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Hand to Heart 【side A】  作者: 亨珈
猫の恋
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109 体育会! 3

 でも、だから先輩たちあんな闘志満々なんだなあと納得した。

 今だってそれぞれの門のところで待機している先頭グループはめっちゃ張り切ってて、案の定ウォルター先輩は一番後ろで欠伸なんかしてだらっとしてるけどそれもまた様になってたりとかね。


『その前には様々な障害物が立ちはだかり、具体的に言うと二年生有志嫌がらせ隊による投擲網、指示書の入っているパン食い競争などですが、それらをクリアして学園内の何処かに存在する筈のそれを持ち帰らねばなりません。指示書にはそのものズバリの名前も書いてありません。インスピレーションの勝負となります』


 なんですかそれは。何だか体育会じゃないようなノリになってきてるんですが気のせいでしょうか。

 グラウンドには跳び箱十段と平均台も設置されていて、その脇には大きな網を手にした二年生が構えている。

 うーん……すげえなこれ。誰が発案したのやら。

 パーンという音と共に飛び出した先輩たちに、俺たちは応援団らしい応援をすることも忘れて腕と声を張り上げた。

 直接触れるのは駄目なのか、平均台の上に飛び乗った三年生目掛けて繰り出される邪魔な網。それでバランスを崩して落ちた人はまたラインからやり直し、無事渡り終えた人たちは跳び箱を越えて更にハードルも飛び越えて進む。で、指示書が入っているのは横に張られたロープにぶら下がるパン。当然口だけで取らなきゃ失格なわけだけど、そのロープを脚立に腰掛けて持っているのも二年生で、意地悪く揺らしたり上下したりと阻害する。

 こんな時に日頃の部活なんかの鬱憤を晴らしているのかも知れず、そこここで「いい加減にしろよ!」「後でおぼえてろよ○○!」「嫌だなー先輩、ゲームじゃないですかー」みたいな会話が繰り広げられている。シュールだ。

 そんな中、眼光鋭く後輩たちの嫌がらせの手を止めさせた浩司先輩と大野生徒会長が、いち早くパンをゲットした様子。

 もぐもぐとパンを咀嚼しながら中に入っている紙を引っ張り出したと思えば「ハズレだと~!」と浩司先輩はお怒りの様子。ハズレだと最初からやり直しらしく、憤然としながらもパンを頬張りまた門へと戻って行く。

 うう、先輩、がんばってください!


 拳を握って背中を見つめていると、「おいあれ」と近くの一年生が騒ぎ始めた。見ると、パンを食べ終えた会長が指示書を片手にこっちへ駆け寄ってくる。スウェットでもきっちり上までチャックを上げている会長流石ですねなんて見惚れていたら、伸ばした手をロープ越しに差し出された。

 周りのどよめきが凄い。

「来い! 霧川っ」


 ええ!?


「早く!」

 焦った様子はないけど、息を切らせて真剣に呼ばれて、反射的に手を伸ばしていた。

 ぐいと引かれたかと思えば、そのまま脇の下に手を入れられて向き合う形で抱き上げられる。

「え? ええ?」

「いいからジッとしてて」

 動転して暴れかけた俺を制して、耳元で囁かれる。

 あう、その声反則です……。

 へたへたと脱力したところを今度は膝裏と背中を支えるように抱き直されて、ますますギャラリーからはどよめきとも歓声ともつかないものが上がる。それを毛ほども気にせずに会長は駆け出し、落とされないようにと反射で首に両手を回してしがみ付いた。


『おお、一番はなんと我らが生徒会長ですね! さて、ではどんな指示だったのか役員席での協議に入ります』

 乱れた息で差し出された紙片を受け取り、それが役員席の教師陣へと渡され、目にした先生たちが会長の腕の中で目を白黒させている俺をじろじろと見回す。値踏みされているようなそれが不安で、これで失格だったら会長に申し訳なくて不安で会長の顔を見上げると、ふわりと笑みを浮かべてくれる。

 いいのかな、内容わかんないけど……。

「もう下りていいですよ」

 声を掛けられてそっと腰を落とした会長の腕の中からピョンと飛び降りるように地面に足を着けると、よしよしと会長が頭を撫でてくれた。

「付き合ってくれてありがとうな」

 目を細めて言われたもんだから、何もせずに黙って抱かれていただけなのにと恥ずかしくて、肩を竦めて舌を出した。


『お待たせしました。結果が出ました。学園長以下審査員ほぼ満場一致でOKが出ました。気になるお題は~』

 お、OKだったんだ!

 驚いて嬉しくてまた会長と顔を見合わせて笑った。

『わんこを抱っこ! でした。よってこの競技は白組の勝ちとなります』


 え。

 わ、わんこ……て、俺ですか?

 カチンと固まっていると、申し訳なさそうに会長がまた撫で撫でしてくれる。観客席は、赤も白も同様に盛り上がっているというか、悲鳴交じりの歓声が上がってる。

 いえ、あの。

 また犬扱いかよっ!

 それもあるけど……しまった……敵に協力してどうする俺!


 しょんぼりして持ち場に戻る途中では複雑な目で智洋か何か言いかけ、更に泣きたくなってしまった。

 応援団に戻れば浩司先輩も腕組みして苦笑してて、開口一番にすみませんと謝って土下座も辞さない勢いで最敬礼した。

「全く大野のやつ……確かに指示書通りだろうけどよ、敵陣から掻っ攫っていくなんていい度胸じゃねえか」

 それ認めるってことは浩司先輩も俺のこと犬扱いなんですねっ!

 うるうるしながら見上げていると、ああもうと嘆息して前髪をかき上げて。そんな仕草も凄く凄くかっこいいです先輩。だけどちょっと悲しいです。うう。

「んな目で見るなよ~カズ」

 眉を下げた先輩が、ギュッと俺を抱き寄せた。広い胸に頬をつけて驚いて「ふぎゃっ」と声を漏らしてしまう。

「ああやっぱ可愛い……」

 よしよしと髪をかき混ぜられて、喜べばいいのか複雑な感じでだけどやっぱり嬉しくて口元を緩めながらも周りの団員の様子を覗えば。

 皆生温かい視線で俺たちを見遣りながら、うんうんと頷いていた。


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