作戦と不意打ち
さて、次の日の放課後になりました。昨日と同じ通りに風紀委員室で仕事をして、彼女が帰るのと同時に私も出発をする…玄関で鉢合わせをして…
「あ、こんにちは」
「…こんにちは」
「森原さんもおかえりですか?」
「そうですけど」
「途中までご一緒しませんか?」
「……分かりました」
あら、拒否られると思っていましたが以外ですね…ですがラッキーです。彼女が歩いて帰っていることは知っていたのですが…ご令嬢ですよね?普通歩かないのではと思いますがそれも個性というものです。
「それで、先輩は私に何か言いたいのでしょう?」
「そうですね…ん?」
「先輩と森原さん、こんにちは」
佳奈ちゃんがまさかのご登場…危ないですね、ですがもう無理のようです…目の前には女性が。
「…真央」
「こんにちは希、お隣はお友達かしら?」
「ちが「ええ、そうですよ?」…」
彼女が笠松真央でしたか。
「そう、可哀想に」
あちらさんはどう出るかなぁ…と思っていた瞬間佳奈ちゃんの小さな悲鳴と、後ろから手が伸び何かの薬品を嗅がせられました。横を見ると森原さんは既に気絶、私は耐性が付いていますが気絶した振りをしておきましょう。
んー…どこかに車で連れて行かれていますね、到着したようです。もう少し丁寧に担いで欲しいのですが…仕方ありません、我慢しましょう。あ、今度は手首と足首を縛られましたね…硬い感触、これは床でしょうね。部屋は静かになりましたし、私達3人しかいないようです…私は目を開けどうにか首を動かし周りを見ると未だに気を失っている2人を見つけました。どうやらここは”雲雀”のアジトのようですね…幸い口元は縛られていないので楽ですね、監視カメラも無いようですが一応用心だけはしておきましょう。
「よいっしょっと…」
どうにか起き壁に背を着けることが出来ました。
「んっ…ここは…」
森原さんが目を覚ましましたね。
「目が覚めましたか」
「…っ!?…そうか、私は真央に…狙いは、森原家…」
あら、分かっていたのですか。
「…斉藤さん」
「私と斉藤さんは貴方に巻き込まれたということですね」
睨まれました。
「ねぇ森原さん、何故貴方は私を嫌うのですか?」
この際ですから聞いておきましょう、どの道奴らはまだ来ませんしね。
「…生徒会を邪魔する人間だと思ったから」
…はい?
「ダサいメガネ掛けて、古い三つ編みなんかして…あんた、よく本に出てる生徒会の人達を攻略させたいとでも思っているわけ?」
な、何かよく分からない誤解されてるぅぅぅぅぅぅぅ!?え、は?攻略?…いや、何となく分かります…えーっと、乙女ゲームのことですよね?えー…。
「黙ってるって事は図星ってこと?」
「あまりに強烈な誤解をされていると分かって何も言えなかっただけですよ。私が生徒会の人達を攻略?馬鹿なこと言わないでくださいよ、私は入学した時から生徒会なんて関わりたくなかったというのに…関わりたくなかったからメガネも三つ編みもしているのに…」
ああ…落ち込みます。
「どういう意味よ」
「…私、兄がいるんです。そりゃもう美形で…小学も中学も、私と仲が良いのは全て兄が目的で嫌になったのですよ。ですから高校はこのような姿で兄の妹だとバレないように過ごそうと思ったわけです」
細かく言うと長くなるので簡単に言いました。
「信用出来ないわ」
「別に信用なんてしなくていいですよ、私のことなんてともかく今の現状が大事です。このまま行くと、殺されますよ私達」
「なっ…」
そろそろ佳奈ちゃんも起きると思いますし…あ、ほら起きた。
「…ん?…あれっ!?」
「落ち着いてください斉藤さん」
「先輩に森原さん!」
手を後ろで縛られていますが余裕でマイクのスイッチをオンにします。それと同時に男達が入ってきて私達をまた担ぎ何処かへ連れて行きました…恐らくボスの部屋ですね、笠松真央がいますし…お隣にいる男がボスでしょうかね。
「真央っ!」
「あらやだ、そんなに睨まないでよ」
「何が目的!?」
「私の目的?そんなの…復讐よ」
「復讐、ですって?」
んー…暇ですねぇ、動きたくても後ろに人がいるのが邪魔です…ところで、斗和達はまだでしょうかね。
「…だから私は復讐するの、最初は希…アンタを殺す、でも…折角お友達がいるから」
いつの間にか語りが終わっていたし佳奈ちゃんに銃を突き付けるし、佳奈ちゃんは怯えて震えているし…。
「やめてっ!!彼女は何も関係ないじゃない!!」
