体育祭の種目決めです
とある高級住宅、その一室に2人の男がいた。一人は黒いスーツに眼鏡を掛けており、もう一人は金髪の男だ。
「ボス、これで依頼失敗が20件です」
「そうだな…またしても奴らは私の邪魔をする、特にあの小娘」
「確か…有村茉里奈でしたか、ようやく柴田奏を始末できたというのに」
黒いスーツに眼鏡を掛けたボスと言われる男は座っていたソファーから立ち上がり、美しい庭が望める窓の側へ歩いた。
「小娘も奴と同じ所へ行きたいようだ…」
「彼女は現在高校1年、前回のターゲットが同じ学校の生徒会に属しています」
「……捕まえてしまえばこっちのものだ、お前に任せるぞディック」
「御意に」
金髪の男…ディックが部屋を出て行く。
「柴田…お前の弟子も、もうすぐ冥界へ送られるぞ…クククッ」
* * *
「おはよ~!茉里奈ちゃん」
「おはようです、雪音ちゃん」
「おはよっす」
「おはよう」
「悟君と蓮君もおはようです」
朝、3人の顔を見ただけで平凡な日常が帰ってきたと実感できますね。
「もうすぐ体育祭だよね」
「確か今日出場種目決めだったな」
「楽しみだな!」
もうそんな季節ですか、中学は夏休み明けの秋でしたが高校では何故か雨の確率が高いこの季節なのでしょうかね…テストとか学期の関係なのですかねぇ
「私は楽な競技がいいなぁ」
「私もです」
「俺もだ」
「えー!お前らもっと楽しもうぜ」
悟君には悪いのですが、体育祭とは面倒としかいいようのないものですからね。
6限目、体育祭の種目決めとなりました。
「とりあえず選抜リレーは俺の手に持っている短距離記録で勝手に決めるぞ…てなわけで級長と副級長よろしく」
え、先生…体育教官室から持ってきたのですね。
「丸投げされたー」
「先生準備良すぎですね…んーっと2人か」
級長の大谷匠君と副級長の前田杏奈さんです。
「男子で速いのは片桐と片山だな、それでいいか?2人とも」
「おっけーい!」
「ああ」
そういえば2人はとても速かった記憶があります。
「女子はー…舞と有村さんね。舞はともかく有村さんは大丈夫?」
「なんで私はともかくなのー!」
「あんたは野生人なんだから大丈夫でしょ」
「野生人じゃないもん!」
上島舞さん。計測の時、野生人のごとく走って行く姿をこのクラスの人全員が見ていました…前田さんの野生人発言には誰もが頷いているのが証拠です。
「んで、有村さんはいい?」
「大丈夫ですよ~」
「よろしくね~有村ちゃん」
上島さんは小柄なので小動物みたいですね。
「よし次…あぁ、男女二人三脚リレーか」
「これって決めるの大変だって先輩達言ってたやつかぁ…」
男女でペアですもんね、身長差や歩幅も合わせないとなので大変ですよね…。
「みんな大体身長差以外はなんとかなるな」
「問題は舞か…」
「えー!?」
「アンカーは片桐にするか?」
「ん?俺はいいぜ?」
前田さんは他の人達と話し合ってペアを決めているようです。
「ペアは勝手に決めてもいいが」
「んじゃあ雪音、組もうぜ」
「はあ?なんでアンタと」
「幼馴染の力見せてやろうぜ」
悟君と雪音ちゃんのコンビというか漫才はこのクラスの名物みたいになっているらしいです、まぁお互い幼馴染同士なので息もピッタリだと思います。
「片桐と有村さんはどうする?」
「俺は何でもいいが…放課後とかの練習は生徒会があってあまり出れそうにないしな」
「私はむしろ放課後練習に出たいです」
「…無理だろうな」
「うぐっ」
体育祭では風紀委員が見回りなどを徹底に行わなければならないようです、特にこの学校は御曹司やご令嬢が多く通う学校…風紀委員の中でも特に体術や教養などに自信がある人は中心に動かないといけません…本当に嫌ですが私もその一人です。
「それなら2人で組めば練習の時間とかお互いで決めれるな」
「そうだな、茉里奈はそれでいいか?」
「うぅ…いいですぅ」
「じゃあ決まりだ」
「大谷くん、こっちは全部決まったよ」
「こっちも大丈夫」
こうして次々と競技を決められ、最終的に私が出るのは選抜リレーと二人三脚リレー、女子対抗タイヤ取りになりました。部活対抗の種目もあったりしますが私は関係ないので知りませんが悟君と雪音ちゃんはもちろん出るみたいです。
そして放課後、帰りたいのに委員会です…本当に帰りたい。
「…本当に嫌なんだな」
「当然です…もういやでッ…」
鋭い視線、外から?
