第九話 エルモネ
キリのいいところできったので、みじかくなっています。
翌日、トゥルカナは依頼を受けに冒険者ギルドへと向かった。時刻は約8時ごろ、こんな朝早くに冒険者ギルドへ向かったのは意味がある。それは、ギルドから呼び出しが会ったからだ。昨日の風呂上り、女将さんから「 冒険者ギルドから呼び出しきてるよ、明日の好きな時間にきてくれ、だそうだよ」とつたえられ、こうしてきたと言うわけだ。なにも早朝に、と思う人はいるだろう。それには理由がある。理由はトゥルカナーー鳳凰時流雨等の性格が「相手を待たせるなら自分が待った方がいい」という性格だからである。しかし、これだけ聞けば「お、いいやつ」と思うだろう。だが、実はそうではない。トゥルカナはただ、自分が待たされるのが嫌なだけで、けっっしていいやつなんかではない。それよりも「自分がされて嫌なことを人にする方がもっと嫌」というだけである。ちなみにルナは、小さくなり、トゥルカナの頭の上にのっている。
閑話休題
冒険者ギルドの前に着いたトゥルカナは、扉を開けた。
開けてすぐ、昨日の受付嬢の前へと行き、呼ばれた理由を聞く。
「なんで私が冒険者ギルドに呼ばれたの?」
「そうですね、用件とすれば、トゥルカナさんをBランクまでランクアップすると言うことを伝えるため、です」
「ランクアップ?私はFランクになったばかりだよ?」
受付嬢はその質問に困った顔をして答えた。
「えっとですね。ギルドマスターが、「そんな実力を持った冒険者がFランクなんてもったいない!実践経験も問題ないだろう。フリーズキャット29匹討伐できたんだからな。問題があればもう死んでる。とにかく!トゥルカナをBランクまで引き上げろ!」ということを言ってまして、私達もそれはどうかとおもったんですが、基本的にギルドマスターの言うことを聞かなければいけないので」
…………それって大丈夫なのか?同じ冒険者で、不満に思う人はいるんじゃないだろうか?
「えっと、それって大丈夫なの?」
「えっと、その、うちのギルドマスターはちょっと………ですね、あは、は、トゥルカナさんになんとかしてもらうしか……」
つまりは考え無し、と言うことか、難儀だなぁ。って、私も大変じゃん!いっそのこと殴り込み(かちこみ)に行こうか。
「わ、かりました。では依頼を選んできます」
受付嬢から「ひっ」と悲鳴が聞こえたような気がするが、スルー。負の感情を抑えつつ、依頼を選ぶ。
「?この依頼、変だね」
一つの依頼を見て、トゥルカナは首を傾げる。
特殊依頼
依頼内容:エルモネをどかしてください
場所:ファースト家の屋敷
報酬:金貨10枚
ランクB
なにがおかしいって?依頼内容がおかしいのだ。エルモネを討伐してください、とかならわかるが、どかしてくださいと言うのはわからない。
まぁいい。これを受けよう。
「この依頼を受けたいんですが」
「これですか?ああ、ファースト家からの依頼ですか」
「ファースト家を知ってるんですか?」
「と言うより逆に知らないんですか?『ファースト』というのは此処一体を治める領主の名前ですよ」
なーるほど、ようは貴族さまってわけね。あそう。
「それにしても、この依頼、何処かおかしいんですよね」
「そうですよね。ちなみに何処が?」
「エルモネと言う魔物は、縄張り意識がものすごく強いんです。縄張り内に、エルモネ以外の生物が侵入すると、全力で排除しようとしますし、なにより、どかしてくださいっていうのがおかしいんです」
「なにがおかしいんでしょうか」
「エルモネは縄張り意識もそうですが、それ以上に一度決めた縄張りから頑固として離れようとしないんです。この依頼のようにどかしたとしても、必ずまた、元の場所に戻ってきます。なのでエルモネ関連の依頼は、普通討伐してくださいになるんです」
へぇ〜そうなんだ。確かにおかしい。でもま、受けることには変わりない。
「この依頼、お願い出来ますか?」
「はい、わかりました。っとついでにギルドカードを渡してもらえますか?ランクアップさせますので」
「わかりました」
とギルドカードを受付嬢に渡し、受付嬢がギルドカードを何かの機械にいれる。
「はい、ありがとうございました」
出てきたギルドカードをトゥルカナに入れる。ランクアップがFからBにランクアップしていた。ちなみにエルモネと言う魔物は、花に擬態したーーと言うより、花そのものであるーー魔物で、あたりに毒や麻痺など状態異常を引き起こす花粉をばら撒き、弱った相手を、根っこから養分を吸収する。普段は花と同じように、土にうもれているが、敵が近づくと、根っこを使って移動する。移動速度は遅い。ランクはB。と言う魔物だ。弱そうな魔物だが、恐ろしいのは此処ではない。恐ろしいのは花粉の状態異常のなる確率である。範囲が50mと広いくせに、なる確率が90%とほぼ間違いなく状態異常になるのだ。純粋な戦闘力では他の魔物に負けているが、殺傷能力では圧倒的に勝っている。そのため、エルモネは『近接殺し』と呼ばれている。近接殺しというのは、遠距離からの高威力の攻撃を得意とする魔術師にたいし、近接戦闘を得意とする戦士や騎士達を花粉によって近づれる前に封じ、そこからジワジワと殺していく、ということからついた異名である。ちなみにエルモネを戦士や騎士達で討伐した者はおらず、挑んだものは全員残らず殺されてしまった。まさに近接殺し。
「わかりました、ではいってきます」
そう言って冒険者ギルドをあとにした。門をくぐり、レラードを後にした。
目的地はファースト家屋敷であるーー。
ちなみにトゥルカナの頭の上に乗っていたルナは、トゥルカナの銀髪がさらさらでやわらかくて気に入り、そのままねてしまったとさ。