「やっておしまい!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
引き金を引こうとした瞬間、背後から飛び降りてきた人達に素早く取り押さえられた。
「誰だッ!!!」
「離しなさいッ!!!!!!!」
「銃を捨てろ」
ようやく来たのですね、遅かったではありませんか…さて、腕の縄を解いて足も…これでよし。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
縄を解いた瞬間笠松真央が森原さんに向かってナイフを刺そうと走りだした…まったく。私はすぐさま彼女の手からナイフを奪い思いっきり蹴り飛ばす。
「うがぁっ!!」
すぐさま取り押さえられた…マイクのスイッチを消してっと。
「こちら斗和、全員確保し3人保護しました……了解」
佳奈ちゃんの方は隊員の人が縄をほどいているので私は森原さんの縄を切りましょうか…ボスがニヤリと笑いましたが無視です。
「大丈夫ですか?」
「…なんで、助けたの。私に苛ついたでしょう?」
「まぁそりゃあ…多少は、ですが面倒だったので基本放置していましたし怒ってなどいませんよ。立てますか?」
「ええ…」
まだ少しふらついていたので手を貸してあげると素直に従っていました。
「…茉里奈は無理をしなかったようだし2人は擦り傷程度か」
「何故、南崎先輩が…」
「詳しいことはまた後でな…行こう」
今度は手も借りず歩き出したけど、緊張しているようで佳奈ちゃんと自然に寄り添っています…ふふ。
「二人とも無事か!」
「さ、佐山先生?」
「佐山先生?」
外に出ると英二が待っていました。
「なんで先生がここに」
「あー…後でな、とりあえず車に乗ってくれ」
車で移動中。
「茉里奈、メガネヒビ入ってるぞ」
「え?…本当だ」
メガネを外して見てみると確かにヒビが…いつの間に、メガネの予備は確か…あぁ、最近壊れたのを思い出しました…なんてことを。ん?何故後輩2人が私を凝視するのでしょう…。
「…先輩」
「はい?」
「先輩の兄って…有村和葉先輩ですか?」
「え、ええ…そうですよ?」
「え!?」
あー…言ってしまった、やはり隠し通すことは無理ですね…笑うな斗和。
この場で殴りたい気持ちを抑え、無事に機関へ到着しました。到着して2人とは別れ先に長の部屋へ向かいます…彼女たちは医療室で軽く手当をしてから来るそうです。
「ご苦労様だったね。茉里奈、怪我はないかい?薬で眠らされたようだけど」
「薬の耐性はついているので気を失わずに済みました。今回は何も動いてないのでまったくの無傷ですよ」
「それは良かった」
あ、ちょうどいいとこで2人が来ました…あれ?どうやら何かあったようですね、仲が良くなっているではありませんか。
「二人とも、大きな怪我が無くて良かった。私はここの長をやっている有村和也だ、君たちの安全が損なわれたことは守護を役割とする機関の代表として深く謝罪する」
「い、いえ…こちらには森原家も大変お世話になりましたから…」
家宝の件ですね、彼女知っていましたか。
「ありがとう、そちらのお嬢さんも大丈夫かな?」
「は、はいっ…だ、大丈夫、です」
緊張していますね佳奈ちゃん。
「何か質問があるようだね?」
「…何故佐山先生と南崎先輩、副会長がいるのですか。それに…そちら側に立っている有村先輩もです」
「あ、有村ってことは…血縁なのですか?」
あー…そうですよね、説明は後って言ったし質問があるようだねってもう聞けってことですもんね…全ての解答は長達に任せます。
「ご明察通り、和葉と茉里奈は私の子だよ。和葉は次の長として、茉里奈や斗和、英二は特殊部隊として私直属に動いてもらっている…今回も任務のひとつだ。前回の任務であった森原家の家宝の件で、君が水晶を持っていることに茉里奈が気付き調べた上で今回の任務を実行した」
たとえ嫌われていても人の命は大事ですからね…と、私が言っては駄目なのですが。
「そう、だったのですか…先輩、申し訳ありませんでした」
「いえいえ、私は元より気にしていませんでしたし…ふふ、これからもよろしくお願いしますね」
「はい」
仲直り出来ました。
「先程君たちの家には連絡したから時期に迎えが来る」
「ありがとうございます」
「あ、ありがとうございます」
家への事情も話し済みですか…早いですねぇ、もう誰か来たようですし。
「佳奈!!」
「お、お母さん!」
佳奈ちゃんのお母様でしたか…ん?案内の人がいない?ってことは一人でここまで来た?
