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私の日常・非日常  作者: 森崎優嘉
1年生
3/36

最大の見ものですね

あれから約3週間が経ちました。土曜日の今日、お兄ちゃんは生徒会で学校ですし両親とも今日も仕事でいない…つまり現在私一人なのです。私はあの日から三日後に沙耶からの連絡を思い出していました。




「早いですね」

『兄君が苦戦をしたと聞いてそれ相応の覚悟をしておりませたが、簡単に情報を入手することが出来ました』

「そうなのですか、さすがですね…それで?」

『現在、3年生の中で一番会長の器があるのがB組の櫻井海(さくらいかい)。櫻井財閥の長男です…そしてやはり、理事の大沢明信(おおさわあきのぶ)氏と家同士の繋がりがありました。大沢氏の祖父と櫻井海の曽祖父が兄弟だったと』


なんとなく予想はしていましたがね。


「何故、櫻井海は会長をやらなかったのです?」

『彼の性格が問題です』

「性格?」

『はい…櫻井海は表面はとても優秀だと言われています、ですが裏では常に権力をふるい弱いものを虐めているようです。櫻井海の両親はそのことを知らないようでして、大沢氏は彼の裏に気付き生徒会の役をやらせないようにしていました』

「櫻井海だけ?他の人はどうしたのです?」

『それが…他の人達も』

「なるほど…性格の腐った人間の近くには同じ人間が、よく理事は気付きましたね」

『彼も理事という立場、生徒のことを第一に考えているのでしょう。実際、この事は校長である武藤治(むとうおさむ)氏と生徒会顧問の古井美咲(ふるいみさき)しか教えていません』


そういえば生徒会顧問なんて人もいましたね、私はまだ見たことがありませんけど。生徒会顧問は知っている…会長達は顧問ですらもこのことを秘密にしているのでしょうかね、だからあの時生徒会室にいなかった。


『これで以上です』

「ありがとうございます、沙耶…とても良い情報でした」

『マリ様のご命令ですから』

「ご謙遜を、また何か会ったらお願いします」

『では、私はこれで』

「はい」




あの時ですべての事が分かりました。

飲み物を取りにリビングへ行くとお兄ちゃんもお茶を飲んでいました。


「お帰りなさい」

「ただいま、マリ」


冷蔵庫に冷やしているお茶を普通に飲んでいても優雅に見えますね。


「お茶いる?」

「うん」


お兄ちゃんからお茶の入ったコップを手に取りソファーに座る。ちなみにお兄ちゃんは向かいのソファーに座っています。


「マリ」

「はい?」

「今日まで、3人が頑張って情報を集めてくれた」

「3週間ぐらい経ったね」


あっという間です。


「でもまだほんの少しだ…でも、とても良い結果が得られたよ。そこで明日、集まってもらうことになった…マリもね」

「拒否権は、無さそうですね」

「もちろん」


いい笑顔ですねぇ、本当に…。


「明日は部活が行われていないから安心して行こうね」


一緒に行く、ということですね…逃げ道は無さそうです。


「…分かった」

「(ニコニコ)」


お兄ちゃんの笑顔が深くなりました…噂によるとお兄ちゃんは腹黒なのだそうです、妹として否定は出来ません…今真に実感しているところなのですから。




   *   *   *




日曜日になってしまいました、学校に着き生徒会室に向かう私の隣にはお兄ちゃん…生徒会室に着きましたね、お兄ちゃんが扉を開けると全員が集まっていました…片山君や須坂先輩もいますね。


「僕達が最後のようだね」

「お前にしては遅いと思ったが、今日は妹もいるんだったな」


私のせいみたいに言いますね会長。


「それほど嫌みたいだからね」

「せっかくの休日なのにごめんね茉里奈ちゃん」


あわわ!鈴香先輩に撫でられていますっ!


