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Hand to Heart 【side A】  作者: 亨珈
猫の恋
89/169

89 バスの中でまたやらかしてしまいました


 俺が小走りにならなくていい程度の速足で歩いていたにも拘らず、ツワモノはいるもので。微妙に行く手を遮る感じで綺麗なお姉さん二人が辰と智洋に声を掛けてきた。

「ねえ、一緒にお茶しない? 奢るから」

 みたいな軽い口調に、少し歩調を落とした辰が応じている。

「えー、何処の客引きだよ? 俺たち高校生だから金ねえって」

「やあねえ、純粋にデートに誘ってるの。なんだったら財布はずっと仕舞っておいてくれて構わないわよ?」

 腰まである艶々のストレートヘアをワンレングスにしている美人に、軽くカラーリングしたソバージュのミディアムヘア。メイクもばっちり決まっているし、ボディーラインがくっきりしているスーツもお似合いで明らかに成人してますよね? って心の中で突っ込みいれてみる。

 年下が好きなのかなあ。まあ、確かに二人ともかっこいいですからねっ。

 でもちょっと複雑な気分……。

「へえー、俺実は振られたばっかで傷心中なんだけど、慰めてくれんの」

「やだあ、君でも振られることあるの! モチ、もう朝までだって慰めてあげるからさ、いこいこっ」

 食いついたよ、辰に!

 そうそう、辰を慰める会だからね~今日のカラオケは。

 もし行きたいなら、元々辰はビリヤード習う必要ないんだから行ってくれて構わないんだけど。

 ついでのように智洋の腕引くのはやめて欲しいよ……。


 後ろで様子を覗っていた俺と周だったんだけど、不意に「カズ」と声が落ちてきて、見上げるとなんだかにんまり笑っているんですが。

 なに? ちょっといやな予感が!

 とか思った瞬間に、ぐいっと二の腕を握られて速度を上げた周に強制連行される形で二人から離される。

「二人ともごゆっくりー! 俺ら先にバスんとこ行っとくな」

 ちょっと離れてからわざと大きい声で言い、空いている方の手を振ってその間も速度を緩めないもんだから、俺は人込みに紛れながら何とか付いて行くのに必死だった。

 声で気付いた二人が驚いた顔をして、智洋が慌てて何かしゃべってからこっちに来ようとしている。あ、腕掴まれて引き止められた。

 あれよあれよと言う間に視界にどんどん人が紛れて見えなくなってしまう。

「しゅ、周ってば……待ってよ、もうちょっとまともに挨拶して良かったんじゃねえの?」

「だーいじょうぶって。それより約束に遅れないように帰らねえと」

「そりゃそうなんだけど……」

 ちらりと腕時計を見ると、もうすぐ十二時。少しは待っててくれるかもしれないけど、そのバスで帰ってメシ食わねえと十三時からの約束破ることになっちゃうんだよな。

 浩司先輩とウォルター先輩に約束守らねえやつってがっかりされたくねえし、ここは周に大人しく従うか……。

 辰はともかくとして、午後から別の連れと約束があるはずの智洋のことは気になったけど、もう俺にはどうにも出来ない感じで。


 押し込まれるように迎えのバスに乗せられて、前の外出の時みたいに窓際に俺通路側に周って位置で腰掛けた。

 智洋間に合うかなあ……。

 今はまだエンジンを切っているマイクロバスの窓に顔をくっつけるようにして外を眺めていると、隣から腰に腕を回される。

「やあっと二人きりだな~」

 ひいっ! きたきたきた……耳に落とし込む超低音ボイスやめて! 耳が妊娠するからっ。

 無視してガラスに鼻をくっつけていたら、巻きついた手が何気なさを装って裾から中に入って素肌に触れた。

「ちょっ、やめろよ、」

 振り向いて嗜めようとしたら、目の前に周の顔があってですね……なんか、さっき……唇に柔らかいものが……ええ……。

 えっと──もしかしてもしかしなくても……漫画でよくあるあのパターンっすか。

 硬直してたら、「今のは俺悪くないよ?」って目を細めて舌で唇をちろりと舐める周。

 ふええっ!

 やばい、まずいっ、智洋との約束っ!

 涙目になって片手で口を押さえた途端、周がちょっと慌てた表情になる。

「えっ、マジ? んなに嫌だった?」

「うっ」

 違うんだけどっ、嫌って言うか困るって言うか、生理的には平気だけど、今の俺には約束守る義務があってですね!

 そんな感じに言いたかったけど、なんかもう嗚咽になりそうで懸命に声を殺していたら。


 肩で息をした智洋が、周の横の通路に立っていて。

「たーにーもーとー……っ!」

 それはそれはもう真っ赤な怒りのオーラをまとってこっちを睨み付けていて、そこで更に俺が泣きそうになっているのまで気付いちゃったもんだから、俺はもう後先忘れて全身で周を庇う羽目になってしまった。


死語連発。

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