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私の日常・非日常  作者: 森崎優嘉
2年生
22/36

今回こそは楽しい夏休み

季節は夏、学校も夏休みに入りました…そして現在、私は機関が所有するプライベートビーチに二泊三日の旅行に来ています。参加者は私達有村一家+斗和、安部姉弟、片桐一家、片山一家、そしてなんと校長とその奥さんも来ています。


「島、だね」

「島、だな」


プライベートビーチというか…島です、海もあれば山もあります。ちなみに、私がここに来たのは今回で3度目です。


「久しぶりに来たね」

「変わんねーな」

「来たことあるの?父さん」

「うん、学生の時にね」


家に入ると一人の女性が。


「お待ちしておりましたよ」

「結子さん、よろしくお願いします」

「まあまあ!あんなにヤンチャだった子達が、美人な奥さんとよく似た子を持つなんて…時間が経つのはあっという間ねぇ~。通りで私も年を取るはずだわぁ」


結子さんはこの家を管理してくれている人です。


「お久しぶりです結子さん」

「3日間よろしくお願いします」

「奥方様達も、なにかあれば申してくださいね」


次に結子さんは雪音達を見た。


「まあ!ふふ、両親のいいところを全て受け継いでいるのね!…貴方達が雪音ちゃんと満君ね?香澄ちゃんと恭也君そっくりね…この島はご両親も楽しい思い出を作った場所、この3日間、楽しんでくださいね」

「はい、ありがとうございます!」


お母様も来ていたのですか…そういえば恭也さんと香澄さんは中学から一緒だったと、お父さんたちがここに来たのも高校の時らしいので…一緒に来ていたのですね。


「和葉君も斗和君も大きくなったわねぇ…英二君も元気?」

「お久しぶりです結子さん」

「英二も元気ですよ」

「そう…茉里奈ちゃん、良かったわね」


一度目に来た時は奏でが生きていた頃、二回目は亡くなってからすぐの時でしたね。


「うん、ありがとう…結子さん」

「うんうん…さ!部屋をご案内しますね~」


各部屋に荷物を置いた次は山散策です!ここにはたくさんの昆虫や動物がいるし、頂上には展望台もあります。


「お、クワガタだ!悟、満!こっちだ!」

「どこどこ!?ホントだ!」

「カブトもいる!」


ふふ、悟君と満君は兄弟みたいですね…武文さんもいるので家族のようです。


「まったく、あの2人はいつも元気なんだから…満君も大変よ」

「でもおばさん、満とっても楽しそうですよ」

「元気なのはいいことよ!蓮もあんな感じで行かないと、青春出来ないよ?」

「えー…だそうですよ和葉さ、ん」

「ん?」


お兄ちゃんに同意を求めようとしても無駄ですよ。お兄ちゃんの手にはカマキリ…あ、あそこには!


「ニホントカゲだ!」

「カナヘビもいたぞ」


可愛いですね!


「ふふ、この山に来るといつの間にか捕まえているのよね」

「英二がいるとテンとか狸とかも追いかけてるしな」

「学校で見ていると、性格が父親にだとすぐ分かるよ。三春も虫好きだよね」

「ええ、昔はよく近所の公園でバッタ探しをしていたものだわ」


校長の奥さん、武藤三春さんは本当に虫好きのようです。あっちこっちで何かしら捕まえていますからね…面白い人です。


「姉さん見て、クワガタ!」

「おお!結構大きいね」


散策しながら山を登って行くこと数分、展望台に到着しました。


「わぁ!きれーい!!」


ここからは先程の家も少し小さく見えます。その他にも、ここは機関の演習場にもなったりするのでキャンプ場も見えますね。


「確かここだったよな?」

「確か…あ、あった!」

「うわ、本当に残っているもんだね」

「俺もこれの存在は忘れてたよ」


ん?お父さんたちは何をしているのでしょう。


「何やってるの?」

「これこれ」


展望台の柱に名前が書かれていますね。えっと…和也、治、恭也、香澄、康介、武文と書かれています。


「お父さんとお母さんの名前だ」

「あぁ、恭也と香澄も俺達が昔来た時に名前を書いたんだよ」

「そうだったんですか…」


彼らが学生時代、この景色を6人で見たのでしょうね…未来の自分を予想しながら。


「姉さん…」

「えへへ…なんかね、お父さんとお母さんがここに生きてるって思うと…涙が出ちゃって」


そう言って涙を零しながら笑う雪音に私は再び景色を見ました…未来の自分、そこには素敵な家庭を気付いて…平和に暮らしたかったに違いありません。……そういえば、ここに確かアレがあるはずです。私は静かにその場を離れ、アレを探します…奏との、思い出を。


「確か…ここだったはず」


展望台より離れた場所では無かったはず…あ、この細い道…この先です、この先にあの場所が。この場所には鳥と風の音しかしない静かなところです、細い道を歩いて行くと少し開けた所に出ました。確かあの木です…あった!


