本日休業
「ぁうぅあ」
目の前に置かれたベビーバスケットからは、先ほどから中にいる乳児の声が聞え続けていて、俺はどうしているのかと言えば頭を抱えて悩んでいる。
「…どうしろってんだ」
爺さん、あんたなら迷いなく引き取ったんだろうなぁ。施設など言語道断、とか言ってさ。
「でも、俺はまだあんたほど肝も座っちゃいないんだぜ?…子供を育てた経験も無いのに」
そう言いながらも、赤ん坊は万国共通で愛されるべき存在である。興味がわかないわけもない。
ちらり、と視線を投げれば
「むぅぅっ」
何やら顔を赤くして踏ん張っている。
「っえ?」
「ぶぅっばぁぁ」
これって、まさか、あれか?と思わず腰が引けるも放っておくわけにもいかないじゃないか。
「ちょっと待て、良いか?すぐにとはいかないが、俺も善処してみるから、だから」
などと言葉が通じるわけもない乳児へ話しかけながら、ベビーバスケット内に何かないかと視線を彷徨わせ
「おっ、オムツとおしりふき見っけ。えぇと、これはミルクか?」
一応、赤ん坊を捨てたとは言えほんの一欠けら程の情は持ち合わせていたらしい。今日くらいは持ちそうなベビー用品がベビーバスケットの中の赤ん坊を避け、あちこちに散らばってはいるが入っていた。
「それで、まずは」
赤ん坊の服を下半身だけボタンを外して脱がし、履いている紙おむつを引きはがす。
「うわっ、やっぱりウンチかぁ」
一応ここ、飲食店なんだけどね。引き取るにしてもどうやって世話するべきか…
「ぅうあぁぁ」
尻が丸裸だから寒いのかもしれない。早く拭いて、新たなオムツを履かせないと風邪を引かれたら今度こそどうしていいか分からん。
そこで急いでおしりふきを用意して尻を拭うが、これ冷たいし、何となく薄くね?こんなんで尻を拭かれて、こいつは満足なのか?なんて思わず眉間に皺を寄せ、使い終わったそれは汚いオムツに収納し、新品オムツを素早く巻きつけ呟いた。
「お前、家へ来たからにはもう少し生活レベル上げてやるからな」
「うぅあ?」
絶対意味など通じていない筈のこの赤ん坊に、俺はほんの少しの愛情を眼差しへのせて見やり。
「よし、役所へ行こう」
と宣言した。
短編を読んで続きを待っておられた方々も、初めて読まれた方も、読んで下さりありがとうございます。
一応不定期なのでふわふわした連載になるかもしれませんが、宜しくお願いいたします。