私と親友
目を覚ましたらそこは白い天井だった。周りをみるとここが機関にある病室だということが分かる…そっか、私…土宮と。
「茉里奈!目が覚めたんだな」
病室に入ってきたのは弘人さんだった。
「弘人さん…雪音ちゃん達は」
「彼女たちは怪我もなく無事に家に帰った…気分はどう?君は2日も寝ていたんだよ」
2日も…まぁ止血していたとはいえかなりの出血でしたからね。
「茉里奈が目を覚ましてくれて…本当に良かった」
弘人さんの手が震えている…あぁ…奏は弘人さんの相棒でしたね。
私は腕を伸ばし弘人さんの手を握る。
「茉里奈?」
「私…奏の敵、撃つことができたよ」
「っ!!…私は、あまり君に重荷を背をわせたくないけどね…茉里奈は本当に奏そっくりだよ」
「ふふっ…笑わせないでよ、痛いから」
「そうだね…さ、まだ無理せずにゆっくり休みなさい」
「うん…おやすみなさい」
「おやすみ」
弘人さんの手の温もりを感じながら、私は再び眠りの世界へと落ちて行きました。
《茉里奈》
「…奏?」
《えぇ…茉里奈、よく頑張ったわね…ずっと見ていたわ》
「…うん」
《私との約束、ずっと守っていてくれてありがとう…さすが私の弟子だわ》
「うん、これからもずっと守っていくよ」
《えぇ、お願いね?…これから先、たくさん辛いことが起きると思うけど》
「大丈夫、大丈夫だよ、奏で」
《?》
「私は一人じゃない、周りを頼れって…いつも奏言ってたでしょう?」
《そうね…さぁ、私はもう行かなければならないわ。茉里奈…ずっと私は見守っているわ……頑張りなさい》
「うん、ありがとう…頑張るね、奏」
これで最後になる奏の姿を夢で見て目を覚ますと…。
「茉里奈ちゃん!」
雪音ちゃんの顔がドアップに…どういうことでしょう、なぜ雪音ちゃんがここに?
「ゆ、雪音ちゃん?」
「まりなちゃぁぁぁぁん!!」
「へっ?あ、あの雪音ちゃん」
突然泣かれても…どうすれば。
「あ~あ、泣かせてる~」
「と、斗和?」
よく見れば斗和と雪音ちゃんの他に、英二やお兄ちゃん…蓮君たち生徒会メンバーっというかあの場所にいた人全員がいますね。まぁこの病室、かなり広いので余裕に入りますが…何故でしょう。
「お、起きたか」
「お父さん?」
部屋に入ってきたのはお父さん…長と弘人さん。
「今回の件で、君たちを巻き込んでしまったのは本当に申し訳ないと思っている…特に君たちは息子と娘の友人たちだからね、これからも友人として接してほしいとも思っている。……安部雪音さん」
「は、はい」
「君のご両親が亡くなられたのは私達のせいだ、本当に申し訳ない」
「雪音ちゃん、本当にごめんなさい」
「え!え、いや、あの、頭を上げてください!」
「でも雪音ちゃん、雪音ちゃんのご両親が狙われたのはすべて私のせいです…私がもっと早く行動していれば、こんなことにならなかった」
幸せな家庭が崩れることも無かったのに…。
「茉里奈ちゃん…確かに両親が死んだのは悲しかったけど、だからと言って引きこもる私じゃないもん。今はそんなことより、学費と生活費をどうにかしなきゃ!」
「…雪音ちゃん…」
「茉里奈ちゃん、私ね?満と相談して、二人暮らしすることにしたの。まだ物件も決まっていないし、学費とかやることまだたくさんあるけど…前に進むことにしたの!だから茉里奈ちゃん、傷が直ったら手伝ってね」
許すというのですか……なんか、雪音ちゃんらしいですね。
「…ありがとう」
「よし、私これから茉里奈って呼ぶね!」
「…うんっ、よろしくね、雪音」
この日の瞬間を、私は一生忘れる事は無いでしょう。こういう大切な出来事をこれからも増やしていきたいと思うのです。
「雪音さん」
「はい」
「お詫びとして、こちらからマンションを紹介しようと思っているだがどうかな?」
「え?いいのですか?」
「あぁ、ちなみに君と弟君の学費も負担するよ」
「え!?そんな!そこまでしていただなくてもいいですよ!」
…お父さん、なんか、さすがとしか言いようが無いですね。雪音、諦めてください…お父さんは首を縦にふるまで諦めない人ですから。
「借りる分だけ、ここでバイト形式で働いて欲しい…それでいいかな?」
「え?働く?ここでですか?」
「丁度人手不足って嘆いているところがあってね、そこで働いて欲しいんだ」
そんなところありましたっけ?斗和と英二を見ても首を傾げる、お兄ちゃんを見ても苦笑い…うーん。
「ちなみに長、それどこ?」
「武器班だよ、有沙が人為不足って言っていたから丁度いい…主に在庫確認とか事務的なことらしいから大丈夫だ、たまにお茶を運んでくれたりすると助かるかな」
「…分かりました、よろしくお願いします」
よかったですね、雪音。
「さて、本題に入ろう。君たちの疑問に答えよう…だがこの事は極秘だから、注意するようにね」
会長や鈴香先輩以外は組織が何なのか分からないのですよね?
