨が降っていて、早く帰って暖かいお風呂に入りたいと思っていたのを今でも覚えてる。


「準備はいい?」

「うん」

「よし…行くわよ」


いつもの様に守護対象を守りぬく。でもその日はどこか周りが静かだった…奏はおかしいと思いながらも任務を続行していた。


「茉里奈、絶対にここから出てはダメよ…いい?」

「う、うん…分かった」


本当は嫌だった…だって嫌な予感がしていたから、でも…当時の私にはそんなことが出来なかった。


「柴田さん」

「はい」


奏が守護対象に近づいた瞬間、銃声が聞こえた。


「やはり、こんなものでは死なないか」

「…なるほど、元より貴方はこちら側の人間では無かったということね」


銃を持っていたのは守護対象であるはずの人、そして見えるのは”今宵”のマーク。そして奏は大人数の人に囲まれてしまった。


「…チッ」

「さすがに君でも”今宵”の、この人数では敵うまい」


”今宵”は手慣れた暗殺グループ、奏ですらも”今宵”人間では4人が最低なのに…。


「やれ」


ついに戦闘が始まった。私は助けを予防にも怖くて動けなかったし、下手に動けば私もやられる…動くなと言われれば動くことは出来ない…ずっと見ていることしか出来なかった。


「はぁっ!」

「ぐあぁぁぁ!」


奏ではなんとか全員倒すことが出来た。私は嬉しくて、最後まで周りを見ろという事を忘れて飛び出した。


「奏!!」

「っ!駄目!」


パンッ


銃声と共に奏が私を庇う様子、そして奏でが撃ち抜かれる様がスローモーションのように見えた。


「か、なで?」

「う…クッ…だい、じょうぶ?茉里奈」

「かな、で…ごめん、なさい」


私の服や手には奏の血が着いていた。


「まり、な」

「かな、で、奏!」

「どうやら、私はここまでの、ようね…泣かないで茉里奈」

「私の、私のせいだっ!私が気をつけていれば!」

「一人にしてしまった私が悪かったのよ…まり、な…強く、なりなさい…あなたなら…がんばれ、る」


私はずっと名前を呼んでいた。


「皆を…まも、ってね」

「奏…かなでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」


そこから記憶が曖昧だった。気付いたら機関の医療室にいて、お母さんたちに抱きしめられた…でも、そこには奏がいなくて…見たのは冷たくなった奏で…。私の、私のせいなんだ…あの時、私が…私が…


「私が、死ねばよかったのに…」

「茉里奈、落ち着いて…嫌な事思い出させてしまったわね、ごめんなさい」

「私はずっと、奏との約束を守ってきた…これからも、ずっと」

「マリ…」


だから私は決めたの…絶対に奴らを殺すと。


「今日は疲れたから…もう寝るね、おやすみなさい」

「…そうだな、ゆっくり休みなさい」

「おやすみなさい、茉里奈」

「おやすみ」


部屋に戻りベットに倒れる。今日は本当にいろんなことがありました…私に幸せなんて不要ということでしょうか。…ん?着信…蓮君からですね。


『夜分すまない』

「いえ、蓮君もお疲れ様です。要件は雪音ちゃんでしょう?」

『ああ…どうだった?』

「お家は全焼、焼け跡からご両親の遺体が発見されました。弟の満君はお友達の家にいた為無事です」

『そうか…大丈夫だと思うか?』

「さぁ?ですが、悟君や悟君のご両親がいますから。それに、雪音ちゃんは強い人だと私は思っています」


まだ半年も経っていませんが、雪音ちゃんが強い人だということがよく分かります。


『確かに…悟がいるなら大丈夫だろうな』

「はい…夏休み中にまた、遊びに行きましょうか」

『そうだな』


満君も誘って、ですね。


「お疲れでしょう?ゆっくり休んでください」

『ああ…おやすみ』

「おやすみなさい」


通話を切りケータイを置く。


「ふ、ふふふ…ふふふ…よくもやってくれましたね、まさか…外堀から行こうと思うなんて…あちらさんは何も知らない小娘だと思われているようですが…ふふ、私はすべて知っていますよ…ふふふ」


もうすぐ、もうすぐです…ようやくここまで来た。


「奏…貴方の約束、もうすぐで果たせそうです」


私はゆっくり目を閉じた。




   *   *   *




あれから一週間後、私は何故かお兄ちゃんと共に生徒会室に来ていた。


「茉里奈ちゃんが手伝いに来てくれて本当に助かるわ」

「あはは…すごい量ですね」


生徒会室にある机の上には書類の山…多すぎです。


「一学期分の書類整理は夏休みって決まっていてな…これを全部やれというのもひどい話だ」

「そーそ!先生は誰も手伝ってくれないんだぜ?」


この量を6人、須坂先輩も入れて7人でやれと…確かに人員不足ですね。仕方ありません…手伝いましょう、早く終わらせて帰りたいですしね。


「谷坂先輩、こっち終わりました」

「次こっちお願い」

「蓮君、これそっち」

「和葉、終わったぞ」

「おい守、サボるな」


かれこれ1時間、多少は整理したのではないでしょうか。


「みんな、休憩しましょうか」

「さんせーい!」


ふふ、皆さん本当にキャラ濃いですよね…そう思いながら、持っているプリント用紙をファイルへ戻そうとした時でした。


『マリ様、緊急です!安部雪音が誘拐されました、”今宵”によるものと思われます』


手に持っていたプリントが落ち、床に散らばってしまいました。


「どうした?」


落ちた音と須坂先輩の声に皆が私を見るのが分かります。


『茉里奈、和葉!緊急任務だ、直ちに来い!!』

「っ!?」

「おい、本当にどうしたんだ」


お兄ちゃんが会長たちと話しているのが分かりますが私にはそんな余裕がありません。

雪音ちゃんが…さらわれた?今宵に?