「攫われたって聞いて本当に心配したんだからね!」
「ごめんなさいぃぃぃ」
感動の親子再会って感じですね。
「あらあら、やっぱりこうなるのね有沙」
「言ったでしょう?真由美はいつになっても変わらないって」
「もう少し落ち着いてくれないかな…」
「…無理だろうな」
えーっと…お母さんと一緒に入ってきたのが確か森原の奥様でしたね、んで…森原のご当主は分かるのですがお隣の男性は誰でしょう。
「真由美、佳奈が苦しそうだぞ」
「お父さん!」
「佳奈、無事で良かったよ」
ああ、佳奈ちゃんのお父様でしたか!それにしても全員親しくお話していましたね。
「ここには和也も有沙もいるのは知っているけど本当に心配だったんだから!!!」
「はいはい、落ち着こうな」
佳奈ちゃんのご両親は面白い人ですね。
「寿人も真由美も久しぶりだね」
「佳奈が生まれた時ぶりかな?」
「そうだな」
「入学式の時は驚いたよ、和葉君も斗和君も茉里奈ちゃんも大きくなったね」
ん?会ったことがあるようですね…覚えていませんけど。
森宮家の夫妻と斉藤家の夫妻、そして有村夫妻は小学の頃からのご友人らしいです…世間は狭いですねぇ。
さてさて、もう時間も遅いので帰るということで扉に向かって歩いた瞬間、突然佳奈ちゃんが倒れました。
「佳奈!?」
「おい、どうしたっ!」
どういうことでしょう、森原さんも倒れるのが視界に入り私が一歩踏み出した瞬間視界がぶれました。これは…毒?あの時の嗅がされた薬品の中に遅効性の毒が仕込まれていたのね…クッ…
「佳奈ッ!!」
「希ッ!?希!!」
「医療班!緊急だ、直ちに…」
「落ち着いてください、なるべく揺さぶらないように…」
声が遠ざかってゆくのが分かる…とりあえず壁に…これは何の毒でしょうね…まぁおそらく、オリジナルでしょうけど…
「茉里奈!」
あぁ…見つかってしまいましたね、そう思った瞬間に全身の力が抜けました。
「しっかりしろ!」
「あの時…嗅がせられた…薬品に…遅効性の…毒が、はいっていた…みたいね…やられたわ」
奴らは毒を開発するから解毒剤は知らないし。
「おそらく、そんなにすぐ死ぬことは、ないだろうから…でも、あの2人は危険よ…。2人を先に…優先して」
「…分かってる」
それから私の意識は失い、次に目が覚めた時はあれからちょうど二週間経った日でした。部屋には斗和がいて本を読んでいる姿を見ていたら私に気付いて大慌て、急いで明里さんを呼ぶ姿は今思うと笑えます。
「茉里奈、気分はどうだ?」
「……少しだるいけど、大丈夫…あの2人は?」
「お前の言った通り、解毒を優先したお陰で回復してる。まだベットの上だがな…今日もお前のことを心配していたぞ」
そう…仲が深まって良かったですね。
「解毒剤、大変だってしょう?」
「まあな…捕らえた奴らから毒を聞き出して、諜報部と医療班と科学チームが連携して解毒作り。徹夜尽くしだったわぁ」
「そう…私も不覚だったわ」
「まっ、これでようやく3人が生きているんだから良かったさ…まだ完全じゃないんだから寝ろ」
「うん」
頭に乗る斗和の温もりを感じながら目を閉じた。
* * *
あれからまた一週間後、寝ている斗和の頭を撫でていると佳奈ちゃんの森原さんがやって来ました。2人は多少歩ける許可が下りたため私の寝ている病室にやってきたとのこと。
「失礼しま…す?」
「なんで南崎先輩が」
「今は珍しくぐっすり寝ているの…生徒会の仕事の他にも私の分までやってくれているから休ませてあげないと」
いつもなら狸寝入りしているのに今日は本当に寝ています。ふふ、幼いころはよく一緒に寝ていましたが…寝顔はあの頃と変わりありませんね。
「今日は、来てくれてありがとう。体調はどう?」
「この通り元気です」
「…有村先輩が私達を優先するようにと…あの、ありがとうございました」
「ありがとうございました」
いい子たちですねぇ。
「機関の者として…先輩として、後輩を最優先するのは当然のことですから。2人がこうして元気でいてくれるだけでも守りがいがあったということです」
「有村先輩…」
「兄もいますからどうか私のことは茉里奈と呼んでください」
「はい、茉里奈先輩…私も佳奈と呼んでください!」
「私も希と呼んでください茉里奈先輩」
嬉しいですねぇ…今まで慕ってくれる後輩なんていませんでしたから。
「聞いてください茉里奈先輩!私、希ちゃんと親友になりました!」
「か、佳奈っ」
それは良かったです。ふふふ、佳奈ちゃん嬉しそう!希ちゃんも照れてますね、可愛いです。
「希ちゃんは強い人です、ですが時には挫ける時もあります…そんな時は佳奈ちゃんが守ってあげてくださいね」
「はい!希ちゃん、これからもよろしくね!!」
「…よ、よろしく…佳奈」
可愛い~!っと、起きましたね。
「おはよう斗和」
「…何か賑やかだと思ったら、来ていたのか」
「お、おはようございます南崎先輩」
「随分とぐっすりでしたね、茉里奈先輩の元で堂々と」
…ん?
