いつの間にか文化祭の季節です
「今年の文化祭は何する?」
「そうだねー…」
高校生活最後のイベント、文化祭の時期です。今日はクラスの出し物を決める日…皆さん悩んでいますね、毎年文化祭は…
「劇やりたい!」
舞ちゃんの言葉から始まってそれに決定するのですよね。あ、ほら…皆さんも劇がいいと言ってますしね、これはもう決定でしょうね。
「じゃあ劇で決定だな…と言っても、何するんだ?」
「はいはーい!私脚本書きたいです!というかもう書いてあります!」
そう言って手を挙げたのは文芸部の堀井和美ちゃんです。
「最後の部活の時に書いたんだ~、はいこれ!」
「どれどれ…おー!ちゃんと台本になってるな」
「どういうお話なの?」
一人の少女がいて、少女はずっと森で暮らしていました。今は亡き母が「森からは絶対に出てはなりません」と言われていたのに少女は森の外へと行ってしまう。すると突然、悪の魔導師が少女に襲いかかる…死を覚悟した瞬間少女は偶然通りかかった青年に助けられる。青年は旅をしている途中で、少女も共に旅をする…その後旅を続ける中、悪の魔導師は少女に何度も襲いかかってくる。そして悪の魔導師の目的が魔王の復活で、それには彼女が持つ母の形見であるペンダントが必要だということが分かった。
そして少女は青年と、旅の途中で出会った仲間たちと共に悪の魔導師を倒す。そして青年はなんと隣国の王子で、少女と王子は幸せに暮らしたというお話です。
「いいんじゃね?」
「それにしようよ!」
「じゃあ監督は和美ね!」
「了解!」
「じゃあ早速役を決めよう」
主人公の少女、王子、悪の魔導師がいて…仲間達が魔法使い、剣士、僧侶、弓使いですね。あとは村人とか様々です…ん?何やら女子達がゴソゴソと話していますね、何でしょうか。
「杏奈~」
「ん?」
「主人公の少女は雪音で王子は悟でいいと思うの!」
「え?…あー、なるほどね」
「「え?」」
雪音と悟君、私以外は何か察したようですね…え、蓮君も察したのですか?雪音と悟君…雪音と…悟君…ああ、なるほどねぇ。
「いいんじゃない?」
「え、茉里奈まで!?」
「俺王子とか無理だって!」
「大丈夫大丈夫!」
ごり押しで決まりました。
「悪役はどうする?」
「悪の魔導師でしょう?うーん…」
あ、和美ちゃんと目が合いました…これは嫌な予感。
「悪の魔導師は茉里奈ちゃんで!」
『意義なし!』
全員で言われました、教室の端で英二が大爆笑しています…あの野郎。
「じゃあ次、魔法使い!イケメンの!」
「なんでイケメンなんだよ」
「私の趣味~!でね、実はもう誰がどの役にするか決めてるの!」
は、速いですね。
「魔法使いは蓮君、剣士は匠君、僧侶は響子ちゃん、弓使いは舞ちゃんね!」
『異議なし!』
またもや即答の異議なし…。
「約半年このクラス見てきたが本当に仲いいよな」
「そうね、このクラスで良かったと思っているわ」
他の役決めで騒ぐみんなを見ながら英二と小声で話しています。こうして全員を見ていると今まで頑張ってきて良かったと思いますね、雪音がクラスの中心で楽しく話すことが出来たのも…ふふ。
「佐山先生、台本の印刷頼めますか?」
「おう、人数分だな?」
「はい」
「分かった…有村、手伝ってくれ」
「分かりました」
英二と印刷室に行く…中に入るとインクの臭いがしますね。
「”少女の冒険”か」
「まさか、悪役に選ばれるとは思わなかった」
「いいじゃねえか、演技は得意だろ?」
任務用の演技とはまた別物ですよ。
「ふぅ…」
「まぁ頑張れ…よし、これで全部だ。勝手に本になってくれるなんて楽だな」
「ああそれ、先日科学チームが作った機械よ」
「マジか…さすがだな」
本当にね、武器班科学チームは何でも作ってしまいますから…恐ろしい技量です。さて、この台本を教室に持って行って。
「台本持ってきだぞー」
「ありがとうございます先生!皆とりあえず読んでみて、明日セリフ合わせしよう」
『『はーい』』
