風呂
あの後、俺は見事に赤ん坊のおしっこを顔面にひっかけられた。
……まぁ、そうは言っても無邪気な顔を見て叱りつける気にもなれず、赤ん坊を抱き上げ濡れたまま風呂場へ。
「きゃぁぁっあうぅ」
何が楽しいんだか、こいつは。と思いつつも、俺は片手で赤ん坊の服を脱がせ、尚且つ反対の手で柔らかな腹をくすぐって遊んでしまう。
「ほれほれ、くすぐったいか?……んっと、石鹸はある。バスタオル的なのは、この薄いガーゼか?まぁ、今日はこれで良いか」
赤ん坊と一緒に置いて行かれたベビーバッグの中に数枚、ハンカチサイズとバスタオルサイズのガーゼが入っていたからそれと着替えを用意して。
「あ、後はオムツも必要か」
ぽちゃん ぴちゃ
「ほら、暖かくてきもちぃなぁ」
「んぅうっあ」
抱っこしたまま自分と赤ん坊を洗うのはとてつもなく疲れる作業だったが、カンガルーのようにぺたりとくっついたまま少しいつもよりも温度が低めの湯船に2人で浸かると、そんなことはどうでも良いと思えるくらい幸せな気持ちになれた気がした。
「う、うぅ」
「ん?どした」
「んぅぁ」
ンマンマ と小さな唇を動かしながら俺を見上げ、眠たげに瞼をパチパチする赤ん坊はとても可愛らしく見える。眠いのか?それとも腹が減ったのだろうか?
「疲れたしもう寝ようと思ってたけど、お前がいたんじゃ迂闊に不摂生も出来そうにないなぁ」
「う?んあぁ」
さて、湯冷めする前に上がるとするかな…
「ちなみに、お前ミルクってどのくらい飲むんだ?」
欲しがるぶんだけ飲まして良いのか?
でもなぁ、あんまり飲ましてぽったり体型になったりしたら可哀想だしなぁ…
「うばぁっ」
「ちょぉっと待て、今考えてるから」
浴槽から上がり、脱衣場で赤ん坊の体をふきつつ、あぁでもないこぅでもないとブツブツ呟いて……
「う……ひっ」
ひっ?……うおっ!!やばい。
物思いに耽りすぎたか、気がつけば赤ん坊は今にも大声で泣き出しそうに、くしゃりと表情を歪ませ息を吸い込んでいた。
「まてまて、ちょっと落ち着いてみろ、な?ほら、いい子だから泣くなよ……ぁぁっと寒かったのか?今服着せてやるからな?」
我慢だぞ?男はそう簡単には泣かないものだ、と言うより俺が泣きそうだっての。
初スマホ更新でございます。
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