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孤高の魔術師  作者: 白緑
第二章 始まりの街レラード
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第五話 極楽亭

「さて、次は何処に行こうか」


草原を歩きながら一人でにつぶやく。時刻は三時ごろ。たまに吹く風が心地良い。特にこれと言った目的地もなくただ歩く。


「ん?あ、道だ。結構広いな。馬車とか通るのかな?」


トゥルカナはある程度整えられた道を歩き始める。道は結構広く、馬車は余裕で通れそうだ。


「道をたどって行けば村とか街いけるよね」


とは言っても、今日中にたどり着くのは難しいだろう。あと四時間程したら日が沈む。


「はぁ〜。どうしようか。野営の準備もしなていしなぁ」


食糧は手に持っているカバンに入っているため食べ物は困らないのだが、野営の準備はしていないため、日が沈んだらなにもできなくなってしまう。どうしようかと考えていたトゥルカナの耳に、車輪の音が聞こえてきた。

驚いて振り向いて見ると、それは馬車でこちらに向かってきている。


「どうしたんだい?こんな所で」


トゥルカナの横で止まると、訪ねてきた。

薄桃色のツインテールで、眼帯をした女の人だった。


「ええ。特に何も無いんですが、この道をたどっていくと街につけるかと思いまして」


女の人はてを顎に当て考え込む。その間トゥルカナは女の人が答えを出すまでじっと立っている。


「よし決めた!お姉さん。乗っていかないかい?あたしもこの先の街に用があるんだ。お姉さんも乗って行けばちょうどいいしね」



「いいんですか?私が山賊や盗賊でないと決まったわけではないんですよ?」


この世界にも当然山賊や盗賊は存在する。主に集団で行動し、荷車や馬車などを襲う。女子供はさらい、女は散々犯してから奴隷に。子供はそのまま奴隷にして売りさばく。

トゥルカナは安易なことをして攫われても知りませんよ?と言っているのだ。


「いやいや、お姉さん冗談はよしてくれよ。

盗賊や山賊は集団で行動するし、こんな所で堂々と歩いているわけないじゃないか。お姉さんは魔術師だろう?」


「ええ。まあ」


「だったらぜひ乗ってくれ。盗賊が出たら私じゃたちに負えない。でもお姉さんなら追い払えるなり殺せるだろう?護衛がわりになるからさ」


ここまでいってくれてるのに断るのは失礼だなと考えたトゥルカナは言葉に甘えることにした。


「そうですね。じゃあ御言葉に甘えて。よろしくお願いします」


言われた通りに馬車に乗り込み女の人の後ろに座る。


「はいよ。それにしてもお姉さん。綺麗だね。思わず見惚れてしまったよ」


「ありがとうございます」


「お姉さん。普通の魔術師と違うね」


「違うとは?」


なにかおかしいところがあるだろうか?とかいろいろ考えてみても何処が違うのかわからないため素直に聞くことにした。


「魔力は誰でももっているが、扱いこなせる人は少ないんだ。だから魔術師は自分が選ばれた存在だと勘違いをして偉ぶるんだよ」


「なるほど、それはおかしいと思います。魔力は誰でも練習すれば扱いこなせるもので、なった人というのはたまたま使えただけです。勘違いをして偉ぶるのはおかしいと思いますけどね」


そう言ってトゥルカナは女の人にほはえむ。

女の人は馬車を走らせ、はにかむ。


「お姉さんはやっぱり違う。っと自己紹介が遅れたね。あたしはアイナ。武具商人をやってるよ。よろしくね」


「私はトゥルカナと言います。よろしくお願いします」


自己紹介が済んだ二人は談笑に入る。この前いた街がどうとか。酒場の酔っ払いがどうとか。武具の仕入れ先の鉄が無くなったとか。ミリアのこととか。楽しく話している内に街についた。


