「文学新人賞」裏取引大合戦(2)
しかし、このままではいけないと思い、僕は兄さんや姉さんと話し合い、しゃしゃ丸を呼び出して弟子だけで話をすることにした。とりあえず、弟子だけで白黒をつけようと思ったのだ。僕らはホテルの一室に集まった。
「まず、テープを聞かせてもらおうか」
兄さんが口火を切った。しゃしゃ丸はみんなにテープを聞かせた。テレビでは流せない実名や加工されていない肉声がそのまま流れた。
確かにその名前は全てが文学界に関わっている人だ。その中には先生の名前も出てきた。何よりそれぞれの肉声が聞いたことのあるものばかりであった。それこそ文壇の第一線で活躍されている大先生達ばかりではないか…。
「テープはこれだけではありません。まだ、他にもあるんですよ」
僕らは他のテープも食い入るように聞いた。テープを聞けば聞くほどショックは大きくなるばかりであった。先生にこんな一面があったなんて…。
『御金持先生、あなたも大変ですね。三つの新人賞の選考委員を兼ねているから、弟子は大文新人賞しか応募できない。だから、弟子も一年に一回のチャンスに必死になるんじゃないですか?』
『まあ、そうですね。でも、それはどうにもならないこともある。まあ、越前は三年連続最終選考に残ってくれたので、今年は水谷先生と持田先生と山下先生にお願いしましたよ。そのかわり、カシオペアでは水谷先生のところの弟子、文芸では山下先生のところの弟子、小説界では持田先生のところの弟子を推薦しないといけません。平川先生、そんなわけで今回の小説界はよろしくお願いしますよ。去年は先生がお願いした弟子を支持したんですからね』
『わかりました。ところで先生は来年からは文芸と小説界の選考委員を辞めると聞きましたけど…』
『まあ、歳には勝てないということですよ。残念ですけど…でも、カシオペアはもうしばらく続けますよ』
このテープを聞いて、僕は大きなショックを受けた。新人賞は選考委員の厳正かつ公平な視点から選ばれていると思っていたのに…。これを談合と言わずに何を談合と言うのか。今どき建築業界でもこんなコテコテの談合はしないぞ。
「ついでにこれを見て欲しいんだけど…。実は俺が大衆文学新人賞の選考委員をやることになったときに、こんな書類をもらったんだ」
兄さんは僕らにその書類を見せてくれた。
書類には『世間の目が大変厳しくなっております。選考には私情を持ち込むことなく、厳正かつ公平な視点から行われますよう、お願い申し上げます。もし、約束を守っていただけない場合はこちらから一方的に選考委員を解任することがございます。 大衆文学社 大衆文学新人賞係』と書かれていた。
「これを始めてみた時は当たり前のことを何でわざわざ文章で伝えるのか…不思議に思ったよ。でも、車車車の話を聞いて、この書類の真の意味がわかったよ」
兄さんが納得したようにつぶやいた。これだけ証拠があれば、しゃしゃ丸の言っていることが紛れもない事実だとわかる。兄さんも姉さんも驚きを隠せないようであった。