「ここに来る前、別室で大体のことは聞いたよ。私の場合、茉里奈のお父さんが来て私と悟達にお話はしたの」
「そうなの?」
「うん、それより茉里奈…傷痛くない?まだ直ってないんだから無理しないでね?」
「麻酔が効いてるから痛みはないよ」
私と雪音が話している時も彼らの話は続いていた。
「他に質問はないかな?理解してくれて感謝するよ、そろそろ茉里奈の麻酔が切れる頃だからこれで終わりにしよう」
全員が出て行った瞬間に鋭い痛みに襲われた。
「っ…」
「ほら、横になって」
「明里さん…」
部屋に入ってきたのは大沢明里さん、医療班の班長を務めています。
「さっきまで起きていたんだ、かなり疲れたでしょう?ご飯になったら起こすから、寝なさいな」
「そ、うだね。おやすみ」
「おやすみなさい」
明里さんは第二のお母さんです。
* * *
あれから一週間、未だ病室のベットにお世話になっている私ですが…今日、雪音と満君、悟君とお母様がマンションのお話で来ているそうです。終わり次第お見舞いに来るのだとか…お父さんが進めるマンションは防犯もバッチリ、管理人も常にいるので安心…というか、その管理人は組織の人で住民も殆ど組織の人間らしいです…とても安心、ですかね。
はぁ…3週間も動いては駄目なんて、地獄ですよね。本も読み終えたので…どうすることも出来ません。
「はぁ…」
「なに溜息なんかついているんだよ」
「暇なのよ、斗和」
いきなり現れて…まったく。
「上であいつらに会ったぜ?」
「マンションの件だそうよ。終わり次第ここに来るって」
「なるほど、3週間は絶対安静で本も読み終わり誰もいないから暇ってことだな」
「そういうこと」
鋭いわね、本当に…あぁ、そういえば。
「あの時、私を運んでくれてありがとう」
「まったくだよ、止血したとはいえかなりの重症だったぞ?よく普通に動こうとしたな…一歩間違えれば死んでいたぞ?母さんたち、どこから聞いたのか知らないがうるさいほど電話きたし」
「あらら…心配かけてしまったわね、今度電話しないと」
「頼むぜ、うるさくて仕方ないわ」
それはそれは…本当に心配かけてしまったわね。
「貴方、仕事はいいの?」
「英二は唸ってたけど俺は終わったぜ?手伝わされそうになったところを逃げてきたのさ」
「英二…」
私の分まで頑張っているのでしょうね…ごめん、頑張って。
「んで、ここに逃げてきたってわけだ」
「なるほどね…。とても暇だったから丁度よかったわ」
「あ、そういえばさ…お前、防弾性の制服来てなかったようだが」
「あぁ…何回か”今宵”との戦いで使い物にならなかったのよ…まだ修理中で予備も無かったから、まさかそんな時に奴らが来るなんて思ってなかったのよ」
あれは私のせいでは決してありません、断言します。あ、斗和に溜息きつかれました…むむむ。
「へぇ~?珍しいこともあるもんだ」
「何かイラつく、とてもイラつく、こんな状態じゃなかったらナイフで刺し殺すのに」
「なんでナイフ」
「殺した感覚がしないと、貴方の場合簡単に死なないからよ」
「ほうほう、確かにな」
「…いつか絶対に殺る」
「お前ら、何物騒な話してるんだよ」
ん?英二?雪音と悟君達も後ろにいますね…いつの間に。
「今入ってきたんだよ」
「そう…私の分まで仕事をやってるとか」
「ようやく終わって長の所持ってったら、安部達がいたからここまで案内したんだよ。どうせ斗和もいると思ったしな」
なるほど、そういうことでしたか。
「雪音は一週間ぶり、他の3人はようこそですかね?」
「よっす茉里奈嬢、怪我は大丈夫か?」
「まだ塞がりませんけど大丈夫ですよ悟君」
「元気そうで良かったわ、茉里奈ちゃん」
「ありがとうございますおば様、この度は私事のせいで申し訳ありませんでした」
「つらい思いをしたのは雪ちゃんと満君よ、私はほんの手助けぐらいしかしていないのだから」
良い方ですよね、本当に。さて、ずっと無言の満君を見ると彼はずっと俯いていました。
「満君、こんにちは。初めましてですね」
