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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

寝ぼけたときの小話

初っ端っからすいません。R18かどうか、真剣に悩みました。

ご指摘があれば月に移動いたします。ご気軽にご指摘ください。

ゆらゆらと視界が揺れる。揺れるのは意識だろうか。眠ってる私の視界が揺れるはずがない。だったら体か? ソファで寝てるはずの私の体が揺れる? 


あれだ、今頃ベッドで盛大にギシアンしてるダイダラボッチたちのおかげで揺れてる夢を見てるんだろう。


結論付けて深く息を吸う。眠っているのか起きているのか、自分でもよくわからない。

睡眠導入用の薬湯をたっぷり飲んで、耳栓と対になっている耳当ては我ながら良くできた設計だ。ふかふかのクッションと、目の詰まった、けれども軽い毛布もどきを耳に掛けるようにして横になってるから、なおさら声は聞こえない。聞きたくない。私、本当に横向きに寝る習性で良かった。

どれだけ馬鹿げて大きいっていっても、ソファで仰向けになれるほど、私の体は小さくない。


……いや、なんか揺れてる。気のせいじゃなく、空気が。


薬湯のせいで頭痛がする。意識を保ってるのがキツイ。ぐるんぐるんする体で必死にソファの背もたれを掴んで顔を上げた。天蓋が覆うベッドの傍には人影が立っている。おいおい駅弁かよ。男同士だと更にハードル高くねぇ? もちろん私は未経験だけど、ほら想像したら出来ねぇでしょ? 股間が痛いわ。あと背中も。背中?


「ダイダラもボッチも、ベッドから起きてまで情事しちゃだめでしょー? ハウス。甘い時間はお布団の中でだけにして」


ぶっちゃけて言えば私の視力は眼鏡なしだとほぼ見えない。てへへ。どうして照れるのか理解できないけど、暗闇でも真昼でも見えるレベルがあんまり変わらないってところ。

まぁね、個人認識にものすごく難がある。そう思ってくれればいい。


「…………サーラ」


だから、私が誰かを見分けるときにはもっぱら声を使う。あと匂い。手触り。色彩が淡いと輪郭が良くつかめないから、ぱっきりした服装とか彩りの人も助かるな。鎧とかズルズルの服とか。黒髪だとか、褐色の肌だとか。

そう、こんな風に声に色気を、他に類を見ないほど突っ込んでくるような人とかね。


「……あれ? はっちんなの? なしてよ?」


重ねて言うと、私はこの時、薬で朦朧としてた。もうちょっとハッキリ言うと、薬でラリってた。後から思うと、だから間違ったんだ。

これが現実じゃなく夢だって、つい判断しちゃったんだよ。

あのね、実は言及してなかったけど、耳栓を外した私の聴力はものすごいものを聞いてくれちゃっててですね……。

はっちんが私に話しかけてきたときはね、まだダイダラだかボッチだかがね、その、アレだ、っあー、なんつーかまだ『ラストスパートの最中』でしてさぁ。

『ちょ、ちょい待った、ここだけ、これだけ……』とか、いやいや、あっちでタンマここだけ! みたいなお願いの声が聞こえるかと思いきやよ? 嫌だバカ止めるな的な……その、こっちの受けてらっしゃる方のね、リアルAVみたいなおねだりが尾を引く中でよ? 

私にとってあと何日間かは会えると思ってなかった人が、ここに立ってるとか。

誰も思わんでしょ?


