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Hand to Heart 【side A】  作者: 亨珈
猫の恋
102/169

102 慣らすってなんだろう


 食事の後そのまま娯楽室に向かうと、やっぱり浩司先輩が一人で撞いていた。そりゃそうだよな、いつも俺が来たら二人とも揃ってるんだもん。

「なんだ、カズと飯食ってきたのか」

 並んでいるというか連行されてきたというか、ちょっと腰が引けている俺を見て浩司先輩はきょとんとしている。

「そそ、食べっぷり堪能してきた」

 手首を掴んだままビリヤード台に近付いていくウォルター先輩は楽しそうだ。くそう、俺を恥ずかしい目にあわせたくせにーっ。

「食べっぷり以外にも楽しんでたじゃないですか」

 部屋でのこと思い出したりして、ちょっと嫌味を言ってみると「ああ楽しかったねえ」ってしゃらっと流されてしまった。あたふた右往左往するのはいつも俺で、王子が困ったりすることがあるのかなって素朴な疑問も浮かんでくる。まあ、浩司先輩もあんまり動じる人じゃないけど、入学式の時には驚いてたみたいだしなー。先輩たちだって人の子だし同じ高校生なんだから、動転することはあるだろう。


 二人を見上げて首を傾げていると、ウォルター先輩と言葉を交わしていた浩司先輩が、ついっと寄って来た。

「カズ」

 呼んだ後に出入り口の方を確認してから、そっと顔を寄せてきた。

「は、はいっ」

 これだけ頻繁にされてても慣れるなんてことはない。かあっと顔に血が上るのを感じながら背筋を伸ばすと、肩を抱き寄せて耳元に口を寄せられた。

 先輩の息遣い、それだけで背筋がぞくぞくして体が震える。

「あのな、ローション使うのはいいんだけど……もうしばらくは慣らすだけにしとけ。少なくとも体育会が終わるまでは」

 蕩けるような声で言われた内容に、思考がついていかない。

「慣らすって……?」

「指とかでな。お前小柄だし、最初からブツ入れられたら援団のときつれえ。下手したら歩くのも無理かも。まあ弟次第だけどさ」

 未だに名前を呼ばない辺り凄いというか、智洋の呼び名は弟にほぼ決定しているらしい。ある意味伴美さんの存在が浩司先輩の中で大きいって事で、それはそれで伴美さんが喜ぶだろうななんて、ほわりと考えた。

「はあ……」

 指とかブツとか言われても、何のこと? 

 何しろ至近距離の先輩の顔と声とおまけに温もりと、トリプルで攻撃食らってまともに思考できない。

 そんな俺に少し焦れたように、先輩の手がするりとケツを撫でた。

「せ、せんぱ……」

 一気に夢から醒めたようにびっくり眼で声を掛けると、自分でも甘やかな声になっているのに気付いた。

 浩司先輩も僅かに目を見張り、それからちらりと周囲を覗いながら手を動かしてそのまま指を割れ目に沿わせて指先で窪みを押さえた。

「っあ……」

 変な声が出そうになる口を自分の両手で塞ぐ。

 服の上からでも感じるなんて、昨日の晩からえっちなことばかりしてるからだろうか。だとしたら控えないと、ちょっとこれじゃ……! いや、まだ勿論誰にも触られたことなんてないんだけども! なんか変な感じがというか、そこそのものよりケツ全体が気持ちいいっていうか、それ言うなら先輩に触れられたトコ全部感じちゃうんだけどな。ごめん、智洋!

「──ここ。ちゃんと前もって慣らしとけ。おあずけが効くみてえだからもうしばらく我慢できるだろ、あいつ。カズは適性ありそうだから意外と平気かもしれねえけどな、只でさえ演舞の中腰はきついんだから」

 そこまで説明されて、ようやく合点がいく。つ、つまり、智洋と最後までして俺が受け入れるってことなんですね!?

 手で隠したままの口をパクパクさせて喘ぐように頷くと、人が入ってきたのもありようやく先輩は離してくれた。

「浩司の方がセクハラ酷いって」

 ウォルター先輩がまたツボにはまったみたいで笑い転げてるけど、それどころじゃないですー!

 た、確かに先輩のあれこれにもドキドキだけどさ……。今の刺激で、智洋とむにゃむにゃな妄想が頭の中どかーんときてですね。


 は、恥ずかしい……顔から火が出そう。

 てか、頷いてはみたものの。正直、指で慣らすとか適性とか言われても……指でって、自分でやんのかな? ま、まさか智洋にしてもらうの? あそこを?

 ギャーッ! そ、それはちょっとまだ俺……。覚悟はしてたつもりなのに、いざ他人に言われてみると全然心の準備出来てねえって解る。しかも体も慣らして準備しとかないとなんだな。知らなかった……。

 確かに、女性と違ってそこそのものは濡れないし、筋肉だから解さねえとだよな。便の太さまで開くってのは判っていても、あれってやっぱり硬さとか違うわけだし、入れっぱなしになるんだから辛い筈……。


 ビリヤード台の端を掴んで俯いて悶々としていると、いつの間にかまた浩司先輩が傍に来ていて、顔を上げると周と辰が来て不思議そうにこっちを眺めていた。

 入ってきていたのに気付かなかったなんて、どんだけ妄想大爆発状態なんだよ俺。


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