【拍手お礼より再録】その時の智洋くん 1
続きじゃなくてごめんなさい。
何処かに置いておこうと思いつつしまったままだったのでこちらにUPします。
40話の智洋。
智洋の言った言葉に対して、「うん」と頷いて黙り込んだ和明の大きな目に涙が溜まっていた。
動転した智洋は慌ててベッドから下りて裸足のまま和明のベッド脇へと場所を変える。
「なんで泣くんだよ」
「……嬉しくて。感激したっていうか」
にこっと微笑んだその顔は、確かに悲しみなど負の感情による涙ではなかったのだと智洋を安堵させてくれた。 その表情に見入っているところへ持ってきての爆弾発言。
「ホント、智洋って優しくてかっこよくて、大好きだよ」
なんて。
おい……今なんか言った?
大好きって聞こえたんだけど、涙と笑顔の相乗効果から来る幻聴か!?
薄く開いた唇が次の言葉を紡ぎ出す前に、屈みこんで抱き締めていた。
「っん……智洋?」
突然のことに驚いてはいるものの、嫌がる素振りもなく後頭部にそっと手を添えられて、期待に胸が震える。
自分より少し華奢な、それでも確実に相手は男なのに。こんな気持ち、今までどんなに整った顔の友人にだって抱いたことがない。携にだって、綺麗だと思いはしても、それ以上は心が動かない。それなのに……なんだろうこの嬉しくていとおしくて腕の中に閉じ込めて全部自分のものにしたいという衝動的なものは。
反対側の腕が背に回されて尚更ドキドキした。
これって脈ありってこと……なのか?
優しく背中を叩かれながら、和明の鼓動も高まっているのが感じられる。
抑えがたい欲求が頭をもたげ、喉の奥で唸るだけでなんとか堪える。
「どっか苦しいの?」
それを何かと勘違いした和明が、背中を撫で擦り……そのまま脇腹や腰の辺りや色んな場所を撫でて智洋の官能を刺激していく。
俺の忍耐力試してんのかこいつ!
それでも、まだ何も確証がない今の時点ではこれ以上何かするわけにはいかなくて、思わず抱き締める腕に力がこもってしまい、和明が苦しそうに呻いて撫でていた手の平が抗議するように背中を強く叩いた。
強くしすぎたと気付いた智洋は電光石火の早業で体を離すと、「わりいっ」と自分のベッドの布団に潜り込む事に成功した。
心臓は壊れそうなくらいのスピードと力強さで存在をアピールし、勿論のこと股間のものも不満気にはちきれそうなほど服の下で硬く張り詰めている。
消灯五分前の音楽がスピーカーから流れ始めた。寮長と副寮長が二人だけで毎日点呼を受け持ってくれているため、人数の多い一年生は全員部屋の前に出て時間短縮の協力をすることになっているが、流石にこのままの状態で布団から出られるわけがない。
それを知ってか知らずか、
「急病でベッドから出られないって言っとくから、智洋は寝てなよ」
と声がかかり、呻くように声を出すとドアの開閉の音がして室内に静寂が訪れる。
けれどもこの後就寝するだけの室内で一体どうしろと言うのか。
消灯後にこっそりトイレに駆け込むしかないと判断し、それまでどうやって耐えようかと智洋は頭を悩ませることになった。




