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Hand to Heart 【side A】  作者: 亨珈
猫の恋
56/169

56 好きという感情は

 深夜の帰寮なんて初めてでドキドキしたけど、バイクを駐輪場に停めてから慣れた手つきで玄関の鍵を開錠する浩司先輩にもびっくり。何処からゲットしたんですかその鍵……! みっくんが管理してるのかなあ?

「また明日」

 わしわしと髪を掴むように撫でてから足音を立てずに階段を上って行く先輩を見送ってから、俺も出来るだけ静かに部屋に戻った。

 こそこそと服を着替えていると、寝返りを打つ音がした。

「おかえり」

「た、ただいまっ。ごめん、起こした?」

「いや、うとうとしてただけだから」

「そっか」

 ほっと息をついて、俺も布団に入る。

 興奮が抜け切ってなくて目は冴えているけど、明日またビリヤードの約束あるし、寝転がるだけでも体は休息出来るっていうしな。


 それにしても……。

 シルエットしか判らないけど、通路を挟んで隣のベッドで横になっている智洋を見つめた。

 あ、あれ? もしかしてこっち見てる?

 布団から出ている腕がこっち向きに伸びていて、視線はともかく体がこっちを向いているのは確かだった。俺は仰向けのまま首だけそっちに向けて目を凝らしてみた。

 先輩は、尋ねなくても判るって言ってた……その意味。俺なりに、考えてみたり、した。


 男同士の付き合い方も色々あるのかもって、思って。

 でも普通に考えて、共学校に通っていたヤツが男相手に何度もキスしたりしない。

 智洋は確かに携に比べてはっきり物を言うし、感情表現豊かだけど、俺のことになると凄くむきになって怒るっていうのも、じっくり考えたらようやく判った。

 それにこないだのあの手、とか……舌であれやこれやするのって。

 周は、俺のこと恋愛対象として見てて「好きだ」って言われてて、色んなことされても、だからかなって何となく納得してたしそういう風に受け取ってた。

 だけど俺、智洋にも携にも軽く大好きとか言ってるけど、その意味は周から言われているものとは違う。

 線引きなんて、はっきりとは判らない。でも根本的に違ってるっていうのは感じる。周が、あの日視聴覚教室でしたこと……それをしたいと感じる相手が「好き」っていうのなら、俺の「好き」は違う。

 けど……じゃあ智洋は? 

 智洋からはっきり「好き」って言われてない……と思う。

 でも、きっとだけど、いくらなんでも普通はルームメイトってだけじゃあやらないようなこと、俺たちしてるよな。

 それが嫌だなんて勿論思ってないし、これからも智洋さえ良ければまたしたいって思ってる俺って……一体なんなんだろう。智洋が俺のことどういう風に思ってるのか以前に、俺の方こそ自分の気持ちが解らない。

 練習だってこっちが勝手に解釈してるだけで、本当のところはわかんない。

 

 昔から、そうだ。

 小等部の頃も、色気づいた周囲に釣られるようにして、皆で『気になる子』の話なんかしてた。中学校でも、綺麗だなとか可愛いなって思う子はいたし、だけどそれだけでそれ以上はなかったしなりようもなかった。携と出会ってからは、ただ二人で遊ぶのが楽しくて、携がそういう方面の話をしないから、自然に俺もしなくなった。

 結局、周りに合わせるためにしか、恋愛話したことなくて──体験談とか聞いてはいつか俺もって思うだけで、実践も何もなくて。

 だから判んないんだ。

 好きって何?

 俺、浩司先輩も携も智洋も好きだって断言できる。この気持ちはなんなの?

 たったひとつ確実なのは「俺に抱かれてえの?」って訊かれた時に「違う」と否定できたということ。勿論その逆もない。それはもうその瞬間に、自然と出てきた気持ち、本音だったから。

 それじゃあ、智洋は……どうなんだろう。

 先輩と同じように言葉ではっきり尋ねてくれたら判るのかな?


 どきどきと鼓動が高まってしまって、余計に目が冴えてきた。ふうーっと深呼吸すると「何かあったのか?」って低い声が聞こえてきた。


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