「…これだ」


この木は私が投げナイフを行なった木です、だから刺しあとがたくさんある…そしてその下には。


「まりな、なら、でき、る」


ナイフで刻み込まれたこの字を見ながら、この島にいる間ずっと練習してきました。


《いい?茉里奈、大切な人はちゃんと守らないとよ?》

《うん!絶対に守る!》


「奏、私は守れているのかな…雪音は隠しているつもりでも、私には寂しがっているのがすぐ分かる。どうして…関係ない人まで巻き込むのかな…どうして、土宮は家族がいたのに…家族の愛を知っていたのに…他の家族を殺すのかな…土宮も私も同じ…」


家族を殺したのは、同じなのです。沙耶に頼んで、私は土宮の妻と子を監視していました…最愛の夫を亡くした妻と、大好きな父を亡くした子は泣いていました…雪音の様に。


「どっちが悪なのかな」


刻み込まれた木を背もたれに力なく座り、私はなにも考えず空を見上げました。雲ひとつ無い晴天に、鳥の声、風が優しく木を揺らしています。目を瞑り、風の音を聞いていたら鈴の音が…


「にゃあ」

「…ナギ?」

「にゃ!」


黒い毛のこの猫、ナギは屋敷で飼っています。夕食の時間や寝る時は屋敷に戻ってくるので基本日中は放し飼いで自由にこの山を散策している猫です。


「久しぶりね、元気?」

「にゃお!」


元気そうで何よりです。


「やっぱここにいたか」


ナギを撫でていると斗和が来ました。


「にゃ!」

「ナギじゃんか、久しぶりだな!」

「にゃ~!」

「…この木も懐かしいな。あの文字はあるか?」

「うん、ここに」


私は座ったまま少し横に動く。


「茉里奈なら出来る、か。今はもう得意になっているからな、奏の言葉は本当だった訳だ」

「…うん」

「…雪音の泣いているところを見て、また思い出したか?自分は本当に守れているか…向こうだって家族を失ったのは同じ」

「斗和…知ってたの?」

「ああ…沙耶が俺に言ってきたんだ。”マリ様を支えることが出来るのは貴方様だけです”ってな」


瞬間、私は抱きしめられた。


「お前は何もかも抱え込みすぎるんだよ…奏が言ってただろ?辛い事、悲しい事は思いっきりぶちまけて、思いっきり泣けってさ」


やめてよ斗和…今の私には…


「…守るって、約束したの…大切な人を、守るって…ようやくアジトが分かって…復讐する前に…関係のない人が死んで…雪音と満君の両親が、お父さん達の友人がっ…ッ…それだけならまだ良かった!でもッ…土宮の家族を…泣いている家族を見て…どうしてって!土宮桐は雪音の家族を殺して!私は土宮の家族を殺したの!!」


自業自得だと思った。


「でも…考えるほど…どっちが悪いのか、分からなくなって…全部飲み込んだの…これは任務、いつものことだと…」


何度もこの手を赤く染めてきた…家族がいるかどうかなど知らない人間をたくさん殺してきた。


「ずっと、ずっとずっと後悔してるの!…もう…どうにもならない…恭也さんも香澄さんも返ってこない…土宮桐も…奏も…」


こんなに泣くのは久しぶりです…何時ぶりでしょう。


「私があの時奏の指示に従っていればって!…後悔しか無くてッ…ずっと側にいて欲しかったのに!強くなった姿を見せたかったのにッ!」


いつの間にか木に背もたれにして座る斗和の腕の中で私は思いっきり泣きました。泣くのに夢中で、隠れて聞いていた人達など気付きませんでした。


「落ち着いたか?」

「…うん」

「あの時も、泣いていた茉里奈の近くにいたっけな」

「そう、だね」


二度目に来た時も、私はここで泣いていました。そしていつの間にか着ていた斗和がずっと隣にいてくれたのです。

にしても…落ち着きますね…眠くなってきました。


「皆、もう少し山を散策するってさ。最後は展望台に戻ってくるから…その時まで寝てるといい、起こしてやるから。あっと、そうだ」


斗和はどこかへ行き、数分後に戻ってきました。


「ほら、水で濡らしたハンカチ。目に当てとけ」

「…ありがとう」


斗和の膝枕に私は冷たいハンカチを乗せて目を瞑ります。


「おやすみ」


斗和が着ていた半袖コートを掛けられた感覚がしたのを最後に、私の意識は遠のきました。

次に目を覚まし、時計を確認すると3時…展望台に来たのは2時だったのでそう時間は経っていませんね。斗和を見ると寝ています…私は静かに起き、斗和と同じく木に背もたれを置くと斗和が寄りかかってきました。その横にはナギも寝ています…可愛いですね。

