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量産兵のボクにチートなアドバイザー(オレ)がつきました  作者: 星野林


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襲撃作戦

 営舎……《オレ》によるとモンゴルのゲルとほぼ同じで、木材や骨とかで枠組みを組んで、布や革を上から被せる大型のテントと同じ仕組みって教えてくれた。


 〈ゲルの建て方とか覚えておいて損は無いと思うぞ〉


(そうだね! 今度隊長に聞いてみるよ)


 営舎の中には絨毯が敷かれていて、その上で色々な種族の魔王軍の兵士が休んでいた。


「隊長、新入りですか?」


「ウルフそうだよ。新入りのドラゴノイド」


 ウルフと呼ばれたのは熊みたいに大きい人狼のウルフベアーと呼ばれる魔族だと思う。


 ウルフは略称だろう。


「呼び方無いとめんどくさいよな……略称でドラゴって呼ぶけど良いか?」


 ウルフさんにそう言われたので、ボクは元気よく返事をする。


「はい! ドラゴとお呼びください」


「お、元気な新人だな……可愛がりの必要は無さそうだな」


「量産型だから上下関係は刷り込まれてるんだろう。ウルフみたいに両親から生まれたわけじゃないからね」


「両親がいても魔族はろくに育児しねぇからな。刷り込みでも教育を受けた方が良いって俺は思いますけどね」


「ははは、それはそうかもね」


 ウルフさんと隊長がそう話す。


 少し話すと、ウルフさんにボクのことを頼むって言われて、ボクはとりあえず毛布1枚と大きめのリュックが渡された。


「とりあえず新人に渡せるのはそれだけだ」


 ウルフさんによると食事は支給されるが、私物は新兵はリュックに入る分だけで、力が強く、認められれば戦場で手に入れた物だったり、相手から奪った物を持つことが許されるのだとか。


 〈とりあえず最初はインベントリの拡張か? リュックだけじゃ持てるものが限られるからな〉


(戦場で略奪した物や人は商人に売れるんだっけ?)


 〈ああ、そうだな。とりあえず……すぐに戦が始まるだろうし、そこで隊長の指示を聞きながら戦果を出そう〉


 ウルフさんの他にも同じ営舎で生活する仲間達に挨拶をして、ボクは食事を取った後にぐっすり眠るのだった。






 翌日……日の出と同じくらいに起きて、営舎の外で体操をしていると、隊長がやってきた。


「なに? その変な躍りは?」


「体操といって、体をほぐすことで動きやすくなるんですよ! ウルフさんからすぐに戦が始まるから準備をしておけって言われたので」


「ほぉ! 事前準備か! いい心がけだね!」


「隊長は?」


「ハーピーは朝が早いのさ。いや、日の出と共に行動を開始すると言った方がいいかな? 朝型のハーピーなんだよ、私は」


 ハーピーにも朝型、夜型があるらしく、隊長は朝型で活動したほうがメリットが大きいと、朝型の生活リズムに矯正した過去があるのだとか。


 〈普通のハーピーではないわな〉


「じゃあ私は将官様が出頭命令出てるから……たぶん今日の昼にでも出撃になるから準備しておいてくれよ」


「はい!」


「うん! よろしい!」







 食事に関しては研究所よりも豪華に感じた。


 何が入っているか分からないけど具だくさんのスープ、両手大の硬くて大きなパン、それにサイコロ状の肉(味は塩)。


 ウルフさんは、他にスイカの様なフルーツも貰っていた。


 恐らく強ければ色々優遇される一貫ってやつだろう。


 スープにパンを浸し、ふやかしながら食べていると、隊長が今日の作戦について説明してくれる。


 今日の戦は近くの村への威力偵察。


 略奪とかはOKだが、人間は不用意に殺さないこと、家はなるべく壊さないことって言われた。


 〈あえて人を殺さないことで、防衛戦力や物資をその村に配らないといけないのを敵の軍隊に強要しているのかねー〉


(隊長はそこまでかんがえているの?)


 〈わかんね。でもそこまで考えているなら、本当に大当たりの隊長だけどな……さてと……そこの村に教会があるかどうか聞いてくれ〉


(わかったよ)


「隊長、質問よろしいでしょうか?」


「お、なんだい?」


「その村には教会はありますか?」


「教会かい? 小さいけどあるよ」


「ありがとうございます」


《オレ》はガッツポーズをするイメージを送ってくれた。


 教会があれば治癒の魔法の魔道書がある可能性が高く、場合によっては禁書と呼ばれる魔道書も隠されている可能性があるらしい。


(じゃあ向かうとしたら教会を狙えば良い?)


