表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/47

「文学新人賞」裏取引大合戦(1)

 この夏、文学界を大きく揺るがす本が出版された。その名も「『文学新人賞』裏取引大合戦」と言う実にセンセーショナルな物。作者は「車車車」で出版社は新興出版。


 かつてのように自分への関心を高めたいがための行動かと思ったが、どうやらきちんとした事実に基づいて書いているようだ。しかし、今いち真実味に欠けるところがあるし、これをうのみにできない事情があった。


 一〇年ほど前から、小説家の中で後継者育成のために弟子を取る者が増えた。しかし、公平性の点から自分が担当している新人賞には自分の弟子を応募させることができないジレンマを抱えていた。


 弟子が優秀であれば、何もしなくても少ないチャンスで確実に新人賞を取れるだろうが、そうでない弟子も数多くいた。そこで裏取引が横行する土壌が生まれる。


 例えば、弟子を持つAとBと言う作家がいるとする。AにはCと言う弟子がいて、BにはDと言う弟子がいたとする。それぞれの弟子はそのままではとてもじゃないが新人賞が厳しい。


 そこでAとBは密約を交わす。Aが担当する文学賞でDに新人賞を与える代わりに、Bが担当する文学賞でCに新人賞を与えると言うものである。僕はそんな馬鹿なことがありえるはずがないと思った。


 そもそも、文学新人賞は一人で選考するものでなく、三~五人で選考するものであるから一人でどうこうできるものではない。初め、多くの人がこの話はうまく作られた作り話だと思っていた。


 しかし、彼はこの本を出した後、精力的にニュースやテレビなどに出演して、この本の内容は紛れもない事実だと言っていた。そして、いつもこのテープを流すのであった。


『これは内容的に少し厳しいが、新人賞を与えればきっと売れるでしょう』


『そうですね。今、世の中は無名の新人を求めてますから、いいんじゃないですか? それに今年は先生が最終決定権を持つ年ですからね。やはり、××先生と取引をしたのでしょう』


『△△さん、どこで聞き耳をたてられているかわからないんですよ』


『あ、すみません』


『それにしても××先生の所はもう一人の弟子もここまで残ってますね。こっちの方が応募暦も長いし、内容もいいからこっちを新人賞に推したいんですよ』


『でも、あと一人は○○先生のところの◎◎の作品を通さないといけないんですよ。そうしないと私のところの●●がカシオペア新人賞をもらえませんからね』


『まあ、××先生も考えたよね。一人ぐらい弟子にしたばかりの奴を受賞させないと怪しまれるなんて…。でも、かわいそうですよ。結果として、もう一人の弟子は入ったばかりの弟子に追い越されるわけでしょう』


 ここでテープは終わり、その後は必ずしゃしゃ丸がコメントする。


「これは僕が大衆文学新人賞を受賞したとき、選考会で実際にあった会話です。このテープはこれを不快に思う大文社の元社員がこっそり録音したものであります。こんな選考のせいで、僕は華々しい文壇デビューをしたものの、その後うまくヒット作を作れずに今に至るわけです。それはそうですよ。僕は大した才能もないのに無理やり才能があるように仕立てられたんですから…」


 その後、アナウンサーがテープ入手の詳しい経緯やこれに関わっていた先生方についてどう思うか聞いたり、文学界も政治の世界のように汚い取引をすることへの驚きをあらわにしたりするのであった。このようなテレビを何度も見るうちに、誰もがこれは紛れもない事実であると思うようになった。


 それに比例して、本の売れ行きは爆発的に伸びた。七月に出版された本はわずか二ヶ月で五〇万部も売れたのである。そして、投資が投資を呼ぶかのように、売上が売上を呼ぶ状態になった。それがこの事件の信憑性を高めることになった。


 もちろん、この選考に関わった先生方はこのテープは巧妙な作り物だとか、偽物であると否定した。もちろん、御金持好先生もきっぱり否定している。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