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5話:入院と自白

強盗から僕をかばって刺されたジャイブ。そしてついにジャイブの秘密が由希にバレてしまう。

強盗に向かって行く僕。まるで全てがスローモーションのようだった。


『ああ・・・マンガや映画なんかでよく言うスローモーションってこんなカンジなんだ・・。』


僕はこんな非常事態にそんな事を考えていた。僕と強盗の身体がぶつかるその刹那に僕が見たのは強盗の手に握られた包丁の切っ先。気づかないうちにその鋭利な刃物の先端は真っ直ぐに僕のお腹の方に向いていた。


「バカっ!そんな正面からぶつかったら・・・!!!!!!!」


ジャイブが叫んだのがかすかに聞こえた。


僕と強盗がぶつかった。100キロある僕の身体にぶつかられてバランスを崩す強盗・・。そして僕のお腹に突き立った包丁。


「きゃああああああ!!」


この悲鳴は由希さんだ・・・・


ああ・・・僕はついに死んじゃうのか・・・。


そう考えた時だった。


『あれ・・・・痛く・・・ない?』


そしてその包丁の突き立ったお腹を見つめるとそこには・・・。


『ジャ・・・・ジャイブっっっ!!!!!!!!!!』


僕をかばってくれたんだ・・・。包丁はジャイブの前足の付け根あたりに深々と刺さっていた。


駆け付けた応援の警官に強盗は取り押さえられた。でも・・・でもジャイブが・・・。


『救急車・・・・お願いです・・・!ジャイブを・・・ジャイブを助けて!!』


僕は警察の人たちに駆け寄り叫んだ。ジャイブは息も絶え絶えに言う。


「バ〜カ・・・・こんぐらいで死ぬかよ・・・。は・・早く由希ちゃんとこ・・・いってやれよ・・・・。」


『こんな時にまで・・・何言ってるんだよ!早く病院に・・・!!』


「こんなん・・・ツバつけときゃ・・・治るってーの・・。」


解放された由希さんが駆け寄ってきた。


「ツナ君大丈・・・??きゃっ!ジャイブ?!まさかさっきの強盗に・・・・」


『由希さん・・ここで少しだけ待ってて・・。ジャイブを病院に・・。』


「気を付けて・・・。あたしはまだ警察の人とお話しなきゃいけないだろうから・・ここにいるね。」


僕はカブを飛ばした。うちの新聞屋の3件隣りにあった獣医さんのおうちに向かったんだ。


『ジャイブ・・・・死んじゃだめだ・・・絶対だめだ・・』


「へっ・・・だ〜・・れが死ぬかい・・。バカ・・言ってんじゃねぇよ・・・」


そうこうしてる間に獣医さんの家に着いた。


『お願いします!包丁で刺されたんです・・。この猫を・・・ジャイブを助けて下さい・・・』


ジャイブは3日ほど獣医さんの所で入院することになった。幸いにも刺さった場所は急所を外れていて命にも別状はないし前足の切断とかそんな事もないって言ってくれたんだ。


「オレはいいから・・・早く行けよ・・・・また・・・フラれちまうぞ・・」


ジャイブはさっきとは打ってかわってまたいつもの悪態をつく。


『全く・・・・そんなに僕がいたらジャマなの〜?わかったよ〜・・・・』


人がこんなに心配してるのにジャイブのやつったら由希さんの事ばかりなんだもんなあ。助けてもらっておきながらこんな風に腹立てるのもおかしいけどさあ・・・。


僕は獣医さんにジャイブの事をよくお願いして駅前の由希さんの待つ場所に戻った。


ちょうど由希さんも事情聴取が終わる頃だったようでタイミングはよかったみたい。


『由希さん!おまたせ!』


「ジャイブは・・・・大丈夫なの?」


由希さんが心配そうな顔をしながら僕に訊ねた。


『獣医さんのところに3日くらい入院することになったんだ。命にも前足にも別状はないみたいで・・・本当によかったよ・・。』


「そう・・・よかった・・・。それより・・・さっきジャイブが喋ったような・・・。戻れって・・。気のせいだったのかな?」


そうだ・・・さっき僕が強盗に飛びかかった時に・・・


『えええ・・・・ま、ま、ま、まさか・・。だ、だ、だってジャイブは猫だよ??ね、猫が喋るわけないよ〜!』


僕は慌ててフォローしたけど由希さんはもはや確信があったようだった。


「ツナ君・・・・何か隠してないでしょうね??」


由希さんの目がキラリと光る。


『か、か、隠してなんか・・・・』


「本当に???」


ずいっと詰め寄る由希さん。


『いや・・・・その・・・・』


一歩下がりながらしどろもどろになる僕。


由希さんは尚も


「隠してるなら教えて?ね???」


その気迫に僕はついに隠し通せなかった。ああ・・・・


『ごめん・・・・実は・・・・かくかくしかじか・・・。』


僕はあの日にブランコでジャイブと出会った話を洗いざらい全部喋ってしまったんだ。


沈黙・・・・・。世が全て飲み込まれたかのような僕と由希さんのこの沈黙・・・。


こんなことマジメに話したら普通の人だったら僕を狂人呼ばわりするだろう。そりゃそうだ、喋る猫なんて・・・。


「そんな事が・・・」


僕のアリんこよりも小さな根性を振り絞ったタックルは・・・もはや喋る猫によって霞んで・・・否!もはや忘れ去られてしまったようです・・。


「・・・・・あのね、今日はあたしの事助けてくれてありがとう。ツナ君、あの時はなかなかカッコよかった。」


え?僕の決死の自白は流された?!でも・・・よ・・・よかったあ・・・。僕・・・・もう死んでもいいかも。


そして由希さんは僕の部屋に来る事になったんだ。ジャイブもいないこの二人きりの空間・・・。あああ・・・・・・緊張してきちゃった・・・・。

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