第三話 捕食者
「これを防ぐか、人間よ」
あたりに威圧的な声が響いた。
それは木と木の間から現れた。
それから溢れ出る空気そこらの魔物とは桁が違う。
「防がなければ死にますよ」
「それはそうだな」
表面上は平静を保ちつつ、それを観察する。
性別は男性で40代くらいの容姿に血に濡れた白のローブを着ていた。
「名乗り遅れたな。私はリヴァーナ。この泉の守護者だ」
「トゥルカナさん!この泉には守護者なんていません!」
ミリアが私に訴えかける。
「そうだ。この泉には守護者なんていない。私がそう決めたからだ。勝手にな」
「それではリヴァーナは此処にはいなかったと?」
「そうなるな。一月ほど前に此処に来た。泉に群がる有象無象の雑魚どもは追い払ってやったがな。ちなみに三匹くらいは喰らった」
「それじゃラングベアがあんな近くにいたのは」
「十中八九私のせいだろうな」
なるほど。ミリアのリアクションからするとラングベアは泉付近に生息する魔獣。
そしてリヴァーナが此処に来てからラングベアは入口付近に逃げて来た。喰らったと言っていたからこの辺りの魔獣を食物にしている、つまりは捕食者。
ん?ちょっと待って。未熟な冒険者がこの森に入ったら魔獣に殺されて終わり。でも何人か魔獣に対抗できる冒険者がこの森に来たはず。そして泉までたどり着けたはず。
「一つ質問」
「なんだ」
「此処に来た人が少なくともいたはず。その人はどうした?」
「決まっている。私が喰らった」
「え?」
ミリアが素っ頓狂な声をあげる。魔獣や魔物同士喰らい合うことは理解できても魔獣や魔物が人を喰らうことは理解できないようだ。
やっぱり。喰らってたか。
「そして私達も」
「もちろん餌だ」
その瞬間空気が変わった。リヴァーナが纏う空気が、狂気的に。
《凍れ!》
後ろを向き、魔力を込めた言葉を放つ。
パキパキと音を立てて氷の道が出来上がる。
「ミリア。今すぐ此処から逃げて。速く!」
「っ!はい!」
ミリアは駆け、氷の道を走り出す。
「逃がすかっ!」
《氷の壁》
リヴァーナの進路上に氷の壁が現れ、ミリアのあとを追わせない。
「くっ」
リヴァーナは氷の壁にぶつかる前に、バックステップで躱す。
「進ませると、思ってる?」
「ククク。いいだろう。矮小な人間よ。まずは貴様から喰らってやろう」
両者ともに駆け、肉迫する。
《氷刀》
『こい!』
トゥルカナは氷の刀を作り出し、リヴァーナは鉄の剣を手元に手繰り寄せる。
そして、打ち合う。
「くっ」
「ぬうっ」
一度鍔迫り合いになり、そして離れる。
「ハッ!」
「ふん!」
再度近づき、そして打ち合う。何度も何度も刀と剣がぶつかり合い、リヴァーナの鉄の剣が、真ん中から折れる。
「はぁ!」
「ちっ」
トゥルカナはリヴァーナの首を狙って刀を振るう。リヴァーナは氷の刃を、バックステップで躱す。
「本気だしたら?」
「そうだな。《炎弾!》」
リヴァーナの上に直径二十cmほどの炎弾が八つできる。これが、魔法。
「これが?」
「そうだ。此処に来た奴らをこれで葬った」
リヴァーナが、トゥルカナに向け、《炎弾》を放つ。
トゥルカナは避けず、目を閉じ、そのまま立っている。そして、直撃する。ドゴンと音を立てて地面がえぐれる。
「終わりか」
リヴァーナは、ローブをはためかせ、踵を返す。
「誰が?」
「なにっ!」
燃え盛る炎の中から無傷のトゥルカナが出てきた。身に纏うローブも焼けておらず、焦げてすらいない。魔法はイメージ。四つの氷の槍。
「貴方の本気がどの程度か見てみたけれど、それだけ?」
トゥルカナの頭上に氷の槍が四本生まれ、リヴァーナの四肢を撃ち抜き、地面に縫い付ける。
「ぐ、がぁ!」
トゥルカナはリヴァーナへと歩く。
「これ程までのアイステンペスト。なぜ無詠唱で使える!?」
トゥルカナは答えず、リヴァーナに近づく。
そして独り言のようにボソッと呟く。
「ありがと。私が大抵の魔法は無詠唱で使えることがわかったから。もう眠っていいよ」
「なにをっ!」
トゥルカナは微笑み、
「この森の場合の捕食者は貴方だけれど、この場合の捕食者は私だったわね」
「ぐ、ぁ」
生み出した氷刀でリヴァーナの心臓を突き刺した。
刀を抜く。するとリヴァーナの死体はさらさらと崩れ、消えた。その場にあったのは紫色の結晶だった。教えてもらった薬草を一応すべて取り、トゥルカナは急いで森を抜ける。草原に出て、岩に座っているミリアの元へと駆け寄る。
ミリアはトゥルカナを見ると、飛びついて来た。
「トゥルカナさんっ」
「ちょっ」
抱きつかれたトゥルカナはなんとか踏み止まり、倒れずにすむ。
「よかったです!トゥルカナさんが無事で。わたし、トゥルカナさんが死んじゃうと思ったら、うっ、うっ」
「はぁ、私はそんな簡単には死なないよ。それより、はい。薬草」
「あ、ありがとうございます!」
「いえいえ。どういたしまして」
薬草を渡したことでやっと離してくれた。
「じー」
「?」
なにやらミリアが私をじーっと見てくる。何かついてるかな?返り血は浴びてないしなぁ
「うん。やっぱりでかいですね」
そう言ってなんと屈んでる私の胸を鷲掴みにして来た。
「ひゃあ!ちょっ、なにを、んっ。や、やめ、ん、あうっ」
そしてミリアはなにを思ったのか掴んでいる胸を揉みしだいた。私は変な声が出ないように耐えたが、途中からしたからすくうような揉み方に変わったため、
「ひゃあ!」
変な声が出てしまった。
しばらくして満足したのか離してくれたが、私はぐったりと仰向けに倒れてしまった。
「ふっふっふっふ」
ミリアは私の上にまたがり、胸に顔を埋めた。
「えっ?ちょっとミリア!どきなさい!はなしてー!」
「やわらか〜い。し〜あわせ〜」
ミリアは埋めたまま、柔らかさを味合うのだった。
はい。白緑です。
異世界を三人で旅する+aにも同じような質問をしたと思うんですが、ミリアを連れて行くか迷っています。
二話の中に無理しなくていいよって言いたいと書いたと思うんです。元々父親は楽させたいから無理してわけでして、このまま返してもまた無理すると思うんです。
それで思い浮かんだのは、ミリアを連れて行き、無理させないようにする。
ミリアを連れて行かず、お父さんは鉱夫でミリアは花屋かなんかを営み、ともに働く。というものです。作者としてはどちらも良く、迷っています。
ご迷惑でなければ、皆さんに選んでいただきたいと思います。
1 連れて行く
2 連れて行かない
自分で作ったキャラのその後を決められない作者で申し訳ありません、よろしくお願いします。