「……なして?」

「いやいや出てくる単語としちゃぁよ? 『なして』だろうさぁ? はっちん、今日明日は帰んねぇっつって、聞いてたのにさぁ?」


さぁ、の語尾は、『さ~ぁ?』って発音する。うっかり、ごたまぜの方言が飛び交う家庭に育っちゃったから、我ながら意識が混濁してる時に話す言葉はどこのものなのか、自分でもさっぱりわからん。


「サーラ、これは」

「っあーー、はっちん、ダイダラとボッチはなぁ、ラブラブなん。せやけど、田舎におるときはともかく、こんな街中やし、男同士はキリスト教圏、駄目なんやろ? やから私の布団をな、提供してみたん」


私の言葉のどれに衝撃を受けたものか、推定だけどこんな時でさえハンサムであろう私の旦那さま、結婚相手、保護者兼監視者はよろよろとこっちに向かって移動し、ものすごい勢いでソファの空いたところに座り込んでしまった。がっくりと小さくなって頭を抱えてるからはみ出てる、柔らかいけどきっちり立ってる(どういう生え方だ)髪の毛をよしよしと撫でる。

おぉ、固まってる。

すっげぇ、指に節があるぜ。おいおい女の子とはだいぶん違うな? 頬から首にかけてのこの感触ときたら、ぱつんぱつんより一足飛びに硬ぇよ。肩こりか? 筋肉にしちゃぁ指も入っていかねぇし、違うんだろうな。旦那さまったら職業が騎士だし、上級の方だって聞いてるしよ? きっとだけど恐ろしいプレッシャーだもんな? 日々。


「…………布団、提供」

「はっちん単語で喋りすぎじゃね? なんなん、そんなにショックやったん?」

「……はっちんとは、私のことでしょうか、サーラ。それと……具合が悪い、んですか? 眩暈がする?」


ばれたか。すまん、と一言だけ断ってから私はぐいぐいと彼を寄せて、無理に作った隙間に横にならせてもらう。いやいやガチでマジでこの薬ったら効くわぁ。

夢だってわかってても頭が上手に働かない。

あれ? 夢だからか?


「ぅーえ、目が回るよぉ。はっちんは飲まん方がいんじゃね? マラカスは『何処いっとんの実』ってゆーてたけどなぁ?」

「……それが『ダティントンの実』の煎じ薬のことなら、そうですね。私は飲みたくはない……というか、サーラ、そんなものを飲まれてるんですか? あんな、効能の強いものを? そこまで眠れない?」


あ、ダイダラもボッチも終わったくせぇ。っつか、どれだけ防音いうてもやな、この部屋の臨時持ち主と、貸与主がおんねんで? ちったぁ遠慮してくれても。そんな満足そうな息、吐きよらんでも。


「…………サーラ。彼らが、いるからですか? 貴女の体調を崩してまでも彼らに恩を売りたい? 私に、心配をかけてまでも?」

「心配? ふーん、このはっちんやとやっぱ優しいんや。そら、都合のいい『はっちん』が出てこんとな。私の夢なんやし」

「……夢?」


なんやのはっちん、溜めが多すぎとちゃうん? そう突っ込むとため息を吐かれた。おいおい下手な突っ込みより厳しくねぇかその態度。ボケ取るつもりはこっちにゃねぇぞ?


「好きやで、はっちん。やから、もっと私に優しゅうせぇや」

「……サーラ。私が本気になれば、きっと貴女は泣いて逃げる。こんなに華奢で稚くて無邪気な少女に本気を出して迫る40男など、傍から見てもすごく気持ちの悪い光景ですよ」

「はぁ? はっちん40男なんかいな! そらびっくり、ちなみに私は25歳になり申したで?! こないだな! 暦が違うし、多分やけどな!」


ああ人生の四半世紀はとうに過ぎた、と歌うとはっちんが息を飲んだ。気がする。なんやの。


「四半世紀を過ぎた? それはどういう意味で?」

「あぁぁ? 女ん子ぉにナニ言わす。こちとらの寿命ときたら多く見積もって80歳や。25いうたら半分の半分より年食ってんやんか。売れ時、買わせ時はとぉに過ぎた……とまではまぁいかんのやけど、ぶっちゃけ適齢期や。っつかなぁ、危ないやん気をつけろやん、おっさんらぁがうっさいし、どーもこっちやと若ぅ見えすぎてかなんわ。きっしょい形容されとるし。なんやん華奢やとか稚いとか。ないわー。のぅわー」


適当に歌っているとようやく眩暈も落ち着いてくる。ごそごそ向こうでいわせてんのはダイダラかボッチか。ぶちどーでもいいけどな、アレの始末だけは頼むで? 白い粘液とか、そんなんの下洗い私がすんの、イヤやで?


