双子
梅桃さくらの闇の世界に、ようこそ。
ショートホラーの連作、第9回となります。
僕たちはどちらか一方しか生きられない。
お腹の中にいる僕たちの耳に絶えず入ってくるのは
ママの泣く声ばかり。
どうして双子だと片方を殺さなくてはいけないの?
片方を殺さないと家が絶えるというけど、それが何だっていうの?
下の子が上の子をいずれ殺すって、誰が決めたの?
昔にそんなことがあったからって、
この子たちがするとは限らないじゃない!
そして僕たちは悟る。
長子として生まれたほうしか選ばれないということを。
僕たちは長子になるために、
ママのお腹の中で争うことになった。
生き残るために。
先に生まれたい!
僕たちは産道の前の位置を争う。
最初に産道に入った方が先に生まれるのだ。
負けるわけにはいかない。
負けは、死なのだから。
でも同時に僕たちは迷う。
自分の生は、相手の死。
僕たちは一緒にママのお腹の中に来たのに、いまは相手を殺そうとしている。
悲しいね。
悲しいね。
悲しいね。
そして、争いに決着がつく。
産道の前に陣取ったのは、僕じゃない方。
もし死なずにすんだら、
お姉ちゃんになる方。
そう、僕たちは二卵性双子。
僕は男。
あの子が女。
お姉ちゃん。
さようなら。
やがて明るい光に包まれ、僕とおねえちゃんは外に出た。
悲しくて、悲しくて僕は泣く。
もう死しかないのだ。
僕の人生には。
声が聞こえる。
「では男の子の方を残すということで。」
年老いたドクターの声がする。
「この辺では昔から、後に産まれたほうを長子としてきました。
最初にお腹の中に宿った方が奥に行くという考え方です。
一卵性双生児なら話は変わってきますが、二卵性ならこの考え方でよいでしょう。
だから後から産まれたこの子が長子です。」
お姉ちゃんの・・・いや、妹の泣く声が聞こえた。
嘘よ、嘘よ、嘘よ!
なんで私?
先に産まれたのに!
せっかくお腹の中で頑張ったのに!
嘘よ!嘘よ!嘘よ!
助けて!死にたくないよぉぉぉ!
僕も泣く。
妹が死んじゃう!妹が死んじゃう!
僕の片割れが死んじゃう!
その時、ママの声がした。
「あぁ、見てあなた。
この子、泣きながら笑ってるわ。
私達の可愛い坊やが。」
前回、投稿順を間違えています。
お気になさらずに。