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10話:絶体絶命

ファンタジーランドの後、様子のおかしかった由希。そんな由希から「もう会えない」というメールがツナに入る。事態を把握できないツナ。そんな中、ジャイブは由希の身の危険を察知していた。

そして翌日の夜だった。僕の携帯にメールが入った。


「いろいろごめんね。もうツナクンとは会えないかも・・・ほんとにごめんね。あたしに関わるときっとツナ君危ない目に遭っちゃうから。」


突然そんなメールが届いた。僕はその時すぐに思った。・・・まさか・・・まさか!


由希さんが祐とくっついた可能性が真っ先に頭に浮かんだ。そんな時にただならぬ雰囲気を感じたのかジャイブが近寄ってきた。


「おい・・・どうした?ブタ!」


『・・・・これ・・・』


僕は携帯をジャイブに見せた。ジャイブは深刻そうに言った。


「オマエ、多分、祐と由希ちゃんがくっついたとかそんな心配してるんだろうけど・・・こりゃ祐がどうとかいう内容じゃねえと思うぞ・・・。」


まるでジャイブは事態を理解しているような口ぶりだ。


『え・・?じゃあいったいどういう・・・・??』


「昨今の様子を考えろよ〜!強盗から守ったりファンタジーランドに誘われたり・・・嫌われる要素がねえだろ??」


ジャイブにしては珍しく肯定的な意見だ。でも僕のネガティブ思考は止まらない。


『でも現にこうしてメールがきてるじゃないかあ・・・・』


「わかんねえけど裏っ返しに考えてみろよ、こりゃ由希ちゃんからのSOSだともとれるとオレは思うけどな・・。」


『そうだといいけど・・・とりあえず祐に電話してみるよ・・・』


僕は恐る恐る祐に電話をしてみる事にした。


「もしもし・・・ツナ?」


祐が電話に出ると同時に僕は聞いた。


『祐?!ねえ、キミんとこに由希さんからメールこなかった??』


電話の向こうの祐はいつもと様子が違うようだった。


「ああ・・・実は今、由希さんと埠頭にいてさ。ちょっとマズイ事になったんだ」


ただならぬ雰囲気を感じて僕は祐に訊ねた。


『それってどういうこと・・・??まさか・・・。今どこにいるの?』


「ツナ、いいか?オレにも由希さんにももう関わらない方がいい。もしオレになんかあったら警察に電話して埠頭にヤバイヤツらがいるって通報してくれ。いいか?オレみたいに・・・・・・・」


唐突に電話が切れた。


いつもの祐じゃなかった。真に迫る緊張感に張りつめた声。これは何かあったに違いなかった。


『祐・・・どうしたんだろう・・・』


ジャイブは心配そうに僕に聞いた。


「なんだ?祐はなんて?」


『今、由希さんといるんだって・・・それで・・・祐も由希さんと同じ事言ってて・・。』


ジャイブの表情が変わった。


「・・・・まさか・・・・おい、祐はどこにいるっつってた?!」


ジャイブが僕にすごい剣幕で言う。


『え?たしか埠頭って・・・・・』


「さっさと行くぞ!祐と由希が危ない!!」


ジャイブはそう言うが早いかカブに向かって走り出した。


『な・・・なんで?!』


僕も慌てて後を追いながら訊ねた。


「説明はあとだ!早くカブ動かせ!!!!」


こんなすごい剣幕のジャイブは見た事なかった。そしてこの時、僕の中に大きな闇のような不安が渦巻いていたんだ。まるで・・・・大切な何かが消えていってしまうようなそんな不安。


僕らはカブに飛び乗って品川埠頭を目指した。時刻は夜中0:00を回っていたんだ。


走るカブの途中、ジャイブは早口で事情を説明し始めた。


「あいつは一人だっておまえに言ってたけど・・・。あいつには親がいる。由希の親は・・・・本職のヤクザの組長だ。今、ヤクザ同士の抗争で親さらいや子さらいで相手の組の動き封じるとかそういう汚いヤツらが増えてるって聞いた。おそらく由希は祐と二人でいたところをマークされてたんだろう。・・・急がないと・・危ない・・。」


『そそ・・そんなヤクザがいっぱいいる中に僕ら二人で行ったってどうにもならないじゃないか・・・・。』


もしそれが本当なら警察に任せた方がいいに決まってる。


「バカ!確かな証拠もないのに警察が動くわけねえだろ!オレたちでなんとかしねえとだめなんだ!」


『で・・・・でも・・・・』


決心のつかない僕にジャイブはキレたようだった。


「おまえも・・・・惚れた女とダチのために死ぬ覚悟くらい出来るようになれよ!」


返す言葉がなかった。猫のジャイブにまで勇気のなさを問われた自分が情けなかったんだ。


『・・・・・』


「土壇場でビビって好きな女も友達も見捨てんのかよ・・・・ならいい。オレ一人でもヤツらんとこ行く。こんな猫でもやるときゃやるんだぜ。」


決心する時なのかもしれない・・・今が自分を奮い立たせるその時なのかもしれない・・。


『わかったよ・・・・・・僕も行く・・・・。恐いけど・・・行く!』


うちから品川埠頭まではすぐだった。海沿いを歩いていると・・・うずくまっている二人組がいた。その近くには倒れて気を失っているであろう黒服の男が二人。


由希さんと祐だった。祐はもう血と泥だらけだ。由希さんもボロボロだった。


「ツナクン・・・・」「ツナ・・・・なんでここに・・・・」


僕はとにかくここを離れなきゃって思ったんだ。


『キミたちを助けにきたんだよ・・・。さあ、早く逃げよう!今から警察呼ぶから・・・』


そう言った時だった。頭から足の先まで稲妻が走ったような衝撃を感じた。


僕はその衝撃に耐えかねて倒れ込んだ。どうやら角材で頭を殴られたらしかった。


僕の後ろでドスの利いた声が聞こえた。


「おう・・・津村のお嬢さん。ナイト様二人に囲まれて逃げようってか?そうはいかねえよ。さ、きてもらうぜ」


痛くて立ち上がれなかった。頭から流れる汗・・・。手で拭ってみるとそれは血だった。もうだめだ・・・。


「ちっくしょ〜!はなしやがれっ!くそっ!」


顔も痣と泥だらけの祐は暴れるがもはや抵抗になっていなかったようだった。痛さの合間にかろうじて顔を上げるとさっき倒れてた黒服と同じ服装の男が2人いて由希さんと祐を車に連れ込もうとしていたんだ。


その時だった。


「うわっ・・・なんだこの猫は・・・・!」


ジャイブが祐を抑えてる男の顔に飛びついていた。その隙に祐はその男の腕を掴んで腕を廻した。関節がすれるような音がする・・・。祐は合気道の技でその男の腕を折ったのだった。


「てめえら・・・・手荒いがもうここで死んでもらうとするか・・。」


僕の予想通りその男は懐からオートマチック拳銃を取り出して銃口を由希さんに向けた。


「そんなことして・・・・・ただで済むと思ってるの・・・??うちの組の人間が黙ってないわよ!!!」


青ざめた顔で由希さんが叫んだ。やっぱり組の人間ってのは本当だったんだ・・・・。しかしなんでジャイブはその事を知っていたんだろう。


「斉藤組の若頭の判断でなあ、殺ってもいいってことなんだ。悪く思うなよ・・。」


拳銃からカチって音がする。その瞬間僕の身体は勝手に動いていた。由希さんの前に仁王立ちした僕にパンッという乾いた破裂音が聞こえたんだ・・・・・・・・・

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