第一話 鳳凰寺流雨等もとい、トゥルカナ
おはこんばんは。白緑です
今回はなんと女主人公です。
いや〜こんな物語書いてみたかったんですよね実は。相変わらずのチートです。
まだまだ若輩者ですが、どうかみなさんよろしくお願いします。
「どうしてこうなった……」
森に響くのは透き通るような綺麗な声。嘆いて見ても誰も答えてくれる人は居ない。
鬱蒼と生い茂った木々に日の光が閉ざされ、陰鬱とした森に好んで近づくひとはいないだろう。
「とにかく、状況整理しよう。えっと・・・・・・・
遡ること数時間前ーーーーー
「あーーあちぃ〜〜〜」
焼け付くような日差しの下、鳳凰寺流雨等は屋敷の縁側で嘆いていた。
「アイスでも食うか。なにがあったかな?」
縁側を離れ、台所にある冷蔵庫へと向かう。
「俺一人なのに、この屋敷は広すぎないか?」
部屋の中を歩きながら、ポツリとひとりごちる。
そう、鳳凰寺流雨等ーーまぁ、俺なんだが、何処かの御令嬢やら貴族やらが住む、無駄にでかい屋敷に一人で住んでいる。
なぜ一人なのかって?それは、俺の父親はどこぞ外交官で、母親はどこぞの社長だ。そのために金は腐る程ある。久しぶりに二人とも休みが取れ、二人だけで海外へ旅行へ行くため飛行機に乗ったんだが、その飛行機が墜落。乗客全員が死亡という悲惨な事故に巻き込まれ亡くなった。この屋敷は父親と母親と俺の三人で暮らしていたんだが、二人とも亡くなったために一人で暮らしている。
その時の遺産が物凄いことになっており、遺産相続先として、俺に白羽の矢がたった。
その遺産で俺は一生遊んで暮らせるだけのお金を手にした。
それでこの通りのぐだーっとした生活を送っているってわけだ。
といってもたまに道場とかに通って鍛えてはいるが。
台所に着き、冷凍庫を開けると、
「………魔法陣?」
そう、よくファンタジーものの小説に出てくる魔法陣が刻まれていた。
本来ならここで扉を閉めるはずなのだが、この時の俺はアイス欲しさのために、全く疑問に思うことなく、手を伸ばした。
魔法陣に指が触れた途端、網膜が焼け付くほど強烈な光を魔法陣が発した。そして俺はその魔法陣に吸い込まれた。
「うーん」
鳥の鳴き声で目が覚めた。
ゆっくりと瞼を開ける。目に飛び込んできたのは、日光を遮るように伸びた樹々の枝葉。葉と枝の間から漏れる光が心地良い。
「じゃなくて!」
急いで飛び起きる。
すると、視界の端に大きな双球がプルンっと揺れた。ボールか?いや、この位置は、胸の位置だ。
「………………」
状況がうまく読み取れない。とにかく、自分の姿をみよう。何処かに池とかないかな?
あたりを見渡し池を探す。
「あっ、あった」
少し離れたところに開けた場所がある。その真ん中に泉があった。
泉へと駆ける。
「どれどれ」
自分の姿を確認するため泉を覗き込んだ。
「なんっ、だ、と!?」
水面に写っていたのは絶世の美女だった。腰まで伸ばした銀髪は、風が吹くたび風にたなびく。
キリッとしまった顔は美しく、万人を魅了するであろうその瞳は青色で怪しく蠱惑的だ。
フード付きの黒いローブを身に纏ったその姿は歴戦の魔術師を思わせる服装だ。ローブのしたからでもわかる豊かな胸はとても大きい。それでいて形は崩れていなく、美しい。
くびれもできていて、スラリと伸びた手足は透き通るように白くしみ一つない。手には銀色の杖を持っている。勿論初めて見るが、長年使い込んだ愛用の杖のように手に馴染む。
ハッ!?いやいや、見惚れてしまった。
というかこれ本当に俺か?確かにさっきから喋ってるが、聞こえてくるのは女性の声だ。
「さっきからギャーギャーうるさいな。というか、絶対ここ地球じゃないだろ」
あーさっきから喋ってるが、どうにも違和感があるんだよな。なんかこう、男が女みたいな喋り方するような………
「まさか」
はは、いや、そんな馬鹿な。だって俺男だぜ。まぁ、今は女だけど。あーほら男って思うだけで違和感が。
「どうなってるんですか」
今、なんていった?