放課後、生徒会室に行くと希ちゃんと佳奈ちゃんが目を輝かせていた。
「茉里奈先輩!聞きましたよ!」
「演劇で悪役をやるんですね!!」
「え、えぇ…そうだけど」
「茉里奈先輩が悪役ですか~!きっと素敵ですね!」
「先輩、私達絶対に見に行きますからね!」
そ、そうですか…。
「茉里奈が悪役とか」
「茉里奈ちゃんが悪役なんて想像できないよ!」
「(むしろ悪役が似合うよな)」
「斗和?(ニッコリ)」
「ナンデモナイヨ」
家に帰り台本を読む…悪役はかなりのセリフ量ですよね。動きも書いてあります、うわぁ…こんなことも言うのですか。
次の日、読み合わせの時間になりました。
「じゃあナレーションからスタートね!」
「緑の生い茂る森の中、1人の少女がいました。彼女は母と2人で暮らしていましたが母は病で死んでしまいました…そして少女はある日森の外へと行くのです」
次は雪音ですね。
「どうしよう…森の外へ来てしまったわ、お母さんから絶対に森の外へ行っては駄目だと言われていたのに。でも、こうなったら仕方ないわ!ずっと森のなかで過ごすなんて嫌だもの!」
もうすぐで私の番ですね。
「ここはどこだろう?…かなり歩いたけど」
「…みぃつけた」
「あ、貴方は誰?」
「私は魔導師マリナ」
「魔導師?」
「そう…そして貴方を殺す者!」
ここで私が魔法を繰り広げるようです。
「これで終わりだ!」
「危ないッ!」
ここで登場悟君。
「クッ!邪魔者が入った…また今度会おう」
「…大丈夫か?」
「え、えぇ…あの、助けてくれてありがとう」
それから数分、読み合わせをして和美ちゃんからのセリフ直しなどをしました。私達の後ろでは衣装や舞台セットを製作しています…仕事速いですよね。
次は演技練習です。和美ちゃん、演劇経験無しとは思えないほどの指導力です…すごい迫力です。土日も練習をしているのですが雪音は機関のバイトがありますからね、またお母さんと鬼ごっこの衣装で盛り上がっているのでしょう。
風紀委員の仕事もあるのでとても忙しいです。
「茉里奈ちゃん、ここのセリフはもう少し迫力をつけて。蓮君もう少しそこの動きを大胆に!」
忙しい日が続きいつの間にか文化祭前日になっていました。現在私は風紀委員会で警備の話をしています。
「体育祭の時と同じ班で警備をやってもらいます。場所はその紙を見てください…文化祭はかなりの人が来るのでよく見るように、迷子の子供がいたら本部の方まで連れてきてください。何か質問はありますか?…では解散してください」
今年の鬼ごっこで、鬼は私と佳奈ちゃんの他に渉君がやってもらいます…今年はどんな衣装になるのですかね、基本分かるのは当日なので。ギリギリまでデザインを粘るそうですよ。
「委員会おつかれ~。はいお茶、佳奈ちゃんと渉君もね」
「ありがとうございます友美先輩」
「いただきます」
友美ちゃんの入れたお茶で一服です。
「もう文化祭か~…3年にとって最後の行事だね」
「そうですね~…安浦先輩達が3日目に来るそうですよ」
「え、そうなの!?」
「鬼ごっこ見る気満々だな」
お兄ちゃんが言ってましたよ。クラスの演劇も見るそうです…見ないで欲しいですけど鈴香先輩が楽しみにしているので頑張るしか無いです。
* * *
文化祭当日となりました、一日目は午後からの公演なので宣伝のために衣装を着て歩きます。
「茉里奈の衣装可愛い!…うふふ、鬼ごっこの衣装も楽しみにしててね」
「う、うん…」
悪の魔導師ということで黒のワンピースに黒に近い紫色のフード付きローブを着ています…恥ずかしいです。雪音は赤ずきんが着るような衣装です…そんな私達は現在宣伝がてら色々なクラスに行っています、ちなみにこれから行くのは斗和のクラスです。確か問題を解いて正解した数だけ何かあると…何があるんでしょうね。
「あ、茉里奈ちゃん!雪音ちゃんもいらっしゃい!」
「こんにちわ友美ちゃん」
「それ劇の衣装?可愛い~」
「ありがとう!」
