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Hand to Heart 【side A】  作者: 亨珈
猫の恋
16/169

16 ここは眼鏡男子クラブ!?


 入学式が月曜日だったせいでか、一週間が長かった。授業の方はひーひー言いながらもどうにかこうにかこなし、放課後は応援団の練習でくたくたになり、夢をみるゆとりもなく熟睡。楽しくも慌しい生活が続いた。

 何より毎日必ず浩司先輩に会えるのが嬉しくて嬉しくて。それだけで疲れなんか吹っ飛ぶ! と言いたい所だけどやっぱり体は疲れていたんだけどね……。でも一晩眠ればスッキリ取れる程度の疲労だし、苦にはならない。むしろこの時間が永遠に続いたらいいのに、くらいに思ってる。

 そんなこんなで土曜日。レッツゴー拍子など簡単なものをクリアした俺たちは、メインの演舞の流れを把握した後、午後三時には解散となった。

 うーん……微妙な時間。

 外出届を出せば校外に出てもいいんだけど、そこまでして遊びに行きたいわけでもない。実は初日に担任に提出したままの入部届けのことを頭の片隅に追いやったまま忙殺されていたので、折角だしちょっと部室に行ってみようかなという気になった。

 流石新しい校舎なだけあり、文化部にも全て小さいながらも部室が与えられている。離れみたいに校舎とは別棟なんだけど、普通の県立なら特別教室などを放課後だけ使える程度で備品の収納場所にも困るのにとても気前がいいんだなと思ってしまう。勿論、道具や設備はやっぱり教室に行かなければ使えないので、ミーティングや道具の保管場所として使われているらしい。

 今まで一度も参加していない俺には普段の活動場所が判らなくて、取り敢えずはと部室に顔を出すことにしたんだった。

 運動部は外に出ているし、殆どの部は教室に行っていて静かなんだろうなとやってきたら、結構ざわざわと人のいる気配がする。しんとしているよりいいかなとほっと息をつきながら、ドアに掛かっているプレートを確認しながら進んでいく。と、その時、

「この私の辞書に不可能の文字はなーい!」「あ、イチゾロ」「自爆!」「はい、失敗」

 一際大きな声、いや叫び声が聞こえ、びくっと肩を竦めて声の出所を探してみると、プレートには『TRPG同好会』──そう、俺の目的の部、いや部に昇格前の同好会だった。

 楽そうだし、ゲーム好きだからって選んだのヤバかったかな……。

 早くも後悔しつつ、それでも取り消すにしても一言声を掛けなければいけないので思い切ってドアをノックした。

「どうぞ」

 何処かで聞いたことのある低い声がして、俺はそろりとレバーを下げて扉を押し開けた。

「ようやく来たな、最後の一人が」

 さして広くも無い──とはいえ六畳ほどはあるだろう室内に、テーブルを囲んで生徒が五人座っていた。なんと全員眼鏡掛けてるし! ここは放課後眼鏡クラブですか!

 面長できついテンパを短く刈っているやつに、緩いウェーブのやつ、さらさらの真ん中分けのやつは色白すぎ、一人だけ丸顔のやつは上着の袖に手を入れて中華服みたいに着ちゃってる。全員銀縁眼鏡。回れ右したくなっている俺を、もう一人の声が引き止めた。

「軸谷の教え方はどうだ? 霧川」

 入学式、遠くから見上げるだけだった生徒会長さまが、俺のすぐ傍でにやりと笑っていた。

 腕も足も組んでいるけど、近くで見ると凄く背が高いのが判る。てか、座高見た感じ、丸顔君以外全員俺より高いです。どうなってるんだこの学校!

 それにしても……道理で聞いたことのある声だと思った。

「来るのが遅くなってすみませんっ、霧川和明です! 軸谷先輩にはお世話になってます。指導の仕方は解り易いと思いますっ」

 いっぺんに詰め込んだ返答になってしまったけど、これでいいのかな?

 そろりと会長を見ると、「そうか」と頷いただけだった。

「あのー、素朴な質問なんですけど……いいですか?」

 はい、と軽く右手を挙げてみる。

「ん? なんだ? そんなに硬くならずに座ればいい」

 示されたのって会長の隣のパイプ椅子なんですが。

 うへ~と緊張しながらも、その椅子に腰掛けて、鞄と制服を足元に置いた。実は練習着のジャージのまま来ちゃったのだ。

「ええと……生徒会長は執行部なんですよね? どうしてここに?」

 執行部もれっきとした部活動であり、通常は部室も与えられているはずだ。

 他四人の視線が俺に集まっているのを感じつつも、取り敢えず会長との会話に専念する。

「ああ、僕もここの会員だからな。暫定的には同好会長だが、全員揃ったので君らの中から新しい会長を決めたらいい。因みに僕は写真部にも入っているので毎日ここに来られるわけではない」

「はあ、そうなんですか」

 しれっと言ってのけたけど、執行部だけでも相当忙しい筈。なのに兼部してるとかってどんだけバイタリティーあるんですかっ。


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