「何を今更…ああ、そうか。知らないんだったな」
「何がです?」
「俺と茉里奈、婚約者同士だからさ」
「「えええええ!?」」
何かすごく驚かられているのは何故でしょう。
「南崎先輩と茉里奈先輩が…婚約者」
「…本当ですか茉里奈先輩」
「ええ、本当ですよ?」
ビックリして固まってますけど大丈夫でしょうか。
「任務中とかによく婚約者のドロドロとかを見ますが…私は斗和で良かったと思っていますよ、これからも頼みますよ」
「ああ、頼まれてやるさ」
2人でクスクス笑っていたらようやく戻ってきましたね。
『斗和、いい加減に戻ってこい!手伝え!!』
突然の大声にイヤホンをしていた斗和が撃沈、イヤホンをしていない私や希ちゃんと佳奈ちゃんも驚きました…私は近くに置いてある自分のイヤホンを付けてマイクをオンにする。
「英二、貴方の大声で斗和が撃沈したわよ。希ちゃんと佳奈ちゃんが驚いたじゃない」
『んあ?それはすまん、具合はどうだ茉里奈』
「だいぶ回復してきたわ」
『それは良かった、んじゃあ撃沈している馬鹿を送り出してくれ』
「はいはい…斗和、英二の手伝い行ってきなさいな」
「面倒い…」
「ごめんなさい、早く回復すれば私も手伝えるのだけど」
「いや、大丈夫さ…よし!行ってくる」
「うん、いってらっしゃい」
ようやく斗和は動いてくれました。
『サンキュウ―な』
「斗和も英二も、無理しないでよ?」
『お前さんほどではないさ』
それは私が無理をするということでしょうかね。
「そういえば佳奈…この後安部先輩が来てくれるんじゃなかった?」
「あ!」
「あ、やっぱりここにいたか~」
「雪音先輩!」
今日は土曜日…当然、バイトをしている雪音もいるわけです。
「向こうの病室に行っても2人がいなかったからもしかしてと思ってきたら正解だったよ。茉里奈、調子はどう?」
「大丈夫、雪音も忙しくない?」
「最近ようやく落ち着いてきた所なの。でもこうして後輩と親友を救えたから本当に嬉しいよ」
「…無理しないでよ?」
「大丈夫!ちゃんと限界は考えてるから、家の事は満も手伝ってくれているから楽なんだよ?」
ちゃんと考えてくれているなら安心ですが。
「さて二人とも、長居しては茉里奈が休めないから行くよ」
「「はい」」
誰もいなくなった部屋は静かですねぇ…こうやってのんびり外を眺めるのは”今宵”の件以来ですね。あの時も静かになった部屋で一人外の景色を眺めていました、あまりにも暇だったので一人反省会をしていましたし今からやろうと思っています。えーっと、今回はわざと捕まりましたね、あの時の薬品にまさか毒が仕込まれていたなんて…一生の不覚です。もう少し警戒をしていれば…あとは、特に無いですね…反省するとしたらそこだけですもんね。
反省会も終わったことですし、寝ましょう…毒の影響でまだ完全とは言えない状態なのでね。