………あぁ、私って私って
がくりと膝をつく。もう、ダメかもしれない。心の中でも女性の喋り方してるし。
そうだ名前!
「思い、出せない」
此処にくる前のことは思い出せるのに名前が思い出せない。
なぜなんだろう。
というか、此処どこ?
見たことがない植物ばかりだし、地球じゃないってことは、異世界!?しかもなんか体が軽いし!
「なんてファンタジーな」
でも、前の名前って男の時の名前だよね。ということは、よし。新しく考えよう。
「異世界ってことは日本の名前じゃあ不自然だから、うーん。そうだなぁ〜」
サシャ、違うな。ロクサーヌ、違うな。ソフィア、違うな。トゥルカナ、うん。これだ。
「私の名前はトゥルカナ」
よし、決まった。しっくりくる。
きゃあぁああぁ!!!
「っ!悲鳴!?」
悲鳴を聞いた途端、トゥルカナはその方向に駆けた。とんでもない速度を出すが、今は気にしてはいられない。
とにかく速く、速く!
「っ!開けた!」
森を抜けると、草原に出た。
少し離れたところに魔物に襲われている人が見えた。
「まに、あえっ!」
走る速度を上げる。
それでも間に合わず、魔物の腕が振り下ろされる。
「やぁ!!」
トゥルカナは持っていた杖を魔物に投擲する。
杖は真っ直ぐ、信じられない速度で魔物に飛んで行く。
少女に振り下ろされる直前、魔物が吹っ飛んだ。
「え?」
少女はポカーンとしている。トゥルカナは走って少女の前にしゃがむ。
「大丈夫?どこか痛くない?」
「………………」
少女はトゥルカナの顔をじっと見つめ、ボーッとしている。その顔はどこか赤い。
「大丈夫?」
「ひゃい!」
少女の肩を持って揺すると変な声が少女からこぼれた。
「…………ひゃい?」
「あ、あのあの!た、助けていただきありがとうございます」
少女は立ち上がり、頭を下げる。
「いいえ、どういたしまして。よいしょっ」
杖を拾って立ち上がる。
「さっきの投擲って何か魔法を使っているんですか?」
「いいえ、使ってないけれど」
「とんでもない馬鹿力ですね」
「うっ」
少女の言葉が胸に刺さる。そうだよね。普通の女ってこんな力もってないもんね。
ん?魔法?
「魔法?この世界には魔法があるの?」
「あれ?ご存知ないんですか。ええと、ということは、ああ、流れ者」
「流れ者。どういう意味?」
「確か、別の世界からやってきた人を表す言葉だったような」
なるほど。
内心頷く。
でもよかった。変に思われなくて。
「ああ、魔法でしたね。魔法というものは、幾つかの属性で別れています。火、水、氷、風、土、雷、毒、闇、光、時で、稀に、召喚、回復、空間、精神、振動、精霊です。召喚はそのまんまで、回復もまんまで、空間もまんま。精神は対象精神に直接魔法を当てることができます。振動もそのまんま。精霊も召喚と同じようなものです。その他の属性もそのまんまです。詠唱魔法のほかに魔法陣というものがあるんですが、これは使える人は少ないです。その他に錬金とかあるらしいんですが、ここ150年の間に使用者が現れなかったために失われた魔法と呼ばれているようです」
なるほど、簡易的な説明をありがとう。
「その魔法ってどうやって使うの?」
「魔力を消費して使います。魔力の量は個人差がありますが、誰でも少しは持っています。魔法の強さですが、魔力の量によって変わります。でもそれは少ししか変わりません。
魔力の強さはイメージによって変わります。
どれだけ明確なイメージを持てるかどうかで魔法の強さが決まります」
曖昧だ。
イメージ出来なければ消費した魔力の分の威力で。明確なイメージが持てれば、さらに上がると。そういうことか。
「ありがとう」
私が微笑むとこの子は顔が赤くなる。私にはそれがわからない。
「えっと、あの、お名前をよかったら教えてくれませんか。あぅ」
あはっ、また赤くなった。可愛いなぁ。
「私はトゥルカナ。よろしくね」
「あ、はい!ミリアです。よろしくお願いします!」
これが私と彼女の出会いだった。
少し展開早かったかな?
大丈夫だよね?