「……」
「どうした?」
「いえ、なんでもありません。行きましょう」
気のせいですね。行くのが嫌だと思う時って早く着きますよね…風紀委員室に入り、いつもの椅子に座ります。
「全員集まったな?早速だが体育祭の警備についてチームと場所を割り振ってあるから確認してくれ」
須坂先輩から紙が配られ自分の名前を探す。私は6班ですね、メンバーは…あ、大山先輩と種内先輩に近藤君ですね!何という見覚えのあるメンツです…絶対狙ってます、ほら、須坂先輩笑ってますもん。
「体育祭前日にもう一回集まってもらうが今日は解散する…6班は残れ」
わぁ~嫌ですねぇ、帰りたいですよ。
「そう嫌な顔するな有村妹」
「嫌以外何もないのですよ、嫌な予感しかしないので帰ります」
「おうおう」
「まぁまぁ、茉里奈ちゃん」
「落ち着いて」
ムムムム…。
「お前らには特別権力者達を見ていて欲しい」
「俺権力者相手無理なんだけど?」
「私もよ」
「僕もです」
「俺はお前らの観察力を評価しているんだ。まぁ、頑張ってくれ」
なんか適当なのでは…まあいいです。
「ところで、襟を掴まれているのでしょうか…私は猫では無いのですけど」
「これから生徒会室に行くんだ、当然お前も行く」
「なんですかそれ、当然って何ですか」
無視して歩き出されたので暴れてみます。
「暴れると首絞めるぞ?」
「そうなったら首を締められたと兄に言います」
「なんだそれ」
だから離してください。そう言った途端私の足が浮いた…は?
「ちょっ!」
「暴れると落ちるぞ」
なんと…つまり私は今須坂先輩の横に担がれていると。…今日は厄日ですかね、生徒会室に着いて扉を開けても降ろしてもらえません。
「…何担いでいるんだ雅也」
「何でマリが雅也に担がれているんだよ」
何でもいいですけど誰か助けてくれませんかね。
「とりあえず茉里奈ちゃんを降ろしてあげて?」
「そうだな」
「はふ…鈴香先輩ありがとうございます」
「大丈夫?」
「なんとか」
本当に鈴香先輩は女神様ですね。
「体育祭の準備大変そうですね、文化祭も生徒会が企画なんですよね?」
「まぁそうね、でも各委員会で割り振りをしているから楽な方なの」
それは楽です、皆さんがんばってくださいね。
「ところで私は何故連れて来られてきたのでしょうか」
「…なんとなく」
なんですかそれ…とりあえずお兄ちゃんを待つということで、生徒会室の端で待たせてもらうことにしました。
暇なので体育祭についてお話します、この学校の体育祭は赤、青、黄、緑の4軍あります。確か今年は3年B組、2年C組、1年B組が赤軍で3年D組、2年A組、1年A組が青軍…3年A組、2年B組、1年D組が黄軍で、残りの3年C組、2年D組、1年C組が緑軍になります。私はA組なのでなんと須坂先輩とお兄ちゃんと一緒なのです。そういえば借り物競争なんて競技が前はあったらしいのですが現在の生徒会の人達にはそれぞれファンクラブがあるのでやめたそうです、良い選択だと思います。
体育祭の話はこれで終わりなのですが…暇ですね、眠くなってきましたよ。
「和葉の妹眠そうじゃん」
「というか、寝てるな」
「彰、確かそっちに掛けるものあったよね」
「ああ、確か…これだな、ほれ和葉」
「ありがとう」
本当はまだ起きているんですけどね。
「さて、さっさと終わらせるか」
「蓮くん、この書類お願い」
「分かりました」
ふあ~…少しだけお休みです。
《茉里奈》
《師匠!おかえりなさい、怪我はない?》
《ぜんぜんないわよ!》
これは夢ですね。
《茉里奈こそ怪我してるじゃない、今日は体術習ってたの?》
《うん!加藤のおじちゃんが稽古してくれたの、たくさん投げられちゃった》
《あらあら…可愛い顔がもったいないわね》
《でもこれでまたひとつ強くなったって、おじちゃんに言われたの!》
《そう…ふふ、さすが有沙と和也の娘ね》
奏でとの大切な思い出です。あの時はまだ私が5歳くらいの時でしょうか…加藤さんに体術を習っていてよく投げ飛ばされていました。何度も何度も泣いて、諦めそうになりましたが加藤さんがいつも『これでまたひとつ強くなったな!』って言ってくれたので頑張ることが出来ました。
《これからもたくさん辛いことがあると思うわ…それでも絶対に諦めてはダメよ?》
《諦めちゃ駄目?》
《そう…いつか絶対に、強くなって活躍する茉里奈を見せてね》
《うんっ、絶対に強くなるよ!》
強くなった姿をもう見せられることは出来ません…ですが、これからも諦めず頑張って行きたいです。
「マリ、マリ、起きて」
「…んっ…」
「終わったから帰るよ」
「…寝ちゃった」
「最近大変そうだったから、疲れていたんだよ」
周りを見ると皆さん帰りの支度をしています、丁度私の荷物は持ってきているのでこのまま帰れますね。
「ぐっすりだったわね、茉里奈ちゃん」
「…恥ずかしいです」
「いい寝顔だったぜ?」
真田先輩…言わないでください。
「おはよう眠り姫」
「須坂先輩、眠り姫って言わないでください。そもそも先輩が連れてきたから暇で寝たのですからね」
「おう」
おうって…!
「まぁまぁ」
「あ、蓮くんお疲れ様です」
「おつかれ」
帰りましょう!ということで帰り道を割愛してお家です。
「お帰りなさい二人とも」
「ただいま」
「ただいまでふぅ」
「あら茉里奈、おつかれ?」
「疲れたぁ」
色々ありましたからね、疲れましたよ。
「最近は忙しかったものね、今日は早く寝なさいね」
「はーい」
もぐもぐ、やはりお母さんの作るご飯は美味しいです!