パリンッ!!


「きゃあ!」

「誰だっ!!」


ガラスが割れるのと同時に黒ずくめの男たちが侵入してきた。胸元には”今宵”のバッチが…クソッ。


「鈴香さん!」

「動くな、下手に動いたらこの女を処分する」


鈴香先輩が人質に!でも私もお兄ちゃんも下手に動けない…。


「お前たちの目的は何だ」

「……ご同行願おう」


奴らの狙いは私でしょう?…身につけているマイクのスイッチをオンにするお兄ちゃんが見えたので一応長達には気付かせることが出来るでしょう。




その後、奴らに連れられ行った先は…ふふ、”今宵”のアジトですか。


「お前はこっちだ」

「茉里奈ちゃん!?貴方達、茉里奈ちゃんをどうするつもり!?」


殺すつもりでしょうね。


「マリっ」


大丈夫ですよお兄ちゃん、心配しないでください。

さて、私一人だけどこかの部屋に連れて行こうとしていますね…なんとなく予想はしていますがねぇ。


「ボス、連れてまいりました」

「入れ」


ほらやっぱり…部屋にはいると一人の男が窓の側に立っていた。


「こんにちは、有村茉里奈くん」

「こんにちは、土宮桐(つちみやきり)さん」

「おや、私の名前を知っていたのか。さすがあの柴田奏の弟子だね」

「お褒めに預かり光栄です」


土宮桐…”今宵”のボスである男。


「あの女を殺した時はまだ小さかった君が、こんなに大きくなって…私の計画を邪魔するなんて思っていなかったよ」

「ふふふ…時が立つのはあっという間ですから。それで…無関係な人達を誘拐して、一体何が目的ですか?」

「…君も私も多くの人間を殺してきた、間接ではなく…この手でね」

「あら、貴方は命令を出す側なのでは?そうやって多くの人を暗殺してきた…だから最強の暗殺グループを作り上げてきた」


奏も犠牲者の一人。


「はは、そうだね」


その瞬間、私の後ろにいた人が襲ってきた。私は反射的にナイフを振り、頸動脈を切る…もちろん返り血も着く。


「お見事…さすがだね」

「どういうつもり?」


私に殺させておいて、どういう目的なのでしょう…。


「…私はね、この裏社会で生きている中で…裏社会で行われていることを公になったら人々はどうなるだろうと、そう考えたことがあるんだ」


公に?…裏社会、私達が行なっているのは人殺し…まさか。


「察しのいい君なら分かるだろう?」

「いやっ!離して!!」

「雪音ちゃんっ!」


部屋から出てきたのは雪音ちゃん、そして後ろからはお兄ちゃんたちが…。


「君に暗殺を邪魔された安浦の双子と兄君以外は何も知らないだろう?」


どうすればいいの…狙いは私のはず…


「一般人が殺され、それを見ると…どうなるのかな?」

「いやっ…助けて…まり、なちゃん…」

「やめなさい!殺したいのは私のはずだ!!無関係な人を巻き込むな!!!!」


雪音ちゃんを拘束している男が拳銃を雪音ちゃんの頭につきつける。

雪音ちゃんが危ない!くっそ…いつの間にか拘束されているなんて…


「やれ」


男が銃の引き金を……あぁ…また、守れなかった…。


パンッ!!!!


銃声とともに倒れたのは……男のほうだった。


「残念でしたぁ」


そう言って現れたのは…


「お待たせ、茉里奈」

「…斗和?」


ようやく来たのですか…少し、遅かったのでは?


「くっそ!お前たち!やれ」

「そうは行かないんだなぁ」


突如現れた組織の人達に”今宵”の奴らは拘束され、無事に雪音ちゃんと生徒会メンバーも保護された。…土宮は上に逃げたようですね…ん?あぁ、加藤部隊と石山部隊が来たのですね。