確か皆展望台に集まると言っていましたよね、まだ大丈夫でしょう…耳を澄ませるとこの近くに流れている川で皆の声が聞こえますから。


「みゅ」

「あら、ナギ起きたのね」

「ん…」

「斗和も起きたみたいね」

「んー…今何時」

「3時過ぎ…皆川にいるみたいだからそろそろ行く?」

「そうだな」

「にゃお!」


私が立ち上がるとナギが肩に乗ってきました…軽いので余裕ですが、大きくなりましたね。


「昔から茉里奈の方はナギの定位置だったもんな」

「にゃ!」

「ふふ、行きましょうか」


この山にある川はここから遠くありません、10分歩いた所にあります。あ、見えてきました…皆さん足を水に入れて涼んでいますね、私たちにまだ気付いていません。あ、そうだ!


「斗和、笹舟作ろう」

「お、いいな。それで驚かせてやろうぜ」


早速近くの笹の葉を取って船を作る…数分もすればかなりの量が出来ましたね。


「にゃあ!」

「よし、流せ!」


たくさんの笹船が流れてゆきました…どんな反応するでしょうか。


「わぁ!笹船だ!」

「すげぇ、たくさんある」

「すごーい!」

「あらまぁ…」


ふふ、驚いていますね。


「にゃああ!」

「えっ!ちょっ!」


しゃがんで船を流していたら唐突にナギが川へ大ジャンプ、私も反動でバランスを崩し水へドボンしそうになりましたが斗和が支えてくれたので無事でした。


「な、ナギ!?」

「にゃ~」


気持ちよさそうに泳いでいます…ナギは何故か水が大好きなんですよね。


「…相変わらず、謎の猫だよな」

「そう、ね」


どんぶらこ…ナギが流れていく。


「にゃー」

「今度は猫が流れてきた!」

「あら、ナギじゃないの」


お母さんに救われたようです…さて、私達も行きましょう。


「にゃお!」

「やっぱり、笹船は茉里奈と斗和だったのね」

「大量に作ったなぁ」

「笹の葉は山ほどあったからね」


たくさんあったのでたくさん作ったのですよ。


「にゃあ!」

「ナギ、いきなりすぎよ…危うく私まで水浸しになるところだったわ」

「にゃー」


ナギはお母さんが持っていたタオルで綺麗に拭かれていたのですぐ私の方へ飛び移りました。


「茉里奈、その猫は?」

「屋敷で飼っている猫でナギというの」

「黒猫だねぇ」

「にゃあ」

「ちょうど揃ったし、このまま戻るか」

「そうだね」


夕食の時間になり、結子さんや他のお手伝いさんが作ってくださった料理の数々に驚きました。


「乾杯の挨拶は…茉里奈、お前がやれ」

「え?」

「いえーい!」


な、なんと…わ、分かりました。


「えっと、では…久しぶりの方々は久しぶりに、初めての人はようこそ。ここにはたくさんの思い出が集まる場所です、二泊三日という短い期間ですがたくさん楽しい思い出を作れることを祈って…乾杯!」

『かんぱーい!』


どの料理もとても美味しいです!そして、大体食べ終わると今度はいつの間にかお父さんが持ってきていたビンゴゲームをやることになりました。


「ちなみに景品もあるから頑張ってくれよ?」

「マジで!?うっし、最初にビンゴしてやる!」

「父さんよりも先にビンゴしてやるぜ!」

「私は悟よりも先にビンゴしてやるんだから!!」


武文さんのはしゃぎっぷりに早苗さんがまた呆れています。


「13!」

「「「ぐぬぬぬぬぬぬ……」」」


数分経ってビンゴ者は無し、私もバラバラです。


「次…6!」


6ですか…あ、リーチになりました。


「ビンゴ」

「「「何!?」」」


最初にビンゴしたのは康介さんでした。


「おー、康介が最初にビンゴしたか」

「やったね、ところで景品は何なの?」

「最初にビンゴした奴にはこれ、足つぼマッサージシートだ!!」


全員が静かにな…


「康君!ナイスじゃない!!私それ欲しかったのよ~!」


…リませんでしたね。


「やったやったぁ~!」

「あー…うん、彩がいるなら良かったよ」


まさかお父さん、そんな感じの景品しか無いのですか…。


「続きやるぞ!…52!」

「あら、ビンゴ」

「私もだ」


次のビンゴは校長と美香さん、夫婦揃ってビンゴです。


「治には付箋、美香さんにはホワイトボードだ!」

「まぁ、嬉しいわ。冷蔵庫に掛けておけば色々楽ね」


悟君と雪音、武文さんはまたしてもぐぬぬぬぬぬ!って顔になっています。


「72!…あ、俺ビンゴ」

「私もビンゴ!」


お父さんと彩さんがビンゴしました。


「彩さんには写真立て」

「ありがとうございまーす!」


次です!


