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第1話

やっとなにか動きました。

老人婦人が疎らになってきたころ、夕暮れの小さな町には汗臭い連中が集まる一角がある。

軋んだ椅子に腰かけ、今日の成果や下世話な話がどちらからもなく飛び交う何でもありな酒場。今日もそんな連中は足軽に扉を開いた。


「町の外れの小隊がよく使う脇道に魔物が現れたんだとよ!!!」


酒臭い男たちはざわりと声を上げる。この街にいる小隊達は軟弱もの達が多く、小物の魔物でももたもたと鈍い剣振りをみしてくれるから偶にこの街の住民が呼ばれることもある。それに参加すると少ないが金も貰えるのだ。男たちには酒代に暇なとき参加しているものも多い。


「小物がわんさか出てきたのか?酒代には丁度いいけどよそんな慌てることかよ」

大柄な身体をした無精ひげを生やした男が酒を飲みながらめんどくさそうに問う。

「何だか知らんけど、中級の魔物も結構いるらしいぜ?」

ガタガタと椅子を引きずり、麦一杯と近くにいる忙しそうに小走りに働く看板娘に頼んだ。

「だけど町を守る者が対象に助けを求めるなんたぁ小隊もそれまでだな」

もう一人の男はそれもそうだと、酒を飲み続けた。


「はい!麦一杯ね!!」

「おっ、今日も元気だな」

注文した飲み物を肩までに髪をスパッと切った健康的な看板娘が渡す。

「やだなぁ、もう今日も終わっちゃうよ。みんな騒いで帰っちゃうからいっつも大変なんだからね!」

怒ったふりをしながらにこりと言葉を返した娘に男たちはデレリと頬を緩ませる。反抗的な娘や息子をもつと、これが結構微笑ましくなる。


「それはそうと、おじさんたち小隊の手伝いに行くの?」

ふと、顔を曇らせながら看板娘は男たちに話を振った。

「うーん。今のところは俺らは行くか行かないか迷ってるところなんだが…なんかあったのか?」

ぎゅっとお盆を抱きしめると小声で話し始めた。

「小隊の人たちの会話をちょっと盗み聞きしちゃたんだけどね?今回おじさんが言った通り、中級の魔物もいるっていったじゃない。その中に王国の指輪を食べちゃった魔物もいるんだって!」

「王国の指輪?」

「うん」

小首を傾げながら続けてぽつんと「特別な指輪か?大切なものなら王国も慌てるだろうになぁ」無精ひげを生やした男が顎を撫でながら眉を寄せる。

「だから、手柄を立てるために小隊の上のほうの人たちは自分で討とうと息巻いてるみたいだよ?」

「俺らの手はいらないとか言いそうだな。そりゃ」

顎を撫でるの止めずにぽつりと「指輪の価値がわかりゃぁここの連中は小隊なんぞに遅れをとらねぇように武器を持って走り出しそうだ」と、笑い飛ばした。






その様子に聞き耳を立てていた青年が一人いた。姿は薄汚れていたが、磨き上げられた剣と濃い暗闇の色をした髪の毛は体に対して目立っている。

カウンターの向かい側にいる店主に金を渡すと、お礼もそこそこに店の外に出た。


人通りがなくなった道を町から出るように歩いていく。町を出るときは巡回しているものもいるはずなのだが、噂道理甘いらしく誰もいない。これは好都合だと口の端を上げた。


『ハルビちょっと楽しそうだな』

頭の中に響いた面白そうな声にハルビはそうだなと、心の中で返す。


「王国の指輪とか嫌な予感しかしないが、なかなか楽しめそうだな。いくぞフォネル」


魔物の息使いのする暗闇の中にハルビとフォネルと呼ばれたものは消えていった。

















お読みいただきありがとうございました。

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