「まぁなぁ、なーんちゃねぇよなぁ? こんなところに落ちてもぅて、きっちり温ったこぅ世話してもろて? イケメンに嫁にしてもろて? せめて周りにおる人くらい、幸せにしたいやろ? はっちんにもめでたく彼女のできたって聞いたし、護衛とやらだってギシアンする権利はあんで?」

「私に彼女なぞ出来ておりません。いったい何処の情報ですか。……いえしかし、もしかしてそれで、ですか? 最近になって家人たちが『急にお休みとやらを奥様に頂くようになったのですが、私どもの粗相がそれほどお目に余りましたでしょうか』と不安そうに私に訴えてくるのですが」


眩暈が収まって不穏にエロい空気も引いた。薬の眠気に抵抗する気もない。私は眠い。


「マラカスたちのんは、話し合いが必要やな」

「ですね。ついでに、サーラと私の相互理解も」


優しい声がとんとんと私の額を叩く。痛くないのが不思議だ。硬い指先なんになぁ?


「なーんも、なんも。はっちんに優しくされたし、理解はもういらんで? 違う世界の男しの考えやん、思いもつかんしぃ?」

「いえいえもう少しでいいんです。理解はしてもらいますよ。私がどれだけサーラのことを愛しているのか、どうやら寿命数から言えば私たちは似合いの年回りだとか。……貴女の意識が朦朧としているならば、これだけの素直な本音を吐いていただけるのだとか。私も、初めて理解したことが多いです」


今回のことは、いい切っ掛けでした。


どこまでも色気のある声が丁寧に喋って、私を睡魔の奥底に叩き込む。駄目だ、びたイチ動かない。体も。思考も。


「おやすみなさい、サーラ。もう少し貴女が寝入ってから、違う部屋のベッドに運びますから。せめて朝まで一緒に寝ましょうね」


ふわりと旦那さまの体臭が届く。体温にあっためられた匂い。私の大好きな男の匂い。

そっと、離れたくないみたいに私の髪を弄り続ける、乾いてる男の手。

そうして私は、この世界に落ちてきてからの過去と比べても最高のスピードで、心地いい眠りについた。





…………もちろん。もちろん。

起きてからの私は、この時間が夢ではなかったことをたっぷりと旦那さまに教えてもらったし、異世界人だから避けられていたのではなく大事に、そりゃあもう軟禁レベルで大事にされていて、息ができないほどに愛されていたのだと長い時間をかけて話し合った後はベッドを夫婦の使う意味で使わせてもらう羽目にもなったし、ギシアンというのがなんら誇張ではない形容詞だということもついでに教えてもらうことになった。


いいけどね。

最後が、幸せならね。



※はい。

というお話でした。方言はお分かりになりましたでしょうか。基本が関西、だと思うんですけど……ちょっと本気で私が理解しておりません。当たり前のように語尾が偽物なのは重々承知、その上で偽物のベースでさえもわからないのです。

私の方言は日本語レベルなの? ねぇ。


主人公の女性は相も変わらず異世界落ちの人です。キリスト教圏が云々、当然ですが彼らには伝わっておりません。ですが教義としては似たようなものだとご理解ください。同性愛禁止。


ダイダラ、ボッチ、はっちん、マラカス。固有名詞は大体において彼女の意訳です。何処いっとんの実はかなり強力な睡眠導入薬だと設定してます。トリップからの不定愁訴が根底にあったとはいえ、ギシアン、そうまでしても聞きたくなかったようです。


恐ろしいことにこの小文、誤字脱字がないのです。声に出して読んでいただけると大概の単語の意味や語尾でニュアンスがおわかり頂けると思ってますが、わからない語句があれば突っ込みをよろしくお願いいたします。疑問符のついてある語尾は、歌うように揺らしてください。


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