3話:初めての指きりげんまん
斎場に残してきた由希の元に急ぐツナ!はちゃめちゃなトラブルもあるがジャイブの機転により救われる・・・。果たしてツナの運命は・・・・??
大急ぎで朝刊配達を終わらせて部屋に戻った僕とジャイブ。早く斎場に行かなきゃ由希さんが待ってる。
「さあさあ急げ急げ〜!由希ちゃんが待ってるんだろ〜〜??」
まるでお祭りの準備でもすrかのようにジャイブがまくしたてる。
『わかってるよ〜・・。でも少しでもマシな格好してかなきゃ・・・また由希さんに引かれちゃうじゃないか〜!』
「・・・・・・こんな時にめかしこんで行くのも変だと思うぞ・・・。」
ジャイブのぼやきを無視して僕はパンツからシャツからズボンまで買ったばかりの新しいものに着替え、リュックの中にジャイブを入れてカブにまたがった。
時間はまだ朝5時。車も少ないし走りやすい時間だった。ほどなくして僕らは葬儀場に着いた。
練の棺の前でもたれかかるように眠っていた由希さんを見つけた。
お化粧も落ちてすっかり目も腫れている。よっぽど泣いていたんだろうなあ。
「オマエ、気が利かないなあ〜・・ほら、そこに膝かけ毛布が置いてあるじゃねえか!それをかけてやるんだよっ!」
リュックの中から顔を出したジャイブが僕にさっそく喝を入れる。
『わ、わ、わ、わかってるよお・・・・』
僕は毛布を1枚取ってそっとかけてあげるんだけど・・・・
『き、き、き、緊張で・・・手・・・手が震える・・・・』
「バカバカっ!緊張するとこじゃねえだろっ!オマエそこで変なとこ触ったりしたら文字通りブタ箱行きだぞっ!!」
ジャイブの言葉が僕をよりいっそう緊張させる。
『だ、だ、だ、だって・・・』
目の前で眠る由希さんの吐息が指に当たるんです。僕はもう緊張がピークに・・・。その時でした。
「きゃっ!ツナ君?!あなた何してるわけっ?!」
僕の手はしっかりと由希さんの胸元にぶつかっていた・・・由希さんの表情はそれは恐ろしいものになってたんだ・・・
「こんな時に・・・・変態っ!!」
・・・・・・・・ほらね・・。もう練が亡くなってもこういう役回りは変わらないんだ。
絶望しかけたその時だった。
「にゃ〜ん」
「え??」
リュックからジャイブが顔を出して事もあろうか由希さんに甘えるのです。
「やだ・・・このこったらあ・・。超カワイイ。慰めてくれるの??優しいね。」
そしてジャイブが毛布に包まると由希さんがようやく気付いてくれたのです。
「もしかしてこの毛布・・・ツナ君が?」
『あ・・・いや・・・その・・・』
「なんだ〜・・早く言ってくれればよかったのに・・・。ごめんね。勘違いしちゃって・・。ありがとう、ツナ君!」
由希さんの顔にちょっとだけだけど笑顔が戻ったんだ。
『いや・・・・いいんだよ!きき気にしないで!』
ジャイブを見ると彼の目はこう言っていた。
「これでおお〜〜〜〜きな貸し一つだぜ?むはははははは〜〜!」
ジャイブの効果もあってか少し由希さんが明るくなった。告別式が始まるまで僕らはいろんな話をしたんだ。
でもほとんどが練の話だったなあ。寂しいような仕方ないような・・。あ、ジャイブの話はその次に多かったんだよ。でもさすがに人の言葉を喋る事は内緒にしたんだけどね。
「あたしもね、いろんな事情で両親と暮らしてなくてさ。ず〜っと一人で生きてきたの。誰にも頼らないで生きる自信があったけど・・。あたしやっぱ弱くてね、そんな時にいてくれたのが練だったんだ。あの人は人のためなら自分の犠牲を厭わない人だったから・・。」
『僕も一度ね、バイトでミスした時に監督にすごい殴られたんだ。そんな時に練は僕を助けてくれて・・・監督さんをボコボコにしてバイトをクビになっちゃったりして・・・熱いヤツだった・・。僕には絶対マネできないもん。』
「これからはあたしもツナ君も練に頼らずに生きてかなきゃならないんだもん・・お互いファイトだよ!はい!練の前で約束っ!」
『う・・・・うん・・・。』
「ゆ〜びき〜りげ〜んまんう〜そつ〜いた〜らハリセンボンのーますっ!ゆびきっ・・・た・・・・!」
指きりが終わったその時、由希さんはまた涙を流し始めた。やっぱり・・練は彼女の中で大きすぎる存在だったんだよね。
「貸し2つだかんな・・・」
ジャイブが僕の後ろでさり気無くぼやく。
そういうが早いかジャイブは涙を流す由希さんに甘えかかった。
「きゃ・・・やだ・・・くすぐったいってば・・・あははは!」
由希さんはそんなジャイブのおかげでまた笑顔になってたんだ。それを見てちょっと複雑だったけど僕はジャイブに感謝した。
由希さんが笑顔なら・・・それでいいか・・・って思ったから。