「はい、これが問題用紙ね!全部で30問、正解数で商品が決まるのだけど25問以上正解で女子限定に特別プレゼントがあるから頑張ってね!」
「へぇ?」
豪華プレゼント?まあいいや、早速やりましょう…第一問、この前駅前に出来たお店の名前は?ふむふむ。第二問、校長のフルネーム…第三問、二年前の文化祭MVP者…第三問、理事長のフルネーム…これ作ったの斗和でしょう!普通の人なら絶対に解けない問題あるけど!?この中で誰が安浦零先輩のファンクラブ会長か…他にも似たような問題が、まったく…最後の問題ですね。えーっと、貴方が思う一番怖いものは?…。
「2人とも出来たみたいね、丸付けるから待ってて~」
「最初の方は分かったけど後は全然駄目だったよ」
「作った奴が誰なのかすぐ分かったわ」
「私も!」
待つこと数分。
「お待たせ、雪音ちゃんは10問正解ね…ここの中から好きなの選んでね~。そして茉里奈ちゃん、なんと全問正解!」
「ええ!?すごい!」
「あ、ありがとう」
むしろあんな問題誰も正解出来ないのでは…お兄ちゃんとか英二以外。
「茉里奈ちゃんには特別プレゼント!あそこのカーテンを開けて入ってね~」
友美ちゃんの言われるがままに入ると斗和がいました。
「これは何?」
「25問以上正解者で女子は俺に好きな言葉を一つだけ言わせられるという事さ」
「なるほどね」
「何言って欲しい?」
「特に無いわ」
即答します、本当にありませんからね。
「冷たいなぁ婚約者様は…てい!」
「うわっ、いきなり抱きつかないでよ!」
「茉里奈分を充電」
「はぁ?貴方、最近変態度が上がってるわよ?」
「そうだ、演劇見に行くからな?」
「そう」
さて、雪音の元に戻りましょうかね。
「茉里奈」
「ん?」
「その衣装似合ってるぞ」
「んなっ!」
額にき、き、キス…。
「ククッ…顔真っ赤」
「う、うるさい」
雪音の所へ向かうとニヤニヤした顔で見てきました。
「おや~?茉里奈、どうしたのぉ?」
「物理的攻撃される前に精神的攻撃をしてやった」
「さすが斗和君」
斗和達のクラスを出て玄関の方に行ってみました、すると何やら人が集まっていますね。
「すごい人だね、何かやってるのかな?」
「あそこは何もやっていないはずだけど…」
「マリ」
声がした方を見ると人の集まりからお兄ちゃんが。
「お兄ちゃん、あの集まりはなに?」
「零たちだよ」
「在校生、一般関係なく群がってきた。どうにかしろ風紀委員長」
「す、須坂先輩いつのまに…」
気配を消して私の後ろにいないでください。
「…安浦先輩だけですか?」
「鈴香さんもいるよ」
「よし、行きましょう」
鈴香先輩がいるなら動かねばなりません。
「すいません、ちょっとすいません…」
誰も聞いていませんし聞こえてい無さそうですし、どうやら広告などで揉めているようですね。飛び込みたいのですがこの衣装ですからね…すぐ破けてしまいます。
「無理ですね」
「うーん…どうしようか」
面倒ですねぇ…あ、小さな女の子が押されて転けてしまいました。気付いていませんね…まったく。深呼吸をして…よし。
「鎮まりなさい」
うん、静まってくれましたね。
「何をしているのですか、そこに集まっていては一般のお客様に迷惑です。こんな所にいる暇があったら他の場所で静かに宣伝しなさい、私はこれ以上大事にさせたくないので早く去りなさい」
「い、委員長…」
「これはっ!」
「黙って早く行きなさい(ニコッ)」
「「は、はい…」」
「一般のお客様、お騒がせしてしまい申し訳ありません。どうか先程の事は気にせず、わが校の文化祭をお楽しみください」
終わりました。
「ありがとう茉里奈ちゃん、助かったわ」
「いえいえ」
鈴香先輩のためならば頑張って動きますよ~。
「茉里奈、そろっと集合時間だよ」
「あ、そうね」
「劇、楽しみしているわね」
「はい!」
集合場所に集まり、セリフと動きを確認…よし。
「緊張してきたぁ」
「お、俺も」
「2人なら出来るわ」
こうして劇が始まります。




