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Hand to Heart 【side A】  作者: 亨珈
猫の恋
61/169

61 同士ゲットだよ!

 んー、と俺の頭に顎を押し付けたあと「はじめよっか」と先輩が離れていった。

 ななななんだったんだろう、さっきの……っ!

 助かったけどっ! 緊張したよーっ!


 深呼吸している間にキューを手にしたウォルター先輩もやって来た。

「ちょっとー、何今の~? セクハラ大会? 俺も参加する」

 わけのわからん大会作らないで下さい!

 にやにや笑っても爽やかに見えるなんて流石美形ですね!

「寂しそうな周くんには俺がいっぱい構ってやるから安心して?」

 背後に回ったウォルター先輩が、二人羽織りみたいに台と自分の体で周を囲い込み、また耳の中に話し掛けている。

「今日は何して遊ぼうか」

 そのバリトン反則です。周の顔も真っ赤っ赤だよ。


 まあ、終始そんな感じで、夕食前までビリヤードに興じたというか遊ばれたというか。楽しかったのは確かなんだけど。




 翌朝、一緒に登校した智洋と別れて自分の教室に入った途端にクラスメイトの難波辰史(たつふみ)が突進してきた。

「きりかわーっ!」

「おはよー難波」

「お、おはよっ」

 難波は艶々の黒髪をあちこちわざと跳ねさせた感じの髪型で色白の、智洋みたいなワイルド系な美形だ。大抵のやつとフランクに話すから俺も普通に会話はしているけど、そんな熱烈に歓迎されるほど仲良しではない。

「土曜の晩、浩司さんとタンデムしてたのなんで!? 超恨めし……いや羨ましいんだけど!」

「あー……」

 なるほど、俺と同じ浩司先輩のファン? な感じか。

「あーなー。ちょっと話があったみたいで、誘ってくれたんだけど」

「くそー! 浩司さん、今までリアに乗せたのウォルターさんだけだぞ? なんで霧川なんだよー! 俺が頼んでも乗せてくんねえのに!」

「マジで?」

 確かに「リアに乗せない主義」って言ってたけど……まさか金髪王子と同じ扱いとか。流石にそこまで特別扱いされてるとは思ってなくて、嬉しい反面怖くもある。

「ええと、難波は浩司先輩とどういう」

 首を傾げた俺の両肩をガシッと掴むと、真剣な表情の難波の顔が至近距離に寄って来た。二重で大きなつり目。あ、色素薄い瞳だなあ。綺麗だ。

「俺、【KILLER】の後輩」

 内容が内容だけに、トーンが落とされている。

「なる……」

 納得……んで、同じクラスにチームの人がいたのにも驚いた。だって難波って全然そんな雰囲気じゃねえし。どっちかというとナンパで、共学なら女子に囲まれている感じの見た目と性格してる。

「で、どうだった? 浩司さんのライディング」

 そのままの体勢でじとーっと見つめられて問われたから、俺はあの時自分が感じたことを素人なりにとつとつと話した。うんうんと頷きながら聴いてくれる難波が、「浩司さんいいよな! かっこいいよな!」と合いの手入れた瞬間には全力で同意し、二人して固い握手を交わし、名前で呼び合う仲になれた。

 難波が少し落ち着いたところで俺は取り敢えず自分の席に鞄を置くと、後はもうショートホームルームのチャイムが鳴るまで二人で熱く浩司先輩の素晴らしさについて語り合った。他のクラスメイトも、深夜に出掛けた事については興味津々だったみたいだけど、そうやって興奮状態の俺たちの会話に横入りも出来なかったらしく、しかも内容が大体判ったお陰でその後も同じような質問はされずに済んだのは有り難かった。

 後から登校してきた携と周の視線がちょっと痛かったけどな! 全然気にならねえ!

 ここに来て初めての同士ゲットだよ!



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