「はわ、大丈夫ですよ鈴香先輩」

「そう、良かったわ」


女神様ですね。


「ここは狭いから隣の会議室を使う」


会議室に入り、それぞれ席に着く。長机が円形に並んでいるので私は会長より一番遠くの椅子に座りました、皆は近い席に座っていますけどね。


「とりあえず、現時点で分かったことを報告してくれ彰」

「分かった事と言っても、この件で重要な人物が理事と3年B組の櫻井海だということだけです」


櫻井海を特定しただけでも良い方なのです。


「4人にも話を聞いてみたらどうかな」

「そうだな、まだ報告しきれていない部分もあるだろう」


…お兄ちゃん、余計なことを。


「じゃあ、俺から」


大山先輩からですか。


「俺は剣道部だから部活の先輩から聞いたんだ、でも先輩も3年の中で流れている噂程度で理事と櫻井海に繋がりがあるとしか分からなかった」

「私も、中学の先輩達にも聞いたけど…でも、何となく…言ってはいけない雰囲気があった。その人もB組だけど、何か怯えているようだったの」

「僕も種内先輩と同じでした。B組の人達は何かに怯えていました」


なるほど、当然の反応です、あんな多重人格みたいなのですから。


「怯えている、か…有村妹はどうだ」

「分かったことはありません」

「…本当にか?」


疑っていますね会長、本来ならば先輩たちや近藤君のように行動するのでしょうけど…私はなにも動いていませんからね、分かりませんよ。


「そもそも、私はまだ何も動いていません」

「…だそうだが和葉」

「マリ、あれから約3週間も経過している」

「3週間しか、です」


わー…お兄ちゃんの笑顔がブリザードです。


「茉里奈、何を隠しているのかな?」

「何も隠していないよ?」


お兄ちゃんの背後に黒いものが、他の人も顔色が悪くなってきました。


「お兄ちゃん、後ろの黒いモノを消してください」

「マリが教えてくれたらね」


…無理そうです。


「有村妹、これ異常続くと全員アウトするぞ」

「…そのようですね、はぁ…分かった、分かりましたよ、話せばいいのですね」

「ありがとうマリ」


お兄ちゃんの黒いものが消えた瞬間皆の力が抜けました。


「和葉の近年稀に見るこの怒気…こえぇ」

「零は慣れているからいいだろうけど…蓮達、大丈夫か?」

「大丈夫です」

「うちの兄がすいません皆さん」


まあすべての原因は私ですけどね。


「で、どうなんだ」


むぅ、仕方ないですね。


「大山先輩と種内先輩、近藤君の集めた情報はすべて当たっています。確かに理事と櫻井海との間には繋がっています」


皆を見ると何も言わず、全てを聞くようですね。


「櫻井海は櫻井財閥の長男で、彼の曽祖父と理事の祖父が兄弟という親戚関係です」


私は沙耶から得た情報をすべて教えました、と言っても校長と生徒会顧問が知っていることは教えていません。彼の裏の顔を聞いた時はとても驚き納得したような表情でした…当然ですね。話を聞くからにその先輩方はとても怯えていたようですから。


「力を持つ人間が弱い人間を裏で…か」

「まるで多重人格のようね」

「親に気づかれないとか、ヤバすぎる」

「B組の人達は…辛いだろうね」


何とかしてあげたいけど…って皆さん言ってますねぇ。


「櫻井海が転校すればいいのだろうけど、私達は何も出来ないわね」

「転校先でも同じだろうな」


そうですねぇ、無力な私達ではどうにもなりませんねぇ。


「…マリ」

「何?お兄ちゃん」

「…茉里奈」


真剣ですねお兄ちゃん。


「ふふ、大丈夫ですよ」

「何がだ?」


私はカバンの中から小型モニターを取り出し電源を入れる。するとどこかの路地裏が映りだすと同時に数人の姿が…これ、中継です、私はこっそりマイク付きイヤホンを着けておきます。


