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特異点2045  作者: しろ
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プロローグ

何か物を書いてみたいと思い、私がワクワクする近未来を交えて書いてみようと挑戦した初作品となります。

小説を書く上での細かなルールや言い回しなど拙い部分も多分にあるかと思われますが、「表現間違ってやんの」程度に思って貰えたりすると助かります。

今ある構想を含め、最後まで書ききれたら良いなと思います。

プロローグ


2045年、技術的特異点の発生が予期されていたが実際にそれが起こる事は無かった。


代わりに2061年、それに類するものとして新しい技術が生み出された。


結果としてそれは、人類進化の発端であり、ポスト・ヒューマンと呼ばれる新人類の誕生を意味していた。


時は2071年。光子コンピュータが生まれ、BCI(ブレイン・コンピュータ・インタフェース)が現実に普及されてから10年後の事である。




「博士、ミーシャ博士。」


少しばかり小太りで眼鏡をかけた男性が私を呼ぶ。



「何?今忙しくて手が放せないのだけど。」


私は素っ気なく答える。



「新しいサンプルから新らしいパターンと思われる波形を観測しました。」



「そう、データを記録したら未測定派観測部門に送りなさい。」



「分かりました、直ちにデータの記録を行います。」


いつもと同じやりとりに嫌気がさしつつも、私は同じやりとりをするしかないのだ。



「ポール、少し休憩取ってくるから後、宜しくお願いね。」


私は彼の返事を待たずに研究室を出る事にした。



「ふぅ…、今日も大きな変化は無しね」


独り言を吐きながら屋上へと向かう。


そこは私にとって唯一リラックス出来る場所なのだ。

同じ視界を何度も繰り返し、ようやく固く閉ざされた大きな屋上扉の前へと辿り着いた。

重い扉を押し開くと、霧がかった空気の中に町の景色が見える。

何気なく空を見上げるが、その先に青空が広がっていない事が唯一気に食わない。

ここは地下研究施設なのでそれは当たり前の事ではあるが。






我々人類の技術は、光子コンピュータの誕生により、飛躍的に向上し、また人としての機能も同時に進化を遂げる事となった。


光子コンピュータの誕生よりわずか10年で、コンピュータの処理は人が出来うる全てを凌駕し、人はその能力を自らの脳と連結する事で、従来の「人」を遥かに超える存在となった。


未来研究において予測されていた自体とは裏腹に、人工知能が感情を獲得して新たな支配者となる、等といった事は特になかった。

人工知能を直接脳に連結した人をもはや人ではない、と言うのであれば話は別だが。

人の思考能力は飛躍的に進化し、従来一生で得られる知識を一瞬で獲得出来るまでに至った。






BCIを取り付けている彼らは「New Logic」と呼ばれている。

正式名称は、「new logic of neural network」となる。



これは、ニューラルネットワークの新論理という意味で、本来脳内では神経伝達物質とニューロン間で電気的信号により情報の受け渡し後、海馬などの器官へその情報は伝達される。


しかし神経伝達物質を利用せずにBCIで処理された情報をダイレクトに海馬などへ送る事で、処理、伝達速度を飛躍的にあげる仕組みとなる。



ただし海馬からパペッツの回路と呼ばれる各部位へ情報が伝達されなければ、感情がうまく生成されないので、海馬にある情報はBCIへ直接返すのと同時にパペッツの回路も通す事としている。

パペッツの回路を通すよりもBCIとの伝達の方が受け渡しは早いので、情報を解析・理解した後に感情が生まれる事となる。




感情自体をBCIで生成する研究も進められ、実際に実験として脳に組み込んだ事もあったようだが、結果は失敗。


BCIは処理能力としては人が追いつけない領域にあるが、人が持つ感情をうまく生成する事は出来なかった。

最もそれが出来た時は、人工知能の自我が目覚めるだろう時とも言えるが。





ここで誰もが予想していなかった事は、副作用とも呼べる産物の存在である。


正確には生物学的進化による新たな能力の獲得とも言える事態である。



これは、人の脳が予めこれらの技術に対して用意されていた能力なのか、科学者の間でも賛否両論となるが、光子コンピュータをベースにした人工知能をBCI(ブレイン・コンピュータ・インターフェース)により脳と連結した人間から生まれた子供には、少なくない確率で脳の障害、もしくは新たな脳機能の活性化が認められている。


