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Hand to Heart 【side A】  作者: 亨珈
猫の恋
99/169

99 性欲暴走中

 その晩、俺たちは初めてお互いの象徴を慰めあった。向き合って舌を絡めながらするそれは、単独でするのとは天と地ほどにも違うんだって判った。お互いの発する熱で更に心も体も燃え上がって、頭の中は真っ白になって。その後は重なったまま少し休憩しないと動けないほどだった。

 それから、少しだけ周のことが解った気がして、心の中でもう一度謝った。

 あの時、きっと周も俺のこと触って気持ち良くて、俺のことも悦くしたかったんだよな。だけど俺は怖いばかりで……。やっぱり、二人ともが求め合ってないと駄目だと思うんだ。いつか、近いうちにそんな相手が周にも出来たらいいなと思いながら、睡魔に意識を奪われていった。



 なんだかいつもよりあったかいな~なんて思いながら、ぽっかりと目を開けると、目の前に薄く開いた唇。

 心臓が飛び出しそうになったけど、身じろぎした俺には気付かなかった様子ですうすうと寝息が聞こえる。

 殆ど夢も憶えていないくらい熟睡してしまったらしく、薄ぼんやりと明るくなって来ている室内の壁時計はまだ五時半を指していた。

 昨夜のことを思い出して、顔が火照る。

 ああ~……やっちゃったよ……ついに。

 案外恥ずかしいとかあんまり感じなかったというか、それ以前に性欲が暴走したというか、夢中になって求め合って欲望に従ってしまった。

 ──でも気持ち良かったな。


 今でもまだちょっと信じられない気がする。

 目の前で瞼を閉じて寝息を立てているハンサムが、俺のこと好きだって言ってくれること。俺の理想の男子像そのものの智洋が、選りにもよって俺を一番に想ってくれているってこと。

 幸せすぎて、ちょっと不安にもなる。だから、少しでも近くにいたくて、曲げていた肘を伸ばして智洋の頬にそっと触れた。

 起きちゃうかな?

 じり、と体を近付けて、軽く唇を重ねる。手の平と唇から伝わる体温に安堵して、手を戻そうと引いた瞬間、ぐいっと腰を引き寄せられた。

 至近距離で開いた瞳が、まっすぐにこっちを見ている。射抜かれたように動けなくなり、密着している下半身がお互いに欲望を溜めていることに気付いてしまった。

 ま、まあねっ、朝の生理現象もありますしね!

 こればっかりは、前夜に抜いていようが関係ないわけでして……。

 たじたじになっているところを、開いた口に引き込まれるようにして、今度は舌を絡めて長い長いキスをした。


「……和明、エロくなったな」

 顎を伝う唾液を舐め取りながら囁かれて、「っぁ」と声にならない喘ぎが漏れる。

「智洋の、せい……じゃん」

 そのまま喉仏の下にまで這うように進んで行く口に身悶えすると、腰から下が擦れて堪らない刺激が背中を突き抜ける。

 恋もましてやエッチも何も知らない真っ白な俺を、こうしたのは智洋。

 言葉で言うより先に、降るようなキスで囁いて、それなのにそこから先には進まなくて。

 他のヤツに触れられて、ようやく気付いたんだ。

 どうせなら、智洋としたい。寧ろ、智洋以外とはしたくない。同じ場所を触られても、感じ方が違う。特に下なんて、その先を考えただけで萎えちゃったのに昨日はあっという間に登りつめてしまった。

 それに──いつか、その先をするようなことがあっても、受け入れられると思う。ま、まあ、こればっかりは、その時にならねえとわかんねえけどなっ!

 智洋は喉の奥を鳴らすようにして笑いながら、「やられた」なんて呟いている。

 俺、何かしたっけ?


 横になったままスウェットとハーフパンツをずらして、密着して硬く反り返っているものを智洋の手がまとめて掴んで刺激する。それが堪らなく気持ち良くて、息を荒げながらも夢中になって唇を吸い舌を伸ばした。

 ずっとこのまま続けたいような、早くこの熱を解放したいような、相反する思い。

 程なくして二人追い掛け合うように、手の平と腹を汚した。



 いつまでもそうやっていたら煩悩から逃れられそうになくて、二人で一緒にジョギングに出た。学園の敷地内とはいえ、グラウンド以外に中庭裏庭、立木の多い林みたいな場所も含まれるから、塀沿いの小道を一周するだけでも数キロある。ゆっくり走っていると日曜だというのに結構沢山の人が走っていて、その中にはウォルター先輩もいた。以前に聞いた通り浩司先輩は昼まで寝てるんだろうな。意外にも会長もいて驚いたら苦笑されてしまった。


 シャワーを浴びていつもよりゆっくり目に食堂に行くと、携が食事を終えたところだった。

 指定席に向かう俺たちを見て、目をパチクリさせながら上げかけていた腰をもう一度下ろす。

「朝、シャワー浴びた?」

「ん。走ってきて汗かいちゃったから」

 それもあるけど、昨日からのあれやこれやでちょっと生臭い気もするしな~……それはここじゃ言えないけど。

 ふうんと言いながら、席に着く俺と智洋を交互に見遣り、それからちょっと首を傾げて一人で頷いている。

 な、なんだろ……気になるんですけどっ。

 全部見通されてでもいるような気持ちになって、誤魔化すように食事に手を付けると、今度こそ携は席を立って出て行ってしまった。

 ──いつかちゃんと話さないといけないよな。

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