 〈そうだな。教会を襲うだけでいい。そこまで深入りする必要は無いからな〉


(了解)


 作戦を聞いた後にボク達の部隊は侵攻を開始するのだった。






 下っ端のボクは部隊の食料とかの荷物を大量に背負って、移動をする。


「流石ドラゴノイド……生まれたばかりなのにオーク並みの力があるな」


「新しい荷物持ちが入ってくれて助かったぜ!」


 他の下っ端たちも荷物を持っているけと、ボクが明らかに量が多い。


 〈100キロ近く背負わされてるんじゃないだろうか〉


(それって重さの単位?)


 〈ん、ああ、そうだ。辛くないか? 〉


(いや、そこまで)


 〈流石ドラゴノイドの肉体……パワーが違うな〉


 翼でうまいこと荷物を抱え込んで居るし、翼の一部に荷物をくくりつけている。


 尻尾の付け根にも寝袋とかをくくりつけている。


 荷物にはミートスライムが入っていて、水を与えると一定量の肉を体から生み出してくれる。


 見た目はミンチの肉塊がうねうね動いている様に見えるから結構ドギツイけど、魔王軍の貴重な食料源だ。


 歩いて進むこと3日……目的の村に到着した。


「ヒャッハー新鮮な食料があるぜ!」


「襲え襲え!」


「あ、ちょっと! しっかり言うことを聞け!」


 村が見えた瞬間に部隊員達が各々村を襲い始めてしまった。


「全く……頭が悪い奴らはこれだから……ドラゴ。お前は行かないのか?」


「荷物を隠してから行きます。帰りの食料を奪われたらたまらないので」


「ほぉ……量産兵の方が立派じゃないか……私ももう少し量産兵を増員してもらおうかな?」


 ボクはなるべく荷物をわからないように隠し、木に傷を付けて場所の目印を付けてから、村の方に向かう。


 村人達は逃げ惑い、隊長が火をつけるなって言っているのに、既に何軒かボヤの煙が立ち上っていた。


 〈教会に急げ〉


(了解)


 教会に行くと、中に村人達が何人かいて、ボクに襲いかかってきたが、突き飛ばして気絶させる。


 シスターが祈りを捧げて死を受け入れようとしていたが、ボクはそれには目を留めずに、《オレ》の指示に従って教会の奥に向かう。


 〈ゲームにもよく出てくる作りの教会で良かった……書庫はこっちだ〉


 扉を開けると壁に本が何冊か置かれていた。


 横にはベッドもあり、神父かシスターの寝室も兼ねていたのかもしれない。


 〈真ん中の赤い背表紙の本が初歩の治癒魔法の本だ。他には……ん、そこの本を開いてみてくれ〉


《オレ》の指示に従って本を開いてみると、本から鍵が落ちてきた。


 〈ビンゴ。たぶん机の鍵だ。そこの机に鍵を差し込んで空けてみてくれ〉


 書庫の中にある机の鍵付きの引き出しに差し込んでみると、カチと音が響いた。


 引き出しを開くと、中に魔石や十字架のネックレスやチャームが……それに何だか禍々しい魔道書も入っていた。


 〈大当たり! 禁書も入ってるじゃん! これ全部袋に入れたら撤退するぞ〉


(了解!)


《オレ》のテンションがだいぶ高い。


 だいぶ良いものなのだろう。


 小物を袋に詰め込むと、速攻教会から脱出。


 シスターは他の兵士に犯されていた。


 空を飛びながら隊長の元に戻ると、隊長は頭を抱えていた。


「これじゃ敵の誘導は難しいか……あーあ、家も燃えちゃっているし……」


「隊長戻りました」


「早かったね。まぁ言うことを聞いてくれる子はそろそろ戻ってくれるけど……」


 隊長はすぐに荷物を回収して撤退できる準備を進めてって命令をボクに授けると、空に飛んでいった。


「あれ? 隊長は?」


「空飛んでいきましたが」


 ウルフさんと何人かが戻ってきた。


「あー、早めに切り上げて正解だったわ。今いる面子でここから離れるぞ」


「ウルフさん、隊長はよろしいので?」


「あの人が動いたってことは人間の兵士が近づいてきてるってことだ。すぐに戻ってくるが、ここにいたら逃げ遅れるぞ」


 ウルフさんの指示で今いる10人ちょっとで撤退を始めると、すぐに空から隊長が戻ってきた。


「流石ウルフだね。人間の部隊が近づいてきている。言うことを聞かないで暴れているやつらは駄目だね。逃げ遅れる」


「じゃあ見捨てて撤退で」


「ああ、生きていれば基地まで逃げ切れるだろう。いつものことだ」


 うちの部隊……と言うより魔王軍の部隊はこれが普通らしい。


 それからボク達は特に問題なく基地へと撤退に成功するのだった。


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