こわれたくにのおわり
つぎのしゅんかんには、ひだりうでだけのミウネが、ボクのかおをのぞきこんでいた。
「よかった……再起動できた……」
「……ミウネ、エリはどうなったの?」
「エリは……」
エリは、ボクがバッテリーをはずしたしゅんかんに、たおれた。そのはずみで、ボクのバッテリーをはじきとばしたらしい。
ミウネは、とんでいったバッテリーをひろってはめて、さいきどうさせてくれた。
「……ほかのみんなは?」
うごいているのは、ふたりだけ。
よそうできても、きいてしまった。
「他のみんなは……もう、動かないの」
それが、すべてをかたっていた。
みんな、こわれちゃったんだ……
ふたりとも、そんざいしないなみだをながして、ないた。
かたん、とちいさな音がした。
上のハッチがひらいて、三人くらいのにんげんがおりてきた。
「君たちは……まだ動いていたのか」
「はい……わたし達を知ってるのですか?」
「No.025896…君を三十年前に試験した試験官だよ」
「ミウネ、三十年もここにいたんだ!?」
「君は三ヶ月前のNo.258462じゃないか」
よく見ると、あのしけんのときにいた人だった。
「三十年も経ってたんですね……ネジ工場の倒産でわたしが“廃棄”された日から」
「No.025896……いや、ミウネというのか。君とNo.258462はここから出る権利を得たんだ」
ここからでるけんり?はなしがわからない。
「あれから少しして、ナ……ミウネと同タイプのYou-Ai-loidのネジを作ることのできる工場ができた。古くから稼働しているものの修理のためにね」
じゃあ、ミウネはまた、やりなおせるんだ。ふりょうひんじゃなく、ユウアイロイドとして。
「No.258462、実は、君のような、対話プログラムに多少の異常のあるものを、欲しがる人がいたんだ。それも結構な数」
……それはいいことなのかな……びみょう。
「そんな理由もあるが、今日は百年に一度の“リサイクルの日”なんだ。ここの壊れたものを運び出して新しい材料にし、ここを空にするための日」
みまわすと、ボクたちと話している人いがいは、ざんがいをふくろにつめてはこびだしていた。
じゃあ、もしボクたちが出るけんりがなかったら……バラバラにされてたのかな?
「おいで。腕も直るし、新しく生活をやり直せる。もう不良品なんかじゃないんだ」
そういって、立ち上がってあるきだした。
ボクとミウネも、あとにつづく。
「みんなに、さよならしよう」
ミウネがいった。ボクもうなづき、ふたりでいった。
「さよなら、みんな。ありがとう」
ボクたちがかわっても、みんなのことはわすれたくない。
はっせいきかんがこわれていたカサリのこと、めのうちがわがきずだらけだったアマミのこと、いつも左足をひきずっていたメイのこと、すこしけんかっぱやかったロウのこと、人をころしたエリのこと、たくさんのみんなのこと。
ボクたちはきっと、わすれない。
ボクたちは、はしごをのぼって“はいきしょぶんじょ”のそとにでた。
こんにちは、雪野つぐみです。
“がらくたたちのくに”、ついに完結しました。
構想から約一年、長かったです……
さて、この小説、構想時点では連載の予定はありませんでした。
しかも最後なんて全く見えておらず、やっと見えても救いも何もないエンドでした。
それがこんな風に彼らに救済をあたえ、個人的にはよかったと思っています。
(まさか構想時点では絵本でハナ女の子だったなんて言えない……)
最後に、この小説を読んでくださった皆様、素敵なイラストをくださった文房群様、応援してくださった小説家仲間と弟に、感謝を捧げます。
本当にありがとうございました!