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通り魔殺人 後編

「最近、高校付近に通り魔が頻繁に出没している。暗い路地を歩く生徒や、

一人で帰る生徒は十分注意するように」

朝のHRで生徒達に注意を呼びかけた。

通り魔殺人が起きるたびにやっている事なのでこれにも慣れてしまった。

まぁ、慣れてはいけないのだろうが。

「先生、なんで口元笑ってんの?w」

ある生徒が尋ねてきた。

口元を触ってみたが口角は上がっていない。

「笑ってないよ」

そう返答すると、クラスがちょっとした笑いの渦に巻き込まれた。

高校生はこういうくだらない事で盛り上がれるから幸せだな。

しかし、前と比べると随分盛り上がりに欠ける。

まぁ無理もないか。なんせクラスメイトが三人も殺されているんだからな。


昼休みになり、学校に来る前に買ったステーキ弁当を職員室にある電子レンジで温めた。

電子レンジの中で回っている弁当をしばらく眺めた後、職員室を見渡した。

まだ終わっていない定期テストの採点をしてたりノートを点検してたりと

各々の仕事を黙々とやっている先生や弁当を食べている先生がいる。

僕も小テストの採点がまだ終わっていないから昼食を食べたらやろうと思った矢先電子レンジが鳴った。

弁当を持って自分の席に座ろうとした瞬間、ドアが開いていて校長室の中が見えた。

中で校長と二人の警官が話し合っている。

最初は生徒が何かやらかしたかと思ったが、だんだん通り魔殺人の件が頭を埋め尽くす。

新たな犠牲者が出たなら職員会議で報告があるだろうし、自分の仕事も残っている。

今は深く考えずに弁当を食べて、仕事を片付けるとしよう。

弁当の蓋を開けると美味そうなステーキが肉汁を出している。

今日は奮発して1000円台の弁当を買ったんだ。

結構高級な肉を使っているみたいだし本当ならじっくり味わって食べたいが、時間が押している。

仕事帰りではこの弁当は売ってないからつい仕事に来る前に買ってきてしまったが、

逆効果だったかもしれない。


ステーキ弁当を食べ終わった。

率直な感想を述べると普通・・・いやそれ以下の味だった。

期待していた分、かなり精神的ダメージが大きい。


帰りのHRでも朝と同じような注意をしておいた。

そして、職員会議の時間。

また通り魔殺人が起きたのか。うちのクラスは全員出席していたから、他クラスの生徒が殺されたのか。

校長からどんな報告があるのか。警官と昼休み何を話していたのか。

色々なことが気になって、先生方の報告は正直耳に入っていなかった。


「他に報告のある先生はいらっしゃいますか?いないようなので、職員会議をこれで終わります」


進行係の教頭がそう言った。

校長は何も報告しなかった。

通り魔殺人の時は毎回報告していたから、警官と話していたのは新たな通り魔殺人の

件ではなかったか、生徒が何かトラブルを起こしたのであろう。

生徒が何かトラブルを起こしたのであれば、その生徒の担任だけに報告するのも納得だし。

僕は安心したのと同時に少しがっかりした。

何故がっかりしたのか分からないが、確かにこの感情はがっかりだ。

厳密に言えばがっかりという感情に似ている何かなのかもしれない。


最終下校の七時を過ぎた。

職員室内では、ノート点検やら小テストの採点やらと毎日と同じ風景が広がっている。

昼休みにやり残した小テストの採点を僕はしていた。

「高梨君。ちょっといいかね」

そう声を掛けてきたのは校長先生だった。

「はぁ・・・なんでしょう」

「まぁ、来たまえ」

僕はそう言われて校長室に案内され、ソファに腰掛けた。

「お茶でも飲んでもゆっくり話し合おうじゃないか」

校長はそう言い、僕にお茶を出してくれた。

「えっ・・・でも何を」

戸惑いを隠せない僕。

「遠慮せず飲んでくれ。静岡から取り寄せた茶葉なんだ。味は保証するよ?」

「はぁ・・・」

湯飲みの中を覗いてみると、茶柱が立っている。

一口飲んでみた。

正直お茶の味なんてよく分からない。

「確かに、普通のお茶とは味が違いますね・・・」

あんまり良いコメントは出来なかったが、校長は満足そうだ。

校長は私の対面のソファに腰掛けた。

「君のクラスの成績は良いね。学年トップだよ」

「ありがとうございます」

「だから尚更、もったいないy・・・」




白い服を僕は着ていた。

床も天井も壁も真っ白な七畳間の真ん中にあるパイプ椅子に僕は腰掛けていた。

ベッドとトイレといった極普通のものと一緒にカメラが何台かとスピーカーが天井の隅にある。

手錠のようなものをされていて手を思うように動かせない。

もぞもぞしていると、スピーカーから声が聞こえた。

「33歳独身の高校教師、高梨浩二。そうだね?」

何がなんだか分からず、ボーッとスピーカーを眺めているとまた声が聞こえた。

「そして君が、生徒を殺して腹部を持ち帰り食べた通り魔殺人だね?」

いろんな記憶が頭の中を蔓延った。頭がパンクしそうだ。


うぁあぁぁあっぁああぁああああああ!!!!!!!

人間は誰しもが表の顔と裏の顔を持ち合わせています。

自分の知らない間に裏の顔が自分の体を使って何かやっているかもしれません。

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