「36!」

「あ、ビンゴだ」

「私もビンゴね」


お母さんと早苗さんです。武文さんと悟君が裏切られたと言ってますが…運ですからね。


「有沙にはメモ帳、早苗さんは家計簿」

「家計簿、いいわね…これでお金遣いの荒い2人を成敗できる…」


成敗!?…さ、早苗さん…2人が恐怖で震えてます。さて、これ武文さん以外の大人は全員抜けました…私達のみです。


「3!」

「やったぁ!」

「僕もビンゴだ」


雪音と満君ですね。


「「何!?」」

「2人にはカメラとアルバムだ」

「カメラ…」

「いいんですか!?」

「あぁ、たくさんの思い出を撮ってくれ。アパートの管理人に頼めば印刷してくれるからな」

「「ありがとうございます!!」」


ふふふ、良かったですね~。


「次、15!」

「ビンゴ」

「僕もビンゴ」


蓮君とお兄ちゃんがビンゴです、先程から2人がビンゴしていますね。ですが、もう何個も数字が出ているのに無いという…。


「読書好きの蓮君と和葉には3000円分の図書カードだ」

「わぁ…ありがとうございます!」

「父さん…これビンゴの意味…なんでもない」


お兄ちゃん、分かっていますよ…。さて、残っているのは私、斗和、悟君、武文さんです。


「1!」

「よしゃあ!」

「くそ…父さんに負けた」


武文さんがビンゴしましたね、残念ですね悟君。


「お前には目覚まし時計だ、ちゃんと自分で起きろよ」

「んな!」

「これでもう朝は苦労しないわね…」


ああ…ここにいる人全員が察しました。


「23!」

「ビンゴぉぉぉ!!」


おお!ようやく悟君ビンゴです、残るは私と斗和のみ。


「悟君にはこれ!」

「こ、コレはっ!吉本大樹選手のサインだッ!!!どうしたんすかこれ!?」

「ちょいとツテがあってな。悟君が吉本選手のファンと聞いてサインを貰った」

「うおー!!ありがとうございます!!!」


世界的有名な陸上選手ですね。会うことも難しい人ですが…さすがお父さんです。


「んじゃ次…45!」


…あ。


「ビンゴ」

「…俺もビンゴ」


斗和と一緒にビンゴです。


「斗和はこれな」

「懐中時計?」


シンプルな、それでいてかっこいいデザインの懐中時計です。


「先日秋斗たちから届いたんだ」

「なるほど…てか、景品が決まってるならビンゴやる必要が無かったような」

「いんや!こういう時こそ盛り上がらないとだからな!!」


…へぇ。


「茉里奈にはこれだ」


そう言って渡れたのは…箱?開けてみると中には綺麗なネックレスが。


「奏がな、茉里奈が強くなったら渡すと。自分では無くしそうだから渡す日まで預かっていてくれと言われたんだ」

「ッ!」


奏が…私に?


「…今まで、ずっと後悔を飲み込んで頑張ってきた姿は誰もが知っている。だが、辛くても我慢をしてしまうのが茉里奈の悪い癖だな…辛い時は声に出せと、言えなかった」


…まさか、今日見ていたのですか?


「後悔をして、泣いて、今の茉里奈は本当にいい顔になった!その顔になった今、お前は強くなったんだ…だから、奏の思いを代表して、機関の長である私から…特殊部隊有村茉里奈にこれを送る」


視界が濡れるのが分かります。お父さん…長がネックレスを私の首に付けた瞬間涙が溢れました。


「ありがとう…ござい、ます!」


奏…奏ッ…私、また一つ強くなれたんだッ!


「おめでとうッ、茉里奈!」

「やったな茉里奈嬢!」

「良かったねマリ」

「茉里奈おめでとう」

「茉里奈さん、良かったですね!」


みんなの言葉が本当に嬉しいです…。


「何で雪音も泣いてんだよ」

「だって、だってぇ!」

「ビンゴも無事終わったところで飲み直すかぁ」

「いいねそれ」


それから夜遅くまで、宴会は続くのでした。














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