外見・思考・肉体的には通常の人と何ら変わりはない。

しかし彼らの中からBCIを脳に取り付ける事なく、人を超越している子供がいる事が判明した。




この10年でBCIを取り付けた人から生まれた子供は世界人口115億人に対してわずか1000人足らず。

これにはBCIを取り付ける事が容易ではない事と、その高コストから限られた人にしか取り付けられない事があげられる。

何より2年前に副作用の存在が周知となった事で、倫理協議団体による格好の餌食となり、BCI使用に関する大々的な検討の見直しを余儀なくされた事が一番の要因とも言える。

つまりは、2年前から現在まで新たなBCI利用者はいないという事である。



ニューロジックから生まれた子供に関して、現在判明している事実は限りなく少ないが、3年前に僅か5歳にして一人の人間がその生涯で獲得し得る知識量を既に記憶した女の子がいた。

BCIを取り付ける事なく、取り付けた人と同じ様に膨大な知識を獲得しているという事実は本来ありえない事だった。

しかしその子は、その事がマスメディアを通して世間を騒がせた後に死亡した。

観察の結果、死因は心臓発作として報道されたが、信憑性は定かではない。

当時のマスコミがこんな面白いであろうネタからすぐに手を引いたのも、何か圧力がかかったのではと疑う声もある。


それから火蓋を切ったかの様にニューロジックの子供たち数十名から、通常とは異なる脳波が発見される。



そしてどこから流れたのか。

彼らは精神感応に関する能力を持っている、等という噂が世間を賑わせた。

いわゆる超感覚的知覚(ESP)の事である。


私は実際に出会った事がないので、あまり信じたくはないものだが…。



仕事柄、ニューロジックの脳波測定に携わっているので、それが限りなく真実に近いだろうという事は肌で感じている。


ある特定条件下で、ニューロジックの子供とは別に離れた部屋に人を一人置き、離れた人には擬似感情仮想現実(Pseudo Feelings in Virtual Reality)を使用して感情を変化させる。

通称PFVRと呼ばれている。

これは、映画など主人公が繰りなす一方通行の世界を対象とし、自分自身が映画の主人公に同期するシステムである。

ざっくり言えば、第三者視点からではなく、本人視点で物語を楽しむ事が出来、感情などもその主人公と同期する事が出来る。

BCIで直接感情を作る事は出来ないが、人の感情をデータとしてコピーする事は可能故に確立されたシステムだ。


この手の技術は、現代の娯楽システムとして切って離せるものではなくなっている。

ポール曰く、使い道は無限大だそうな。



話は逸れてしまったが、感情を変化させた状態で離れた子供にその人物の感情を聞くと、8割方当てる事が出来るのだ。



特定条件の事だが、全部で3つとなる。


離れた部屋の場所を一度目視させる事。

次に対象人物の顔を予め目視しておく事。

最後に感情を知る時に、その部屋にその人物がいるという事実を知っておく事。



外してしまう2割を考えると、他にも細かい条件があるのかも知れないが、それに関しては現在調査中となる。


現在協力して貰っている彼らは、3人だがこの能力を持っている人物は1人だ。

他2人は、様々なテストでの結果、本来あり得ない脳波の測定は出来ているものの、その作用が何かを特定出来ずにいる。


国民は、BCI使用者の進化とも呼べる圧倒的な思考能力の向上に驚きを隠せなかったが、その反動か現在のその子供たちの能力に対しては当時ほど騒がれていない。


子供たちにとっては不幸中の幸いか、これといった迫害を受ける事無く生活出来ている。


しかし私はNew logicの子供だからNew logic children(通称NLC)と呼ばれる彼らこそが、BCIより社会に大きな影響を与えるのではないかと危惧している。

危惧する理由は良い影響だけではなく、悪い影響も含んでいるからである。


しかしその時、NLCに対抗出来るのは恐らくNLCだけであるだろう。


そうだわ、今度世間に警鐘を鳴らすという意味でこれについての論文でも提出しようかしら…。


そんな事を考えつつ、ポールに仕事を任せてから30分近く経っている事に気付き、急いで戻る事にした。

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