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「文学新人賞」裏取引大合戦(3)

 次に大衆文学社でテープを録音していた人から弟子全員で話を聞くことになった。しゃしゃ丸の話ではこの人は選考会のひどい現状を目の当たりにして、このままではいけないと思いテープで録音していたとのこと。彼に会って、僕はすぐにピンと来た。六年前、僕に受賞したことを伝えてくれた山田さんであった。


「私は大文社の職員として、大衆文学新人賞に昔から関わってきました。昔は真剣に議論していたものです。ところがあるときから自分の弟子に早く新人賞を取らせる為、他の人の弟子に新人賞を与えてしまうようになりました。


マジかよ…。僕は腐っていると思った。


「これでは日本文学がダメになると思った私はこの事実を一人でも多くの人に伝えるべく、密かに記録を取っていました。そして、一年前に読者のためにと思い、車車車先生と新興出版に相談してみました。すると、彼らはこれを必ず本にして、全て暴いてみせると約束してくれたのです」


「今も大文社で仕事を続けておられるんですか?」


「いえ、もう辞めましたよ…四年前に。いや、辞めさせられたんです。このとき、新人賞選考の腐れきった現状に多くの人が不満を持っていました。そこで私の上司が不満を持っている人に声をかけて五〇人ほど集めて、この現状を暴露しようと密かに計画を立てていたんです。しかし、あと一歩のところで会社側に計画がばれてしまい、計画は失敗に終わりました。この計画の中心にいた十名は辞めさせられ、残りも全員地方へ転勤させられました。その後、会社側は選考委員を総入れ替えし、過去との決別を社内に宣言しました」


 これでまた話がつながった。これなら三年前に急に選考委員が総入れ替えしたのも納得できる。このとき、大文社は「中堅の新選考委員四名が新人文学賞に新しい風を吹き込みます」なんて最もらしいことを言っていたけど、どこか不自然だった。普通、選考委員は出版社と三~四年契約する。


 ところがこのとき、三人が契約途中で選考委員を辞めたのである。そして、兄さんを含めて四人の中堅作家が選考委員に抜擢されたとしたら、彼らは大文社のイメージアップに利用されたことになる。


「しかし、大文社だけよくなっても他社が変わらなければ意味がありません。そこで私達は他社の新人賞に接触したり、他社にもぐりこんだりしました。そう言う訳で今は新興出版でお世話になっています」


 彼の話では編集員が出版社を渡り歩くのは別に珍しいことではないらしい。彼らはそれらを逆手にとって、暗躍していたのである。そして、若手や中堅作家を少しずつ味方につけていった。また、今回の事件とは関係ない新興出版などを味方につけて「文学新人賞裏取引大合戦」を出版するに至ったようだ。


 調べれば調べるほど明るみに出る真実。でも、事件の中心にいた当時の選考委員や四大出版社はそろって否定を続けた。もし、中心人物のうち、誰か一人でもいいから本当のことを話してくれれば…。彼らは火災原因を無視して、ただ火を消せばいいと思っている。そんなので疑惑の火は消えない。


 九月も終わり、すっかり秋らしくなった。いつもなら一年で一番落ちつく季節なのに、この年はまったく落ちつくことができなかった。車車車の本はわずか三ヶ月で百万部の売上を出した。


 世論の関心の高さが売上に見事に反映されていた。それに引き換え、先生はのん気に一ヶ月も毎年恒例の旅行に出かけていた。年を取ると面の皮だけが厚くなるのだろうか?

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