雪音から話は聞いていましたが会うのは初めてですね。写真で見たお母さん似なんですね、満君…雪音は目元がお父さん、顔立ちがお母さんにです。
「…どうも」
顔を挙げて挨拶はしてくれましたがすぐに下を向いてしまいました。
「……ご両親を殺した犯人を…私を恨みますか?」
「茉里奈っ」
「父から…長から全て聞いたですよね?聞いて…早く動いていれば大切な家族が死なずにすんだのにと…そう思っていますよね?」
満君が手を強く握りしめているのが目に映ります。
「…なんで…なんでだよッ!なんで母さんも父さんも何もしていないのに殺されたんだよッ!!なんでお前の問題なんかに巻き込まれなきゃならないんだよッ!!ふざけるなッ!!人殺しッ!!!」
「満!!」
「おい、まて!」
病室を飛び出して行った満君を悟君と雪音が追い駆けて行きました。病室に残るのは私以外に悟君のお母様と斗和、英二のみとなりました。
「満君…」
「おい茉里奈、わざとにもほどがあるぞ」
「もっと別の言葉があっただろうにさ」
私は無言で、起き上がっているベットに倒れ力を抜く。
「いいのよ、あれで」
「はあ?」
「雪音は優しすぎるのよ…本来、満君の様になってもおかしくないのに」
あの子は起こる間もなく前へ進む決意をした。
「それに、私達が行なっている仕事は人の恨みを買うもの…これが普通よ」
「まぁそうなんだけどさ」
「英二、迷子になる前に迎えに行って」
「はいはい…ったく、本当に奏そっくりだなお前」
「最大の褒め言葉として取っておくわ」
「まったく…」
英二も居なくなり、3人になった病室は静かになった。
「おば様、申し訳ありません」
「いいのよ。……お話は全て聞いたわ、茉里奈ちゃんの師匠も亡くなられたって」
「…彼女は私の姉のような存在でした。とても強くて、でも変なところがダメダメで…ずっと私の目標だった…大きくなって成長したら、彼女と共に活動することを夢見ていたんです。実は今年、奏が死んで6年になるんです」
奏が死んだのは今から6年前…私が11歳、奏は当時20歳だったのですよ。
「”今宵”を倒すまでお墓参りは行かないと決意していたので、ようやく行くことができます」
「茉里奈ちゃん…」
コンコン
ノックが聞こえ、入ってきたのはお母さんでした。
「あら?雪音ちゃん達は?」
「茉里奈の言葉の操りで本音を吐き出し出て行った弟君を2人追い駆け、3人の絆が結ばれたのと同時にやっと追いついた感を出しながら英二が連れ戻しに行ってる。もうすぐ来るさ」
「あら、そうなの」
斗和…イヤホンで聞いていましたね?まぁ私も実は聞いていましたが…英二もわざとマイクのスイッチをつけていたのでしょうね。
「有沙さん、この度は本当にありがとうございました」
「いえいえ、元はこちらの問題に巻き込んでしまったのが悪かったのですから…十分謝罪の言葉を聞いていやになったでしょう?これはもう終わりにして、雪音ちゃんのように次へ行きませんと」
「そうですね」
ママさん方の会話を耳に小さく、それでいて長い息を吐く。
「大丈夫か?」
「大丈夫よ…はぁ、動かない分気疲れするわね」
「ただいま、迷子になる前に連れてきだぜ…ん?有沙さんじゃないですか」
「お疲れ様英二君」
雪音達が帰ってきましたね、満君は悟君に背を押されベットの近くへ来ました。
「…茉里奈さん、ごめ「満君」…え?」
「謝罪は聞きません、ですが満君の気持ち…確かに受け取りました」
「…ありがとう」
「どういたしまして」
やっと私に笑顔を見せてくれましたね、とても素敵です。
「さて!雪音ちゃん、満君。明後日引っ越しというのは聞いたわ、家具などは備わっているからその身ひとつでお引越しは終了するというのは聞いたわね?」
「はい」
「次に、雪音ちゃんのバイト内容について軽く説明するわ。詳しい内容は初出勤の時にするから安心して?それで、バイト内容は主に私が班長を務める武器班の事務作業になるわ。長の部屋にもお使いを頼むし武器班室は下にあるからとっても大変だけどお願いね?」
「はい!よろしくお願いします!」
そろそろ疲れたのですが…まだ終わらないのでしょうかね。




