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Hand to Heart 【side A】  作者: 亨珈
猫の恋
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69 お邪魔虫になりそうです


 自転車をゆったりと漕ぎながら、人通りの少ない一車線ほどしかない道路を走り続ける。

 伴美さんの話によると、浩司先輩と遊んでいた頃に卓球での勝負に負けて一週間ジョギングさせられたことがあるらしい。浩司先輩が利き手じゃない方でラケットを持ったにも関わらずに惨敗したので、悔しいけれど罰ゲームはきちんとこなしたんだとか。その時にウォルター先輩がジョグに付き合ってくれて家の場所を知ったらしい。

 因みに浩司先輩も、更に言うならみっくんも平日の早朝にはほぼ走っているらしく、みっくんとはそれで出会ったんだって。

 なるほど出会いってそんなとこにもあるんだなあ。

 それにしても三人とも早朝にジョギングしてるんなら、今も寮の外周とかもしくは山道とか走ってたりするんだろうか?

 いつも七時頃まで熟睡している自分を振り返り、反省してみたり……。

 毎日何かしら運動してるから、あんなかっこいい体つきしてるんだなあ。努力無しにただ羨ましがってるだけじゃ駄目だな、俺。

 応援団の練習が終わったら、俺も何か始めてみよう。部活があんな緩いのだし、このままだと贅肉付いちゃうかも! 何しろ通学距離殆どないもんなあ。清優までは結構距離あったから、毎日自転車で往復するだけでも運動にはなってたんだけどな。


 智洋は殆ど喋らず、俺と伴美さんは会話する間に随分打ち解けたような気がする。うちの姉貴より断然話し易くて優しいと思うぞ? それとも血が繋がってないからそう思えるんだろうか。

 二十分も経たない内に「ここだよー」と伴美さんがアスファルトに足を着けて止まった。

 白いフェンスに囲まれた洋風の門の向こうに、漆喰に青い洋瓦のお洒落な家が建っている。建坪は周囲と同じ程度の四十坪程度に見えるけれど、結構築年数は経っていそうな雰囲気のある建物だった。

 屋敷って程でもないけど、まさか執事とかメイドとか出てきたらどうしよう……。

 見回しても門の付近にはインターフォンらしきものはない。道路幅も広くはないので、仕方なく門扉を開けてから自転車ごと中に入ると、

「じゃあ私はここでお別れね。また来てね、カズくん」

「あ、ありがとうございました!」

 伴美さんがサドルに跨ったまま手を振り、自転車を漕ぎ出した。その背中に向けてお礼を言ってから、改めて二人で庭に自転車を停めた。

 原付が一台停めてあるけど、ウォルター先輩のかなあ? だとしたら在宅ってことで助かるんだけど。

 インターフォンはマイク機能のない古い型のだった。室内で鳴り響く音がしたかと思うと、暫く経ってからドアが開き、驚いた様子で金髪王子が俺たちを見下ろした。

「あれあれ、どうしたの二人して」

「突然すみません! あの、ちょっと浩司先輩に用事があるんだけど連絡取りようがなくて」

 ぺこりと俺が頭を下げると、その後ろで智洋が倣ってお辞儀をして「姉にこの家聞きました」と非礼を詫びていた。

「ふうん? 別にいいけど……。じゃあちょっと上がって行く?」

 首を傾げてから笑顔になり、中に入るように促される。上三段ボタンを外したシャツと黒のスラックス、普段着がこれとか凄すぎる。

 じゃあ、と足を踏み入れてから焦った。

 玄関の隅にピンヒールのパンプスがある!

 ちょ、これって彼女さんとか来てるんじゃね?

 焦って智洋に目配せすると、すぐに気付いてくれて二人して顔を見合わせて、靴を脱ぎかけた状態で固まってしまった。

 そのまま待ってくれている先輩も勘付いたのか、くすくすと笑みを洩らした。

「気にすんな? 恋人はここにはこねえし。連れだから」

 それでも女性であることに変わりはなくて、緊張しながら靴を脱ぎ、促されるままにリビングへと向かった。



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