「お姉さん。ここがレラードだよ。それじゃここまでだね。またね………っとと、お姉さん旅人だろ?これあげるよ」


「地図?」


「必要だろ?」


「はい。ありがとうございます。またお会いしましょう」


アイナと別れたトゥルカナは宿を取ることにした。やはり宿といえばお風呂だろう。お風呂付きの宿を探す。


「うおっ、可愛い!ねぇねぇお姉さん?オレらと遊ばない?楽しいよ」


男四人が絡んできた。まぁ、こんな容姿になってからこうなるだろうと思っていたが。


「すみません。今急いでるので」


そうして歩き出す。しかし、絶世の美女を逃すほど男たちは甘くない。


「まぁまぁそんなことも言わずにさ。夜の世話もするよ?」


ピタリと足を止め男たちへ振り替える。


「下衆が」


冷えきった声が辺りに響いた。男たちは三人はその声に呑まれ、後ずさる。が、残りの一人は苛立ったようだ。


「何だとこの野郎。ちょっと容姿がいいからって調子に乗ってんじゃねぇぞ!いいから来いってんだ!」


男はトゥルカナに掴みかかろうとする。しかし、其の手はトゥルカナに届くことはなかった。トゥルカナは無詠唱で《氷刀》を作り出し、男の首に当てた。


「それが貴方の本性ですか。ですが、やめた方がいいと思いますよ?じゃないと、死にますよ」


冷えきった声と殺気に当てられ、男はへたり込む。それを冷たく一瞥したトゥルカナは歩き出す。男たちはその後この街から出て行った言ったそうだ。

レラードの中心部に位置する広場の近くにお風呂付きの宿があった。名前は極楽亭。まぁ、その分お金も高くなっているが。


「すいません」


カウンターに向かい呼びかける。


「はい。いらしゃいませお客様。お泊まりでしょうか?」


「はい。一週間お願いします」


「…っ!はい。一週間ですね。金貨七枚となっております」


一瞬驚いたが、直ぐに立て直し、金額を提示する。お風呂があるからだろうか、一日金貨一枚とものすごくたかくなっている。


「金貨七枚ですね。えっと、はい」


アイテムボックスから金貨七枚を取り出し、カウンターにおく。


「確かに金貨七枚お預かりしました。どうぞこちらへご案内致します」


「ありがとうございます」


「こちらが大浴場と露天風呂になっております。ちなみに男女と別れておりますので御安心を。ご利用になる際はカウンターにお声をおかけください。タオルをお貸ししますので」


へぇ〜。露天風呂もあるのか。楽しみだな。

どんな景色が望めるのだろうか。内心ワクワクしながら案内に従う。

階段を上り、3階へ行く。3階は明らかに他と違い、金持ちが借りる部屋が並んでいる。その中でも奥に行くほどランクがあがっていく。案内が止まったのは一番奥の部屋だった。


「確かめるようなことをして申し訳ありません。お気づきになりましたと思いますが極楽亭はスイートルームと通常と別れております。金貨を払えるお客様には出来るだけランクの高い部屋に止まっていただきたいのです。

お客様はお金をお持ちのようなのでこのようなことをさせていただきました。御容赦下さい」


頭を下げながら話す案内に、トゥルカナは溜め息をつく。


「はぁ……わかりました。早く鍵を渡してもらえませんか?」


バッと顔を上げ、顔を綻ばせ、鍵を渡す。


「あ、ありがとうございます!それではおくつろぎ下さい!」


再び頭を深々と下げると階段を降りて行った。トゥルカナはもう一度溜め息をつく。

それから部屋の鍵を開け、スイートルームの中に入って行く。


「いい部屋」


白を基調とした清潔感溢れる広々とした部屋に天蓋付きのクイーンサイズのベッド。窓からは夜景が望め、煌びやかな光が街に灯っている。絨毯が引いてあるためもふもふで暖かい。


「うん。お金も有ることだしスイートルームで良かったかもしれない」


ベッドに座わる。ベッドはふかふかで座り心地がいい。


「着替えて寝ようか。夜も遅いし」


腰を上げ、鍵をかけてからネグリジェを取り出す。オートクチュールで作らせたような仕上がりだ。これを最初に見たときは随分嘆いたものだが今となっては可愛いとしか思わなくなった。どうやら鳳凰時流雨等(ほうおうじるうら)のジェンダー・アイデンティティーに若干?のズレが生じているようだ。無論、本人は気づいていないため嬉々としているが気づいたときには悶えることだろう。


「〜♪」


着たネグリジェが自分によく似合っているため上機嫌だ。


「さぁ〜て。寝るかな」


ベッドに横になり、布団をかぶり目をつぶる。直ぐに睡魔が襲ってきた。それに身を委ね眠りにつく。いい夢がみられるといいなと思いながらーー。







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