「マリ!」

「お兄ちゃん」

「和葉、長から…この件の指揮はお前に託すってさ」

「え?」

「つまり俺達は和葉の指示に従うってわけだ。さぁ、ご命令を…次期長殿?」


お兄ちゃん…全員がお兄ちゃんを見ています。


「これから”今宵”のアジト制圧を行う。石山部隊と加藤部隊は直ちに制圧を続行…加藤部隊長」

「はっ!」

「生徒たちを外へ、途中で英二に引き渡し制圧に向かってくれ」

「了解いたしました」

「斗和、茉里奈」


お兄ちゃんが私達を見る、その表情はとても立派です。


「”今宵”のボスを頼む」

「ミンチにしていい?」

「…程々にな」

「怖い女…」


斗和を無視して私は雪音ちゃんの元へ行きます。


「茉里奈、ちゃん」

「雪音ちゃん、怪我はないですか?…怖かったでしょう」

「ううん…大丈夫」


無理、していますね。


「雪音ちゃん、雪音ちゃんのご両親を殺した奴らの事は私に任せて下さいね」

「う、う、うん…」

「おいおい、何怖がらせているんだよ…お前、本当に茉里奈だよな?偽物じゃないよな?」

「あら酷いですね斗和、私は有村茉里奈ですよ?ふふ…ようやくこの時がやって来たので少しうれしいだけですよ。さ、行きますよ…この手で奴を、恐らく側近のディック・ラングレイがいるはずなので2人まとめて処分です」


雪音ちゃん達の顔色が悪いですね、まぁ精神歪んでいるのは自覚していますからどうにもなりませんね。


さて、気を取り直して。現在私と斗和は最上階への階段を登り扉の前に立っています。斗和と顔を見合わせ、拳銃を片手に扉を開けます。


「やぁ、さっきぶりだね」

「どうも、土宮桐とディック・ラングレイ」

「ほう…ディックの事も知っていましたか」


当たり前ですね。


「このアジトは我々が制圧した、あんたらは早く死にな」

「ふはっはっはっは!でも、私達もここで終わることができないのさ…ディック」


ディックがすごい速さで向かってきた、でも私達も弱くなどない。ディックの相手は斗和に任せて…私は土宮の相手をしましょうか。


「敵討ちかい?」

「えぇ、もちろん」


お互いの戦闘力は互角、あとは長時間持つかどうかですね。


「あの頃の小さな子どもでは無いということだね」

「当然、今でも新鮮に思い出すわ…あの時の後悔と、”今宵”への憎しみがね」


奏の葬式が終わってから憎しみに気付いた。


「さぁ来たまえ茉里奈くん…柴田奏から引き継いだその力で、私を倒してみるがいい!!!!」

「言われなくてもそのつもりよ!!」


土宮と私がもつナイフがぶつかり合い宙へ舞う…銃を取り出し撃つのはどちらが速かっただろうか。


「…っ」

「クッ」


膝をついたのは土宮だった。

彼の銃弾は私の横腹を打ち抜き、私の銃弾は見事心臓を貫いた。


「はは…お見事、だ…動きに、まったく無駄が無かったよ…君の、勝ちだ」

「…当然です」

「さぁ…とどめを刺すがいいよ」


私は無言で銃口を彼の額に付ける。


「最後、君に忠告しよう…我々”今宵”より残酷な組織が…この世界に存在する。いつか…君を狙いに来る」


なんだ、そんなことですか。


「ふふふ、はははっ!!そんなこと、前々から知っていますよ…知っていて放置しているのです。でもまぁ…ご忠告どうも、さようなら」


パンッ


土宮はその場に倒れ、彼の周りには血だまりが…ようやく終わりましたね。


「奏…終わりました、といっても約束のほんの一部ですが」


奏との約束はたくさんあります。すべて果たされるのは、まだまだ先ですがね…さて、いつのまにかいなかなった斗和の方は終わったでしょうか…っ!…そういえば、彼に横腹を打たれたのでしたね。

そういえばここ、ボスの部屋ですよね…社長机がありますし。


「いい眺めですね」


椅子に座りながら外を見る。アジトの周りには機関の車がたくさんあります…ん?階段を昇る音が聞こえますね。


「茉里奈」

「斗和ですか、無事のようですね」

「あぁ、俺は無傷だぜ。ジャックは死んだ、土宮もな」


私は椅子に座って斗和に背を向けていますが、本当に怪我も無いようですね。


「お疲れ様です」

「おい、どうし…ってお前、その血!」

「横腹を撃ちぬかれるなんて…さすがボスですよね」


そう言って私が立ち上がろうとしますがふらついて立ち上がれませんでした。ですがその代わり斗和にお姫様抱っこされましたがね。


「止血はしてあるのでとりあえずは大丈夫ですよ」

「まったく…長達に怒られるぞ?」

「それくらい、覚悟していますよ」


あの人達は過保護なんですから。


「ずっと、この日を待っていたの」

「茉里奈…」

「奏を目の前で失って…それでも頑張れたのは奏と約束、していたから…どんなに辛いことがあっても、約束のために…」


あの時、どうして動いてしまったのか…どうして奏は私を庇ったのか…奏という戦力を失ってから、私は組織の人達に様々なことを影で言われ続けてきた。


「今まで…頑張って、これ、た…」


《強く、なりなさい…あなたなら…がんばれ、る》


大好きな師匠であり、姉のようだった。


《皆を…まも、ってね》


ねぇ、奏…。


「私、は…みんなを、まもれて、いるのかな…かなで」


そこで私の意識は途切れた。


「…ちゃんと、皆を守れているさ…茉里奈」










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