「なんだ?」

「あれは、寿人(ひさと)先輩と雄二(ゆうじ)先輩だ!」


ああ、あの人達が剣道部の…ふふ、まあ見ていてください。


『ねぇ君たち、最近部活で結果を残しているようだな』

『『……』』

『無視?』

『そう、ですね』


2人は正面に立つ櫻井海に怯えていますね。櫻井海の後ろには2人…同じく馬鹿なお坊ちゃんのようです。


『ふーん…』

『ぐあぁ!』

『寿人!』


いきなり殴るとは…


『僕はさぁ、自分より上を行こうとする奴が大っ嫌いなんだ』

『うがっ!』

『本当に嫌いでさぁ』


3人に蹴られている光景。


「あいつっ!」

「落ち着け大山!」

「離せっ!アイツを!」

「お前が行っても逆効果だ!」


無駄でしょうね。


「大山先輩落ち着いてください《マリ様、準備が整いました》」


イヤホンからは沙耶の声…ふふ、おもしろくなりそうです。


『ははは!滑稽な姿だね…これで最後にしてあげるよ』


そう言って櫻井海が手にしたのは鉄パイプ…そろっと潮時ですかね。


「そこまでしなくてもっ!」

「先輩…」


男子はともかく、種内先輩と鈴香先輩には辛いですね…でも大丈夫ですよ。


『じゃあ、ね!!』

「行け」


私はボソッと命令をしました。モニターには鉄パイプを飛ばされた姿が…ふふふ。


『何!?ぐあっ』

『そこまでだ』


いつの間にか現れた男たちに拘束される櫻井達。


『離せっ!』

『…海』

『ち、父上!?』


叫ぶ櫻井海に近づくのは彼の父、櫻井周平(さくらいしゅうへい)…櫻井財閥の会長です。彼の少し後ろには沙耶が…本当に有能ですね。


『すべて、見ていたよ』

『ど、どうして』

『後ろのお嬢さんから海の事を聞いてね、明信に確認を取った…まさか本当にこんなことをしているとは思わなかったよ』

『ち、父…上』

『海、お前を佐山家に出す…お前も知っているだろう』

『そ、そんなっ』


佐山家とはですね、現当主の方がとってもとっても厳しい方なのですよ。よく馬鹿なお坊ちゃんやお嬢様を見切った親が更生させる為に送りつけるのです。私は少々ご縁がありまして…とっても愉快な方でした!


「あの佐山家にか…」

「当然の仕打ちね」


同じ御令息とご令嬢である会長と鈴香先輩は納得していました…他の人は分からないようですね。


谷崎歩(たにざきあゆむ)宮崎大河(みやざきたいが)だったか、君たちも佐山家へ行ってもらう。ご両親もこのことには賛成している』

『なっ!?』

『そんなっ』


哀れですねぇ。


『沙耶殿、お願いする』

『畏まりました…連れて行け』

『『『は!!』』』


沙耶はとても良い部下を持ちましたね~成長しました。さて、私もお仕事ですね!撮影しているカメラの音声を付けてっと、これでよし!


「櫻井会頭、ご足労おかけしました」

『こちらこそ礼を言う、さすがあの佐山殿が目にかけている子だ…本当にありがとう』

「いえ、今回の件はただの偶然です」


本当に偶然ですからね。


『そうか…これで息子も更生してくれればいいのだがね…っと、時間か…この後も仕事があるから、私はこれで失礼するよ』

「はい、お気をつけて」


櫻井会長はとても良い笑顔で車に乗り仕事へ向かいました。


「沙耶、片付けは任せました」

『お任せください』


これを最後に音声とモニターの電源を消す。皆の反応は…ポカンとしていますね、面白いです。


「この件はこれで以上です、お疲れ様でした」

「…は?」

「ちなみに、櫻井海のことは理事の他に校長と生徒会顧問が知っています。これで私が調べた全てになります…あ、これ報告書です。私はこれから用事があ…っと丁度いい電話ですね…もしもし祐さん、先ほど例の3人を捕まえたのでそちらに向かわせています、私?もちろん行きますとも!こんな楽しいことなんて他では出来ませんからね、自分の行いを一生後悔させるつもりです…ぬるい?仕方ないですね~、死より恐ろしい目に合わせないとですね!はい、了解です!ではまた後で」


ふふふ!楽しみです!!


「では皆さんお先に失礼します」


急がないとです!!




   *   *   *




私がいなくなった生徒会室で


「…ククッ、さすが茉里奈」

「……和葉の妹だな」

「末恐ろしい…」


こんな会話があったとかないとか。







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