1話:デブとジャイブ
僕の名前は綱渡慶雅。ツナって呼ばれています。
彼女いない歴は26年。今の年齢も26歳。つまり全く異性にモテた事がないんです。
もともと僕は体重が100キロ近くあるし服なんか気にした事もないしだらしないし・・・。
高校もダブっちゃったので同学年のみんなはまだ25歳。そんな知り合いの中には僕からしたら素晴らしすぎるほどモテる男がいるんだ。
神谷練。こいつはうらやましい・・・・いや!許せない程女の子をはべらかし、彼女がいても2番や3番がいたりと言ったスーパープレイボーイなんです。
そんな僕は毎回、練から女の子を紹介されますが・・・もちろんうまくいかず今日も落ち込んで帰るところってわけ。
僕はいつも凹むとこの世田谷公園のブランコに揺られながらコンビニで買ったチューハイを片手に空を見上げるんだ。
いつものとおりブランコに腰掛けようとするとそこには猫が先に座っていた。どかすのも悪いと思い隣のブランコに座ると・・・
「おい!このデブ!やけにシケたツラしてやがるな!!」
・・・周りを見渡しても僕以外誰もいない。
『え・・・??だ、だれ??』
「おまえの隣に座ってんだろ〜!腹が邪魔で横も見えねえのかよっ!」
『横って・・・・。え??』
そこに座って僕を見ていたのはさっきの猫。
『ええええ!ね、猫が喋った・・・。』
「うっるせえな〜!オレが喋っちゃ悪いのかよ!いいじゃねえか!おい!デブ!名前は?」
『え・・・ツナだよ。き・・君は?』
「オレはジャイブってんだ!でよお、どうした?浮かない顔してよ?」
『そりゃあ浮かないよ・・・実はかくかくしかじか・・・』
不自然な状況に混乱しながらも僕は事情をジャイブに話したんだ。
「かあ〜〜!!バッカだなあ、おめえは。よく考えてみろよ。オレから見たらその練ってヤツもオマエも同じ人間だろう?クヨクヨすんない!」
『でも僕は練みたいにカッコよくもないし・・・デブとかブタとか言われるし・・・。』
僕は思い出してどんどん凹んできてしまったんだ。
「よし!じゃあオレがオマエの根性を叩き直してやる!そのかわりオレに毎日メシを食わせろ!いいなっ?」
ジャイブはブランコから飛び降りると僕の背中に乗っかった。
『ええええ・・・・こ、困るよ・・・』
「お前働いてんだろ?オレみたいなノラ猫さえ飼えないのに女がモノにできんのか!?」
『・・・・・』
こうして僕は返す言葉もなく喋るノラ猫のジャイブを連れて下宿先の新聞屋に帰ることになった。
このジャイブとの生活がモテない男日本代表クラスの僕を大きく変える事になるなんてこの時の僕は知る由もなかったんだ。
人間は中身が大事なんです。そんなことがテーマになっています。