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頼りない妹弟子

 十月末、何とか大衆文学新人賞への応募作品を仕上げた。今回は「生徒と教師の壁」と言う恋愛小説を書いた。別にもう、新人賞を取らなくても十分活動できるだろうし、もし二次選考までに落選するようなことがあれば恥さらしである。しかし、一小説家として、何が何でも新人賞が欲しい。ここは小説家として意地を張らなくてはいけないところだ。


 今月は官能小説の連載を終えたこともあり、いつもよりも余裕があった。余裕ができた時間は全て妹弟子への指導の時間に充てられることとなった。大村夕七は肥前あおいと言う我が一門風のペンネームを与えられ、みんなから「あおい」と呼ばれている。


 あおいはしゃしゃ丸と異なり、とても素直で従順なのでよかった。しゃしゃ丸のように人によって態度を変えることもなく、自分のような人に対しても礼儀を尽くすことを忘れなかった。仕事の飲み込みも早く、うまくいけば年内に僕は独立できそうだった。


 一方、しゃしゃ丸は新人賞受賞作が六〇万部を超える順調な売れ行きで、ますます傲慢になっていった。こうなるとさすがに兄さんや姉さんもしゃしゃ丸の本性に気付いたのか、「あいつはこのままではダメになる」とか「あいつは一門の恥さらしだ」とか言うようになった。


 兄さんは竜之介賞受賞後初となる小説を出した。「明智の野望」と言う歴史小説であり、読ませてもらったがなかなか面白かった。姉さんは「絶不調こそ最大のチャンス」と言う啓発書を出した。これもなかなかよかった。


 先生は「小説家を育てる仕事をして」と言うノンフィクションを出した。この原稿を読んだとき、先生はいつ書いているのか疑問に思ったほど、先生は忙しくしていた。しかし、さすがは先生。時間をうまく使って、定期的に作品を仕上げてくる。下根多羅部としてもきちんと「大人しい君が豹変するとき」と言う官能小説を出していた。


 この一門の活躍ぶりを見て、あおいは「ここに来れてよかったです」なんて現金なことを言っている。そのくせ、「私もこんな立派になれるんですか? 私にはそんな自信ありません」なんて、とても作家志望の人とは思えない発言もするのであった。


 本当で作家になる気があるのか疑わしいときもあるが、それでもしゃしゃ丸の高飛車な態度よりはよっぽどマシであった。


 一一月後半、急に寒くなった。急に寒くなったのに驚いたかのように木の葉は急に色付き、駆け足で葉が一斉に落ちてしまった。こんな年も珍しい。


 この年は珍しいことがもう一つおきた。急に先生が仕事場を移転させたいと言い出し、作家養成学校から歩いて二分ほどの所に仕事場が移った。兄さんと姉さんも呼んで一門総出で仕事場の引越しが行われた。もちろん、しゃしゃ丸も来ていた。彼とは極力目をあわさないようにした。

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